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決戦の地、遊戯都市奏歌(その3)

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 4月1日午前9時50分、ギャラリーが続々と集まり始めているのがよく分かる。


 カレンダーとしては日曜日に当たる為、それ以外の観光客が多いという風に受け取れなくはない。


 しかし、急行電車が止まらないような谷塚駅に大量の観光客が集まるのも――町民からすれば疑問に思うだろう。


 逆に言えば、急行が止まる草加駅から谷塚駅に止まる各駅停車に乗る者、竹ノ塚駅から谷塚駅に向かう者もいる。


 中にはタクシーやバス等の交通機関を使う人物もいる位だ。自家用車という人物もいるのだが、駐車場事情もあって、歓迎はされていない。


「ギャラリーが増えてきたが、どういう事だ?」


 この様子を見て他人事のように驚く人物、それは別のレースにエントリーする予定の蒼空そうくうナズナである。


 この時、蒼空は一連の対戦カードに関して知らない為、どのような理由で集まっているかが理解できなかった。


 ギャラリーが大量に集まっている理由に気付いたのは、アンテナショップに入った際、スタッフに聞かれた事がきっかけである。



 午前9時55分、ネット上ではアニメの実況タイムラインよりも盛り上がりを見せ、遂にはトレンドワードに榛名とビスマルクが浮上する程。


【いよいよだな】


【さすがに、この対戦カードがエイプリルフールな――】


【エイプリルフールであれば、他のARゲームで行われているイベントの様な展開になるはず。ここまで以上に盛り上がるはずがない】


【一体、何を狙っているのか】


【どちらにしても、榛名とビスマルクがシティフィールドでガチバトルを展開する。それが真実だ。理由なんて、後から出てくるだろう】


【それでは、この盛り上がりの理由にならない。お互いに譲れない者があるからこそ、今回のバトルになったはず】


 ネット上のつぶやきもヒートアップ、レース開始が近付くにつれて過激な発言も出てくるようになった。


 しかし、そうした発言は運営判断で投降前に非表示処理がされ、該当アカウントに関して警告メールが送られる仕組みだ。


 こうしたシステムは人工知能を使っているという噂だが、人工知能も万能と言う訳ではない。


 最終的には人の手に勝る物はない――という事なのだろう。



 同日午前10時、ARゲームのシステムが起動し、各種エリアでは大きなバトルが展開されようとしている。


 リズムゲームやサバゲ―では普段通りであり、特に大きな動きはない。しかし、レース系は有名プレイヤーの遠征で盛り上がりを見せ始めていた。


 それに加え、ARパルクールの方は、シティフィールド以外でも有名プレイヤーが姿を見せた事でヒートアップしていた。


【まさか、シティフィールド以外でも好カードが存在するとは】


【サバイバーの方も確認した。事前予約されたマッチングでは――ヴェールヌイの名前があったぞ】


【まさか過ぎる展開だ】


【別のパルクールでもロケテスト告知、新システム披露。エキジビジョン――どういう事だ?】


【これだけイベントが続くと、超有名アイドルが黙っていないだろう】


【しかし、ARパルクールはテレビ系のマスコミをシャットアウトしているはず。実況動画が出回っているサバイバーは公式チャンネル限定だが】


【確かに、シティフィールドではテレビ局はいなかった。しかし、アンテナショップの中継車ならあったが】


【別のパルクールではメットにカメラを搭載していて、ランナー視点で映像が提供されている話だ】


【どちらにしても、色々と課題が多そうだな】


 ARパルクールがパルクール・サバイバーの影響でクローン作品が増えているのは現実である。


 しかし、それでも運営側が上手くコントロールできているかと言うと、疑問は残るのが現状だ。



 同日午前10時10分、シティフィールドの運営本部に一連のプログラムに関しての解析情報が届く。


 これを運営本部が更に解析し、システムのアップデートを行う。時間として、5分とかからない。


「誰かは分からないが――姑息なライバル潰しをやってくれる」


 情報を受け取った運営所属の提督がつぶやく。その提督の正体は――。



 同刻、サバイバーの運営本部がある北千住のビルにも同様の情報が届けられる。こちらの方には大塚提督も姿を見せているのだが――。


「まさか、ARパルクールその物を潰す為に別勢力が動いたのか」


 提督服を着用し、右目には眼帯型の高性能バイザーを装備している大塚提督、彼は過去にヴェールヌイことガレス提督と色々な話を行った。


 今ではその時の過去も黒歴史となっていないが、サバイバー事件当時や小規模の夢小説勢が関係した事件が発生した時には、この時のやり取りは抹消扱いとなっている。


「こちらとしては――強行手段を取りたくはないが」


 この件に関して、彼は花江はなえ提督に連絡を入れようと考えていた。しかし、連絡を入れようとバイザーを起動させても、花江提督のガジェットシグナルを確認できない。


《該当ガジェットのシグナルを確認できません》


 これが意味する物は、ARガジェットのバッテリー切れ、ARガジェットの機能停止、ARゲームシステムが起動していない辺りである。


 しかし、午前10時を過ぎているのでゲームシステムが動いていないのはおかしいし、バッテリー切れも特殊な太陽光パネル等でARガジェットの充電は可能であり、この路線も一般的にはあり得ない。


 残るのは、ARガジェットの機能停止しかない。物理的手段で止められたのか、あるいは――。



 同日午前10時25分、シティフィールドのレーススケジュールが表示され、そこの3レース目にはネットで予想されていたカードが――。


【榛名・ヴァルキリーが3レース目だと?】


【メインレースは10レースあたりじゃないのか】


【ARパルクールは競馬などとは違う。売り上げ重視でレースの組み合わせを決める物ではない】


【不正ガジェットを使用している疑惑があれば、そのプレイヤーは走る事すら認められない】


【不正ガジェットではなく、プレイヤーがドーピングしていてもだめなのか?】


【プレイヤーのドーピングは論外だ。ARゲームではプレイヤーの精神状態を不安定化させるような薬物を使うのは禁止されている】


【実際、アスリートの参加を規制するARゲームも過去にあった位だ。スコアを荒稼ぎするような賞金稼ぎが出没し、イースポーツ化出来なくなる事を防ぐ狙いもあるのだろう】


 こうしたネットのタイムラインをARガジェットで見ていたのは、レースの準備をしている最中の蒼空そうくうナズナだった。

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