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決戦の地、遊戯都市奏歌(その5)

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 4月1日午前11時、レースは第2レースの準備を行っている。


 第1レースと第2レースは距離が短いので、遅くても10分以内には完走可能だ。


 短距離マラソンやテレビで見かけるような障害物競走等ではないが、ARゲームという事もあって難易度は決して低くはない。


 一歩間違えれば怪我をする可能性もあるだろう。適度な難易度になっているのは、運営側の指示ではなくARゲームの共通ガイドラインに記載されている。


 コースに関しては第1レースとは異なるが、距離は共通となっていた。これにはスコア的な事情も存在するのだが――。


【ARパルクールのコースは交通事情も考慮し、その都度変更される。一部で例外があるが――それは屋内施設等のケースだけだ】


【ARゲームの一部ジャンルには不正スコアを報告すると言う事例があった。それはリアルマネーを扱う非合法ARゲームが存在した事も理由だが】


【逆にコースランダムではなく固定が多いのは、カートゲームやバイクレース、AR駅伝か?】


【どちらにしても、ARゲームを取り巻く環境に変化が生まれている証拠かもしれない】


【超有名アイドルのゴリ押しタイアップ機種――ARゲームでは特に歓迎されないジャンルだが】


【タイアップと言ってもパチンコやパチスロは言及されないが、どういう理由が?】


【向こうはアイドルタイアップよりも権利使用料的な事情で、アニメやゲームの機種がここ最近増えているという話だ】


【アイドルや芸能人の機種が全くないわけではないが、イメージ的な事情もあるのだろうな】


【イメージと言っても、パチスロ等に抱くイメージの問題だな。ソシャゲでもガチャの問題があって、こちらも超大手のアイドルグループは進出していないという】


【どちらにしても、これはビジネスチャンスだ。超有名アイドルを出し抜くコンテンツを生み出すことが急務となる】


 一連のつぶやきタイムラインを見ていたのは、アンテナショップで情報収集をしている柏原隼鷹かしはら・じゅんようだった。


 現在は潜入捜査も終わった関係で、黒の背広ではなく普段の特殊な着物に着替えている。特に着替え室を使う事無く着替えられる着物と言うのも大きいが。


「何としても――炎上サイト等がアフィリエイトで莫大な利益を上げる前に、決着を付けなくては」


 慌てるような時間ではないのだが、柏原としては午前12時までに決着を付けようと考えている。


 その理由として、エイプリルフールである事が関係しているが、それは他の勢力も同じ。


 敵勢力の方は、エイプリルフールにさりげなく事実を含ませ、あたかもアキバガーディアンが情報統制等を行っていると錯覚させようとしている。


 ネットユーザーもエイプリルフールを純粋に楽しむというユーザーが多く、あまり情報のソースを詳しく検索しようとはしていない。


 午前12時になれば種明かしをすると考えているユーザーもいるのが理由だ。



 午前11時5分、第2レースが開始された。参加者は30人ほどだが――。


 その参加者の中には有力プレイヤーも多く、蒼空そうくうナズナに代表されるような経験者でありながらレースの結果に恵まれていないプレイヤーもいる。


 そうしたプレイヤーが多い事もあり、第1レースとは違った意味で注目されていた。


「プレイヤーの中には、別のARパルクールと兼任プレイヤーがいるのか」


「兼任と言っても、それがダイレクトに経験としてカウントされるARゲームとカウントされない物がある」


「サバゲ系統や格ゲーはプラスに働くと聞いた事がある。逆にリズムゲームはシステムによっては混乱すると言う話もあるが」


「レースゲームもマイナスだと聞いた事がある。実在車ベースのレースゲームとARカートやARバイクは色々な面でも違う」


「車の免許なしでも動かせるという話だったな。下手に無免許運転で事故を起こして欲しくないという事情もあるのだろう」


 ギャラリーの話はARゲーム初心者なユーザーにとっても有益な物もあれば、単純に雑学を披露して自慢したい人物もいる。


 そうした見分け方が確立されていないので、普通に聞き流す程度なのがギャラリーの心がけと言う物だ。


「第2レースが始まったようだが――?」


 ギャラリーの様子を見ていたのは、ボロボロのマントに提督服と言う目立つ外見をしている佐倉さくら提督だ。


 眼帯なども尚更目立つ要因だが、ここでは特に眼帯は珍しいファッションではない。


 中には、SFパワードスーツ、何処かのカーニバルで見かけるようなコスチューム、アニメ作品のコスプレイヤーと言う人物もいる。


 こうしたコスプレイヤー等が集まるのも、遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかの醍醐味と言えるのかもしれない。


「あれは、まさか――夕立?」


 新人プレイヤーや別のARパルクール経験者に混ざって、トップ集団にいた人物――それは夕立ゆうだちだったのだ。


 その装備は普段のパルクール・サバイバーで使用するガジェットではなく、脚部とバックパックの小型ウイングにホバリングタイプのブーツという装備。


 これに関してはアンテナショップのレンタルであり、夕立の自前装備ではない。


 彼女としては潜入捜査のつもりだが、本気を出してレースに参加しているので操作をしているのかどうかも怪しい所だ。


「こういう時に花江はなえ提督と連絡が付かないのか」


 肝心の人物はジャミングで連絡が取れない状況だった。この状況を何とかする為にも別の連絡手段を試すが、こちらも繋がらない。

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