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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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決戦の地、遊戯都市奏歌(その6)

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 4月1日午前11時10分、第2レースも先頭集団がゴールをしているというハイスピードレースになっていた。


 その1位となったのは、潜入捜査のつもりで参加していた夕立ゆうだちである。


 彼女はサバイバーのトップランカーである事も報告済で参加しており、ある意味でも確信犯と言えるが――。


 しかし、遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかでは夕立の知名度が高い訳ではない。


 絶対的に人気があるのは、榛名はるな・ヴァルキリー、それに続くのがビスマルクという具合だ。


「あの新人、本当に初参加なのか?」


「サブカード疑惑があれば、運営がレース開始前に失格処分を下すだろう。それがなかったという事は――」


「あれほどの実力者がシティフィールド初参加? それは信じがたい」


「何処かのチートプレイヤーじゃないのか?」


「それこそありえない。チート発見の技術も強化されている以上、チートプレイヤーの発見速度は1分を切っている」


「つまり、チート使いでもなければ、サブカでもないと?」


「考えてみれば、夕立はパルクール・サバイバーの有名プレイヤーじゃないのか?」


 周囲のギャラリーも、夕立を知るサバイバー流れの観客から話を聞き、ようやく理解する程にマイナーだと言うのが分かる。


 シティフィールドの場合は他のARランカーや別ゲームのプレイヤーに関して知らない事が多く、その辺りで色々とトラブルが起こる事も――。



 午前11時15分、第3レースに入る前にコース変更の通達が運営に届けられた。


 それによると、道路の舗装工事遅れが原因で、一部コースで遅れた分の舗装工事を行っているらしい。


「こういうのは平日の内に終わらせておいて欲しかったですね」


「アクシデントはARパルクールではよくある事。過去には大雨でコースを変更しなくてはいけない時もあった位だ」


「大雨って――さすがに、台風の中で行った事はないですよね?」


「さすがに台風は他のARゲームでも中止にするだろう。ARガジェットが水に弱い訳ではなく、安全確保が難しいという事で」


 コースの修正でタブレット端末を操作しつつ、会話もこなす程にシティフィールドのスタッフは予想以上の優秀さを誇っていた。


 サバイバー運営でも、ヴェールヌイを初めとした大物提督以外は平均以下と言われた時代もあるのだが、今では新人育成なども行った結果――平均水準以上の技術を持つスタッフが現れている。


「このコース変更、エイプリルフールと言う訳では?」


 ある男性スタッフが他のスタッフに疑問をぶつける。日付的にはエイプリルフールであり、嘘の情報が拡散されている可能性もある。


「大手ニュースサイトでも、嘘のニュースと本当のニュースを判別できずにデマを報道するケースも否定できないが――この情報は信用出来るだろう」


 別の男性スタッフが疑問に答えるのだが、謎の自信を示されても信用出来るかどうかは疑問に残る。


 しかし、この信用できる情報は真実である事が後の問い合わせで判明し、コース変更で開始が遅れると言う流れとなった。



 午前11時17分、スタート地点に準備していたプレイヤーの耳には、予想外の放送が流れた。


『第3レースに関しまして、スタートエリアに変更が発生しました。谷塚駅からコンビニ前へ変更いたします――』


 まさかのコース変更に一部のプレイヤーは戸惑いを見せるのだが、落ち着いていたのはビスマルクだった。


 他のメンバーはARガジェットを装備し、あとはARシステムの起動確認だけ――という状態でのスタート地点変更である。


「さほどのコース変更ではない。これなら誤差の範囲か」


 ARバイザーに変更後のスタート地点及びコースのマップを表示、それを確認しているビスマルクはコース変更も誤差の範囲内と考えているのだ。


 それに加え、超有名アイドル投資家や一部の過激派と言われるような勢力がレースを妨害するのも考えられる。


 過去には妨害を受けた一例もあり、ARゲームを題材にしたアニメではワンシーンとしても登場頻度が高い。


「しかし、このコース変更は――大型ガジェットには不利になる可能性もあるか」


 ビスマルクはコースの一部に細い道が存在し、そこは大型ARガジェットでは1人入るかどうか――というコースだ。


 それでも、ARパルクールの場合はコースアウトに該当するような進路や建造物を破壊するような物でない限り、コース設定の自由度は高いと言える。


 中にはサバイバーのコース固定やスピードトラック競技の様に制限のかけられたコースも、一部のローカルルール等では適用されているらしい。


「どちらにしても、まずは――」


 ペットボトルのスポーツドリンクを口にしながら、ビスマルクはある人物の方角を向く。


 そこには、何時もの装備でガジェットの確認を行っている榛名はるな・ヴァルキリーの姿があった。

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