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剣と走者とパルクール(その3)

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 4月1日午前11時35分、コンビニ付近でARゲームフィールドを展開、唐突な乱入バトルと言うべきバトルは思わぬ力でキャンセルされた。


 文字通りの強制キャンセルと言う事で、勝負の結果も無効、表面上はサーバーを立ち上げた八郎丸はちろうまる提督の不正による強制終了と判定はされている。


「アカシックレコードを知っているお前ならば、分かるだろう。ありとあらゆるチートを瞬時で無効化するARガジェット――アガートラームを」


 八郎丸提督の目の前にいる人物、白銀のARガジェットを装着した女性――大和杏やまと・あんずである。


 彼女が発動させた物、それはアガートラームと呼ばれる禁断の技術だった。


「アガートラーム……まさか、あのアガートラームを復元させたと言うのか?」


 八郎丸提督も、この想定外と言うべき強制終了には納得していないのだが、彼女の能力を考えれば当然の事だったのである。


 そして、その力を復元させる事は事実上不可能――とネット上では言われていたが、最近になって復元させた人物がいると言う噂が話題になっていた。


 シティフィールドではアガートラームはチート扱いと言う事だが、それはアガートラームの力が想像を絶していることの証明でもある。


 それを踏まえて、情報を集めてから対応させると運営は発表している。しかし、対応を発表しているのはごく少数だ。


 実際、商品化もされていないようなガジェットをARゲームで扱う事に疑問を持つ声もあるのだが、それ以上に超有名アイドルが使用しているガジェットの方が逆に危険という声もある。


「復元? これは違うな。厳密に言えば――いや、やめておこう。ここでばらせば、超有名アイドル等が悪用するのは目に見えている」


 大和はその秘密を言おうとも考えていたらしいが、結局は話さなかった。ネタバレとか、ネット炎上を懸念していた訳ではないのだが、それに近い事を踏まえて話すのを止めている。


「その力さえあれば、自称神と名乗る超有名アイドルの正体を暴けると言うのに――他者に提供するのを惜しむのか?」


 八郎丸提督はチャンスと思った。思わぬ遭遇者、それがアカシックレコードの技術を持っていたという事に。


 それに加えて、シティフィールドのプレイヤーでアカシックレコードの技術を持っているのは、榛名はるな・ヴァルキリー位だろう。


「アカシックレコードは無敵の力ではない。それに、あの力は振るうべき相手を間違えれば――自身の破滅を導く」


 大和は何かの皮肉を混ぜたような一言を残し、その場を去って行った。



 午前11時37分、八郎丸提督は北条ほうじょう提督に大和に関する情報を提供しようとも考えたのだが――。


「アカシックレコードが破滅を導く? 所持しているだけでチートと言われるような存在だと言うのか――アカシックレコードが?」


 結局、八郎丸提督は他の提督に情報を提供する事はなかった。これだけは情報を流せば、あるからくりをネット上に拡散させる恐れもあったからだ。



 午前11時45分、別の場所へ向かう大和とすれ違ったのは、特注着物と巻物型ARガジェットを見に付けた柏原隼鷹かしはら・じゅんようである。


「アキバガーディアンの設立者――柏原隼鷹」


 大和の方も名前だけは知っているようだ。あくまでも名前とアキバガーディアンでの立ち位置、過去に箱根を走った事もある山の神である事位。


「大和杏、シティフィールドに興味がなかったのではないのか?」


 柏原は過去に大和がシティフィールドには興味がないという趣旨の発言をネット上で言及しており、それを彼は覚えていた。


「アカシックレコードにも揺らぎが起きている。リアルタイムで、さまざまな記述変化があれば、シティフィールドの様子を見に行きたくなる」


「だとしたら、一つ忠告をしておく。ARゲームで相互コラボが行われていない理由、それは超有名アイドルの問題とは別の――!?」


 柏原は大和の一言を聞き、忠告をしようとしていたのだが――途中で何かを思い出したかのような表情をする。


 それを見た大和が表情の変化をする事無く、彼女はクールにその場を去って行った。


「そうか――あの人物が全てを操ろうとしたのか。自分に無限の利益が来るように――仮想敵を超有名アイドルに向けると見せかけて」


 柏原は、気が付くとARガジェットにある提督の名前を入力し、検索をかけていた。


【八郎丸提督、超有名アイドル、権利独占】


 柏原が何を調べようとしていたのかは――定かではない。


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