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アカシックレコード(その5)

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 3月31日午後2時40分、ニュースでも超有名アイドルの芸能事務所がハッキングで逮捕された詳細が報じられていた。


 この頃になると、速報では分からなかった部分も判明しているが、アカシックレコードに関しては意図的に伏せられている。


「アカシックレコードに触れないのは、別の勢力の仕業か」


 遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかで今回のニュースを知った柏原隼鷹かしはら・じゅんようは、他のメンバーにも情報収集を急がせた。


 これによって浮上したのは、アカシックレコードに関して隠すように指示した勢力が柏原の予想外とも言える人物だったからだ。


「これが、アカシックレコードを存在を隠した人物――」


 柏原に連絡してきた人物は名前を明かさないことを条件に、ある情報をショートメッセージで送ると言う趣旨の発言をした。


 その後、この人物は通話を切り、ショートメールを送ったのだが、そこで目撃した名前には驚きを隠せない。


「この人物が隠すというのは到底考えられない! ガーディアンに緊急の――」


 柏原が若干だが怒りをあらわにしていたが、それさえも上書きされる程の緊急要件が彼の元に届けられる事になるとは、予想外とも言える。


「フェイクプログラム――あのレベルの力を扱えるのは、アカシックレコードを知る人物か」


 先ほどとは違う人物から提供された情報、それはフェイクプログラムと言う存在だった。


「止む得ないか」


 その後、神埼かんざきハルに連絡を入れ、そこでも衝撃的な事実を聞かされることになるとは――。



 同日午後2時50分、アカシックレコードの記述等を見比べている人物がいた。それは、ビスマルクである。


 色々な場所を巡っていたような状況だが、それもある人物に関する記述を見つける為でもあった。


「榛名・ヴァルキリーが仕掛けたのか、あるいは別の人物の仕業か――」


 彼女はフェイクプログラムに関して、一定の情報を知っていた。そのプログラムを使われると、感染したサイトは誤報や誤字脱字、誤植等をばら撒くと言う。


 虚構を取り扱う様なサイトでは、どれが誤報でどれが本物なのかの見分けがつかなくなり、それを誤報であるか判別する事も困難になる。


 このプログラムを悪用し、アフィリエイト目的のサイトを次々とコピーする事も可能だ。さすがに、そうした悪意あるサイトは水際で取り締まられてしまうオチも見えているが。


「やはり。このレベルのプログラムを使ってまで自分の理想を実現させるとは思えない。おそらくは、何者かが榛名の目的をすり替えたか、あるいは――」


 ビスマルクは、ある結論に辿り着く。それは、榛名がアキバガーディアンを名乗っていると見せかけ、本来は別組織として動いている可能性だった。


 本物のアキバガーディアンは柏原を中心として動いている組織だ。実際に組織として動いているかどうか自信のない部分もある。



 同日午後3時、テレビの方では政府による緊急記者会見が行われていた。


 その内容は日本のコンテンツ流通に重大な欠陥があったと認める趣旨であり、超有名アイドル商法を認める事でもある。


『我々は、知らぬ間に違法なコンテンツ流通で莫大な税金を得ていたという事実に気付かされたのです。一部芸能事務所の暴走は――』


 しかし、会見の途中で何者かのジャミングを受ける。なお、記者会見を放送していない一部テレビ局はジャミング対象外だった。


【テレビの故障か?】


【見事なまでにバラエティーだけ消えたか】


【この現象は遊戯都市奏歌だけか?】


【報道規制とは考えにくい。何があったのか?】


【政府の失言を防ぐ為、報道規制をしたとか?】


【どう考えても、秋葉原でも記者会見を行っていたテレビ局だけ映らない】


【遊戯都市奏歌の規制システムが、他のエリアでも感染したのか】


 つぶやきでも今回の現象を疑問視する声もあったが、この現象は遊戯都市奏歌以外でも確認されている。一体、どういう事か?



『私の名は榛名・ヴァルキリー。アキバガーディアン改め――コンテンツガーディアンの暫定リーダーでもあります』


 次に映像が回復したと思ったら、そこにはARメットとARアーマーを装着し、素顔を隠した状態の榛名はるな・ヴァルキリーの姿があった。


 装備のデザインは青をベースにし、SFチック、それに細部もネットで噂されている写真と同じ事から、本物と言えるだろう。


 今回の映像は、途中でCGにノイズが出るような演出はなく、眼前にいるのは本物と言う証拠だ。


『今回の政府の行動、海外の不平等に近いコンテンツ保護の押し付け、一次創作で得たイメージから、新たな一次創作を生み出し、それがテンプレ化する世界――』


『政府の言う一億活躍計画も、真相としては一次創作作家を無数に生み出し、印税をオイルマネーの様に捉えている――そうした政治家によって生み出された物でしょう』


『私は、超有名アイドル商法の暴走からコンテンツ業界の再編を考えました。しかし、この世界は何かを恐れて超有名アイドル商法の実体に関する告発を黙殺している』


『人は一度でも無限の利益を得られる賢者の石を手にすれば、それを手放さないようにする。それが超有名アイドル商法の様な暴走、ガチャ問題、転売屋、夢小説勢、アフィリエイト系まとめサイト等の様な存在を生み出した』


『こうした歪んだコンテンツ消費勢力を完全排除し、今度こそコンテンツ流通を正常に戻す! それこそが、我々の悲願でもあり――最終目的でもある』


『それを排除する為の力、それは軍事兵器や武力等の強引な手段では悲劇を生むだけであり、それは新たな火種を発生させるでしょう』


『だからこそ、我々はコンテンツの力で――超有名アイドル以上の感動を生み出せる作品で――芸能事務所の暴走を止めるのです』


 映像を見た視聴者は、その発言に驚きを隠せなかった。超有名アイドルの暴走を止める為の手段、それが単純に対話という形ではなく、同じフィールドで競う事を選んだのだ。


 アカシックレコードのリアルチートとも言える兵器を使えば、リセットボタンひとつで全てをなかった事にも出来るかもしれない。


 しかし、それでは同じ悲劇の繰り返し、つまりループになってしまう、と榛名は考えていた。だからこそ、皆を感動させるコンテンツを生み出し、超有名アイドル以上の力を見せつけるしかない――。


「結局は軍事力を使わなくても、それはコンテンツを利用したパワーゲーム――。何も変わっていないのか、榛名ハヤト――」


 榛名の演説とも言える映像を見たビスマルクは、気づかない内に本音と榛名の本名を漏らしていた。

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