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アカシックレコード(その4.5)

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 3月31日午後2時30分、ニュース速報のテロップで超有名アイドルの芸能事務所がハッキングで逮捕という速報が出る。


【ハッキング? 一体、何をしようとしたのか】


【被害にあったのは大手ランキングサイトと言う噂だ。つまり、超有名アイドルのCDは思った以上に売れてなかったという事か】


【情報の改ざんで生み出されたアイドル――メッキがはがれ出したか】


 こうしたつぶやきが拡散されるのも無理はない状況になっている。


 しかし、こうしたつぶやきが新たな炎上案件を生み出す事、それは誰もが予測している事だった。



 ニュース速報が出る5分前、上野と秋葉原の中間にある雑居ビルには多くのマスコミがスタンバイしていた。


「申し訳ありませんが、この先は通行止めです。お引き取り願います」


 アキバガーディアンとは違う所属の民間警備会社スタッフが止めるのだが、マスコミがその制止を聞く訳がない。


 彼らはスクープを見つけ、それが大金になると知ればどんな事でも行う――そうした種族だからだ。


 そのマスコミが雑居ビルから離れたのは、あるスクープ情報が記者の一人にもたらされ――。


「――その場から引き返せ? どういう事ですか!?」


『実は別のスクープ情報がもたらされた。今、テレビで報道している物絡みかもしれない。そちらよりも、こちらを優先するんだ』


 電話の主は編集長辺りの人物だろうか。かなり慌てているような声だが、記者の方がそれを感じ取ることは出来ない。


「こちらもスクープなのは間違いないでしょう。あのビルは確か――」


 何かを伝えようとした記者だが、ジャミングらしき物で通話が途切れてしまった。


 どうやら、他の記者にも似たような連絡が入っているらしく、途中で電話が切れるのも全く同じ。


 この現象は、もしかして――と一部の記者は思ったが、スクープを奪われる事が問題であると判断し、ほとんどの記者は雑居ビルから退去する。


 今回のジャミングは、さりげなくだがアカシックレコードの技術を利用した物である。


 本来であれば、電波法等の法律にも違反するが、アカシックレコードの技術に関しては治外法権が認められていた。


 それが、アカシックレコードの技術を悪用する事が危険という証拠かもしれないが。


「残る部分に関しては、向こうに任せるか」


 マスコミに気付かれずに去っていく提督服の人物――その人物は、ステルス迷彩等を使う事無く姿を消した。


 この提督は北条ほうじょう提督や八郎丸はちろうまる提督が着ていた物に類似した服を着ていたようだが――。



 同日午後2時40分、雑居ビルの操作を行っていたのはアキバガーディアンだった。既に警察や機動隊は目的を達成し、撤収をしている。


「まさか――単純なトリックに引っ掛かるとは」


 榛名はるな・ヴァルキリーと思われた人物、その正体は神埼かんざきハルだった。


 確か別の場所にいたはずなのだが、ある技術を利用してこちらに呼び戻されたらしい。瞬間移動の類ではなく、それとは別物らしいが――。


『全ては順調だな? 神埼ハル――』


 ARバイザーから聞こえる声、それは柏原隼鷹かしはら・じゅんようだった。彼は、この段階では遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかにいる。


「ええ。まさか、あの超高速バイザーを使う事になるとは」


『あれもアカシックレコードの技術らしい。ここまで来ると、もはや何でもアリ――リアルチートと言うべきか』


「しかし、何も鍛えていないような人間では、あのスピードに耐えられるかどうか」


『それさえも可能にしてしまうのがアカシックレコードだと言う。ご都合主義の詰め合わせ――とも言えるかもしれない』


 2人の会話は続くが、雑談ばかりに時間を賭ける訳にはいかないので、神崎が本題に入ろうと話題を変える。


「あの提督――八郎丸の行動が分かってきました」


『服装の段階で違う提督、あるいはコスプレイヤーと考えていたが――』


「八郎丸の上に指示を出していると思われる人物がいるらしく、そのアカウントも押さえています。間もなく、正体が明らかになると――」


 神崎が八郎丸提督に指示を出していると思われるつぶやきサイトのアカウントを押さえたと柏原に伝えるのだが、その会話中にガーディアンの提督が姿を見せる。


「お話し中申し訳ありませんが、重要案件ですので」


 男性ノガーディアンが、タブレット端末に表示された例のアカウントを見せるのだが、そのアカウントの表示がおかしなことになっていた。


「30分前まではアカウント削除だったはず。それが凍結――?」


 1時間前までは何者かに指示していたようなつぶやきが確認出来た。30分前にはアキバガーディアンの指示でアカウントの削除が行われ、一般には閲覧できない状態だったのである。


 しかし、今はアカウント凍結を示すページが表示されており、凍結理由も公表されていない状態だ。


「先手を打たれたのか、それとも――」


 神埼は思い当たるようなパターンを考えるのだが、そう簡単には浮かばない。


『そのアカウント、もしかすると自作自演用のアカウントかもしれないだろう。こちらでも調べてみる』


 柏原は別の用件も発生した為、ここで連絡を切る。どうやら、向こうでも一大事が起こったようだ。

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