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決戦の地、遊戯都市奏歌(その4)

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 4月1日と言えば、エイプリルフールである。しかし、ARゲームはエイプリルフールに無縁という訳ではない。


 実際、ネタとしてのARゲームがホームページ上で公開されるケースも存在するのだが、そうしたネタも実際に稼働させてしまうメーカーが現れるので、下手に投下できないというのもある。



 4月1日午前10時15分、会場入りを行うプレイヤーに交じり、改造軍服を着ている女性が一人……。


 彼女は待機席でタブレット端末を確認しており、そこで一連のレースの流れを確認していた。


「いつしか、ARゲームでのエイプリルフールネタは予言者になるという事も――」


 レースの確認以外にネタのつぶやき等を見ていたのは、レース直前に待機をしているビスマルクだった。


 ネタ以外にも、予言者となってしまう事例はいくつかある。フィクション前提で書いていたはずの小説が、まさかの予言者とされたり、それをまねた事件等が起きた事で封印される事例だ。


 こうした事例は遊戯都市でも稀のケースだが、他の地域では事例が存在していた。


 中でも、超有名アイドル投資家が一部コンテンツを邪魔者扱いし、遂にはありもしないような実写映画化、それを超有名アイドルグループが主演というありもしないようなデマも流す。


 これによって、風評被害でライバルコンテンツを潰し、超有名アイドルに逆らう存在は全て抹殺する――という小説だ。


 ただし、これは第4の壁を越えた世界では実例として存在、ネット炎上も相まって問題視されている。


 第4の壁を越えた先がどの世界を示すかは不明だが、こうした予言者的な作品が増える事はアカシックレコードにとっては歓迎すべき事ではない。


 それは、言うなれば人工知能が世界を滅ぼすと宣言するような物だからだ。


 アカシックレコードが人工知能とイコールすると言うのはネット上の噂であり、遊戯都市では言及されていない。


 こうした発言も検閲されると周囲が考えているからである。実際は、過剰な検閲を煽るような勢力のデマなのだが。



 午前10時30分、一部の炎上勢力による発言がアフィリエイト系まとめサイトで取り上げられた。


【予想通りの展開か】


【最近では、テレビのワイドショー系番組もアフィリエイト系炎上サイトとやっている事が同じという話だ】


【まさか、炎上サイトの管理人がワイドショーの脚本でも担当しているのか?】


【そこまでは行っていないだろう。下手をすれば、それこそ超有名アイドルが国会さえも掌握するディストピアが実現する事を意味する】


【超有名アイドル商法、あの商法だけは存在するべきではなかった。例え、国の借金を1年で全て0にしたという話が真実だとしても――あの商法はブラウザゲームにおける不正チートと変わりない】


 このほかにも様々なつぶやきが取り上げられていたが、大抵は水増しやねつ造、適当な部分の切り貼りと思われる。


「懸念すべき事が起きたか――これが、まとめサイトを神として崇める強化人間による情報支配」


 この状況を見て、ビスマルクも放置できないとは考えている。しかし、レースにエントリーしている以上、下手に動けば向こうの思うつぼだろう。


 

 午前10時40分、アキバガーディアンによる情報戦が秘密裏に展開されていた。これによって、炎上サイトの管理人を特定し、それがテレビ局関係者と言う事も判明する。


「まさか、超有名アイドル絡みのテレビスタッフだったとは――それだけ超有名アイドルが唯一神として存在している証拠か」


 いつもの着物ではなく、黒の背広で変装していたのは、柏原隼鷹かしはら・じゅんようである。


 あの服装は反ARゲーム勢力だけでなく、超有名アイドル投資家等にも有名であり、秘密裏の作戦を行っても即バレしてしまう懸念があった。


「超有名アイドルは神アイドルではない――別の世界の言葉を借りれば、メッキアイドルか」


 柏原は、超有名アイドル商法が第4の壁を越えて進出してきた事に恐怖を感じていた。


 ARガジェットの技術も、第4の壁を越えて軍事転用される懸念もあれば、政治的な思惑や一部の権利屋に独占利用されてしまう恐れもある。


 柏原が恐れている事、それは自分達の世界だけでは片づけられないと考えていた。



 同刻、第1レースが行われようとしていた。このレースにエントリーしているのは16人。


「特に有名なプレイヤーはいないか」


「むしろ、新人育成的な要素もあり得そうだ」


「実際、第1レースと第2レースは新人戦と言う位置になっている。実際にリストを見れば、勝率も分かる」


「なるほど。誰もが勝率5割以下――相撲で言えば7勝7敗で千秋楽に挑むと言う事か」


「ただし、ARパルクールの場合は負け越しになったとしても悲観するような事はない」


「負け続ければ降格するのでは?」


「上位プレイヤーであればランクは影響するだろう。しかし、新人戦はランク関係なしだ。思いっきり走り、全力を出して欲しいという思いがあるのだろう」


 周囲のギャラリーも煽るようなことはせず、新人戦に限って言えば静観する傾向が多い。


 下手にプロの洗礼を浴びせて、プレイヤーが委縮するのを避ける狙いもあるようだが、実際は違う可能性もある。

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