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決戦の地、遊戯都市奏歌(その1)

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 4月1日午前9時、一連のアカシックレコードを巡るタイムラインが落ち着いた頃である。


 落ちついたと言っても、一般市民やARゲームに興味がない層に限定され、今も炎上している部分も存在はするが――。


【超有名アイドル関係の騒動は全て決着したと言う。残るはコンテンツ流通部分と言う事か?】


【超有名アイドル商法がらみは、遊戯都市奏歌では最初からなかったというのが見解らしい】


【どういう事だ?】


【知らなかったのか? 遊戯都市では超有名アイドル絡みと判断されるような告知活動等は認められていないという】


【確かに、それは聞いた事があったが――今まで逮捕例が出た事があるのか?】


【逮捕に至った例も存在するが、どれもがテレビで取り上げようとしない。超有名アイドルの芸能事務所に対しての風評被害を防ぐ為だろう】


【そこまでして超有名アイドルを保護する必要性があるとは思えない】


【テレビ局としては、超有名アイドルが一番視聴率の取れるコンテンツだからという説があるが――どこも低予算バラエティー一色な状況では、その説も疑問が残る】


【しかし、テレビ局が高額なギャラを必要とする超有名アイドルを起用し続けるのはどうしてだ? 視聴率の為だけとは思えない】


【視聴率以外としては、あの芸能事務所が政治家にパイプを――】


 一部のつぶやきは閲覧不可や削除になっているが、ネット上では超有名アイドルの話題は大きく取り上げようと言う気配はない。


 あったとしても、一部のアフィリエイト系まとめサイトが自サイトへの誘導に使う為、敢えてつぶやいている位だろう。


 実際は下手に閲覧不可や削除をすれば、それを検閲等と考えてネット上が炎上するとでも考えている可能性が高い。


 そんな中で遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかでは、ある対決が行われる事となり、ネット上はその話題で持ちきりとなっていた。


 この日は晴れであり、レース環境の方も問題ないとアンテナショップ内のモニターでも表示されている。



 同日午前9時30分、谷塚駅近くに姿を見せたのは一人の女性だった。電車ではなく、ARガジェットであるフライングボードを使用して。


 安全上の都合とは言え、ARインナースーツに軽装のARアーマーを装備し、更にはバイクのヘルメットとは似ても似つかないようなARバイザーも被る――。


 バイクに乗るにも免許が必要であり、メット等の安全対策は必要なのに――AR系列の乗り物系でも安全対策をせずに乗ろうと言うプレイヤーが後を絶たない。


 こうした悪質なプレイヤーが増えないようにする為、一部のARガジェットではARアーマー及びARメット及びバイザーを必須とし、それが認証キーの代わりにもなっている。


 面倒な仕様変更とは思いつつも、これ以上の怪我人増加でARゲームそのものが禁止にされてしまった場合、それは超有名アイドルに有利な口実を与える事になるだろう。


 その仕様変更を彼女が面倒だと思っていた理由、それは過去に自分が起こした事にも関係するのだが――。


「話によると――この辺りか」


 ARメットで地図を確認し、該当する場所を発見する。その後は、メットを外す事無く目的地へ向かい、そこでフライングボードを預ける事にした。


 地図に青いポイントが打ち込まれていた場所、それはARガジェットを扱うアンテナショップである。


 しかし、彼女の場合はフライングボードを預ける為にアンテナショップを訪れただけであり、商品の購入等が目的ではない。


 ボードに関しては預かり専門の窓口が外にあり、そこに置かれているコンテナ型の機械にフライングボードと各種装備ガジェットを収納、コンテナのゲートを閉じる。


「まさか、車の立体駐車場のARガジェット版が一般化しているとは」


 立体駐車場の要領でARガジェットを格納する預かり所、それは秋葉原や北千住、一部のARゲームを扱うエリアでは実良化されている。


 しかし、それは広い場所を確保できる可能性がある場所に限定されてしまう。


 遊戯都市奏歌では、それを地下に展開しているというのだ。ある意味でも、SFアニメ等であるようなシステムを実用化してしまった事には驚きを隠せない。


「どちらにしても、まずは――食事が先ね」


 ボードを預ける際にはメットを外さなくても問題はなかったが、さすがにコンビニでは強盗などと勘違いされる為に店の近くでメットを脱ぐ。


 その素顔を見た周囲のギャラリーは、あまりの衝撃に言葉が出なかったという。写真を取ろうと言う人物もいなかった――一部のマスコミを除いては。


 緑色のセミロングと言う髪型だが――実際はウィッグらしい。その人物の正体とは、夕立ゆうだちだった。


 彼女は以前にも遊戯都市へ足を運んだ事があったのだが、今回は花江はなえ提督とは別件での依頼も受けている。



 コンビニから出てきた夕立はおにぎりではなく、手を汚さない系統の菓子パンを複数購入している。


 それ以外にはペットボトル飲料も入っているが、コーラとスポーツドリンクが1本、両方とも小さいペットボトルだ。


 菓子パンに関しては、カレーパンややきそばパンも袋に入っている。その他には、春雨サラダサンドか。


 その中から、彼女が最初に袋から取り出したのはレモンジャムをパンに塗ったサンドイッチである。


 サンドイッチと言うよりは、肉まん等のようにパンの中にレモンジャムが入っているという具合と言うべきか。


 レモンジャムと袋に書かれていた為、中身が分かるという具合だ。


「早く来すぎたか――まだ、10時までには余裕がある」


 レース開始は午前10時ではないが、ARゲーム関連の施設がオープンするのは基本的に午前10時だ。


 24時間営業系は常時オープンしているが、この辺りは未成年が午後6時以降はゲーセンへ入られないのと事情が似ている。


 そんな事を夕立は考えつつ、タブレット端末の電源を入れて情報を仕入れていた。


「これって、まさか――?」


 夕立が見たニュース、それは超有名アイドル商法がらみの事件で動きがあった事を示す物だった。

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