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アカシックレコード(その3)

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 3月31日午後2時、ワイドショーで超有名アイドルのCDランキングにおけるランキング独占に関して、有名コメンテーターが持論を展開している。


 別のテレビ局では外国人のハーフと思われる人物が解説を行っていたが、この人物には経歴詐称疑惑が浮上していた。


 ちなみに、この詐称疑惑はネット上では全く指摘されておらず、この情報が飛び込んできたのはアカシックレコードを経由しての物である。


「アカシックレコードの改変――か」


 コンビニの外でタブレット端末を開き、サイトを調べていたのは柏原隼鷹かしはら・じゅんよう。彼はアカシックレコードの回編に関して疑問を持つ個所があった。


 それは、以前に切り札として別世界のアカシックレコードをコピペし、記述の改変を行った。


 この時は地球の危機とも言えるようなチートを使用した勢力に対しての反撃――そのつもりだったのだが、この反撃は予想外の所へ拡散し、更なる混乱を呼び寄せる。


 それが桜野麗音さくらの・れいねに代表されるアカシックレコードの真相に近づこうとした人物だ。


 桜野は、その一人でしかなく、他にも同じ目的を持った人物はいるだろう。まだ、アキバガーディアンも未把握の人物が潜んでいる事は容易に想像できる。


 そして、彼らがまとめサイト勢や炎上勢力に利用される可能性も否定できない。


 アカシックレコードの本物と偽物を見破る能力は、フィクションとノンフィクション、虚構とリアル――それらを見分ける程のスキルを必要とする。


 週刊誌報道に耳を貸さず、下手に炎上勢力や悪目立ちする勢力等に資金を提供しない事も、こうした勢力を生み出さない対策になるだろうか。


 どちらにしても、反ARゲーム勢力や反超有名アイドル勢力等も自分達の活動を目立たせたいだけで、行動実体がないとも言われている。


 このような実体のない偽団体の存在が、超有名アイドルコンテンツの無双を加速させているとネット上では言及されており、それを止める為に様々な手段が用いられている現実もあった。



 5分位ネットを検索した後、柏原はコンビニの店舗内に入り、そこでドーナツコーナーに置かれていたオールドファッションとプレーンドーナツを購入する。


 それ以外にもペットボトルのコーラとチョコレートを購入していた。お金の方はARガジェットをレジの隣に置かれた機械に読み取らせる事で、電子マネーが消費された。


「まるで、ARガジェットがスマートフォンを超えるような便利なガジェットになってきている――」


 それが正しい事なのかは不明だが、柏原は支払いを終えた後はそのまま店外へと出る。


「スマートフォンも携帯電話がメインだった時代にはチートと言われた事もあったか。それも、しばらくしてスマホに慣れてくると――情勢は変化した」


 スマートフォンが出たばかりの時代、一部ユーザーからはスマホが一種のチートアイテムという意見が拡散した事もあった。


 携帯電話を守る為、スマホの進出を許すなと言う具合の騒動に発展し、草加市内のニュースとしてローカルテレビ局で報道された事もある。


「あの時に使用した手段、わずかな改変でも叩き材料と考え、更にはビジネスに結び付けようとする。そうしたハイエナを排除する事が、アキバガーディアン本来の目的だったはず」


 柏原は改めて考え直した。肥大化したアキバガーディアン、それを修正するタイミングがやってきたのかもしれない、と。


 そして、最後の切り札として実行したアカシックレコードの改変、それは一歩間違えれば歴史認識の改ざんを意味している。こうした記述変更は一歩間違えると大規模な論争になる為、アキバガーディアン内でも禁止をしている物だった。


 禁じ手とも言える手段を使った事に関する反省は後に行う――と柏原は思う。まずは超有名アイドルファンの暴走、コンテンツ流通の崩壊を止める方が先だ。


「どこで道が変わってしまったのか。シヅキの協力を求めた時、サバイバー運営と手を組もうとした時、もっと以前――」


 柏原は色々と振り返りながら、何処で道を誤ってしまったのかを考える。


 結局は、あるアカシックレコードに書かれていた人物と同じような道をたどる可能性もあったのだが――それに彼が気づいたかどうかは分からない。



 午後2時15分、あのレースが行われた場所では別のレースが行われようとしていた。


 その頃にはスタッフの入れ替えも完了しており、一連の問題発言をしたスタッフは拘束されていたが。


 それ以外でもサバイバー運営も一部の情報収集担当の提督を除いて、別のエリアへ移動済みというのもある。


「結局は、超有名アイドル投資家の便乗勢力等ではなかったのか――」


 周辺を警戒していた、黒マントにブレードのARガジェットを装着した佐倉さくら提督は、他の勢力が介入してくると予想をしていた。


 実際は何処も介入する事はなく、一部勢力にとっては潰しあいが不発に終わったと言うべきかもしれない。


 向こうもサバイバー運営まで介入するとは思っておらず、作戦を潰された報復も考えていたらしいが。


「あの人物は超有名アイドルに関しては、まとめサイトレベルの知識だったようです。それと――」


 サバイバー運営の提督が佐倉提督に耳打ちをする。そして、それとは別にタブレット端末も用意していた。


 どうやら、あの人物はいわゆる詐欺メール等で見られるようなテンプレの儲け話に釣られたような趣旨の発言をしているらしい。


 それを説明する為、提督はわざわざタブレット端末を用意したのだろう。


 相手がシティフィールドのプレイヤーや戦闘系ARゲームのプレイヤーでなければ、何とかなっていた可能性もあるが――相手がリアルチートに近いようなサバイバー運営では格が違った。


「アキバガーディアンとは違った提督も目撃されたという情報があります。画像に関しては――」


 タブレット端末に目撃情報のあった提督の画像を表示させると、そこに映し出されていたのは八郎丸はちろうまる提督と北条ほうじょう提督の2人だった。


 しかし、佐倉提督は八郎丸及び北条とは遭遇歴がない。厳密には話をした事がなく、すれ違った程度ならば……というレベルである。


「この2名の名前は分かるか?」


「確か、八郎丸と北条です。こちらが――」


 佐倉提督が名前を尋ねると、提督は写真を指さしながら説明を始めた。そこで、佐倉提督は――。



 同刻、別のエリアを捜索していたのは有名な電子の歌姫コスプレをしている瀬川菜月せがわ・なつき、偶然遭遇してしまった神埼かんざきハルの2人だ。


 瀬川は超有名アイドル勢の隠している情報を探す為、神埼は炎上勢力が隠しているサーバーを発見する為という理由がある。


 その2人が合流するきっかけになったのは、ある意外な一言だった。


「貴女、アカシックレコードの真相を知りたくない?」


 瀬川の一言は、神埼にとって致命的なものであった。下手をすれば自分の正体だけでなく、アキバガーディアンの秘密も握っている可能性を否定できない。


 それらが外部に漏れる事だけは避けなくてはいけない。来るべき時まで、秘密にしておかなくてはいけない事実を神埼は隠していた。


「それを知ったとして、どうするつもり?」


「私は、どうするつもりもないわよ。自分のカテゴリーには関係ない話だし、それに――超有名アイドルの起こしている事は、悲劇の歴史を繰り返す。だからこそ、アカシックレコードの真相を知りたい」


「自分のカテゴリーに関係ないと言いつつも、アカシックレコードを求める――矛盾しているな」


「遊戯都市奏歌の事件自体も、マッチポンプと言われたり、コンテンツの未来を決める争いと言われたり――目的が何度も入れ変わるのは矛盾とは言わないの?」


 瀬川の一言を聞き、神埼は驚きを隠せなかった。確かに、この世界は超有名アイドルが全てを歪めたと言われているが、どのような手段を使ったのかは詳しく書かれていない。


 それに加えて、遊戯都市の一件も――アキバガーディアンでは隠している部分が多すぎて、あの指令で納得する人物がいるかと言われると疑問が残る。

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