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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ1
5/95

その名はヴァルキリー(その1)

##


 午前12時30分、情報の入力が完了し、自分の手元にARガジェットが戻ってくる。


 その形状は腕に装着するような端末と言う表現が正しいのか不明だが、見た目だけでみるとデザインが良いとは思えない。


「ビームサーベルの持ち手だけ――と言う気配もするが、説明を聞いた限りでは」


 蒼空そうくうナズナは男性スタッフの説明を聞いただけでは、全てを把握するのは難しいと考える。


 実際にプレイしようと教えてもらった場所へ行こうとも考えたが、基本操作を覚えてからでも遅くないと判断し、今回は帰宅する事にした。


「せっかくだから、お昼を食べてからでも遅くは――」


 お昼を食べようとフードコートへ立ち寄ると、大量の人で混雑をしていた。どうやら、珍しいメニュー目当てで観光客が押し寄せる勢いらしい。


 スタッフに待ち時間を聞いた所、10分以上はかかるとの事。これならばコンビニで弁当を買った方が手っ取り早い。



 午後1時、蒼空が帰宅し、コンビニののり弁当を自宅で食べている頃――。彼が向かう予定だったエリアではある人物のパフォーマンスが展開されていた。


 レースの内容は32人のバトルロイヤル形式。8位以内で決勝に進出と言う分かりやすいルールだ。


 シティフィールドは、ローカルルールも複数存在するのだが、基本的にはレース形式とバトル形式の2種類で構成されている。


 今回のルールは、その内のひとつであるバトル形式が取られていた。それでも、コースを2週するのには変わりないが。


「バトルと言う事であれば、どのような手を使っても問題はないだろう」


「上位陣を2週目で潰せば――形勢逆転は不可能だ」


「我々、アイドル投資家に歯向った事の愚かさを……」


 最後列で様子を見ながら走っているランナー3名に対し、赤い甲冑姿のランナーが迫っていた。おそらく、最下位はこの人物で間違いないだろう。


 ARギアにインナースーツ、素顔を隠すようなバイザーメットというARゲームではおなじみの姿だが――これで不審者扱いされないのはARゲームが特別な存在という理由もある。


 しかし、それ以上にそこまでの重装備をしなければ、怪我だけでは済まされないという事情もある。


 一部のARゲームでは、時速50キロを出せると言う都市伝説も存在するのが、その証拠だろうか。


「赤いインナースーツ――3倍の速度で走る奴か?」


「3倍の速度って、それはチートじゃないのか?」


「時速50キロをランナー系ARゲームで叩きだすことは不可能なはず。それに、シティフィールドの最高速度は30キロが限界と言われている」


 落ち着いて素数を数えようとも考えている人物がいたのだが、それをさせる事無く、彼は3人を抜き去った。


『貴様たちの様な超有名アイドル以外はコンテンツとして認めないとする考え――それは間違いだ』


 メットのスピーカー部分から聞こえたのは、赤い甲冑の人物と思われる声。一体、これはどういう事なのか?


 肝心の人物は、前方100メートル先。走っているのは直線道路の為、全速力を出せば逆転は可能と3人は思いこむ。


「まさか、あそこまで突き放されるとは」


「奴こそチートの疑惑がある」


「考えてみれば、今回のルールはバトルあり。攻撃をする分には反則ではないだろう」


 3人が結託したかのように、手持ち武装を赤い甲冑の人物に向けて撃つのだが、攻撃が命中したような演出はされていない。


 この光景に関しては、3人は言葉も出なかった。一体、どのようなトリックを使ったのか。


『確かにバトルルールで武器の使用は禁止されていないが、お前達が使ったのはARガジェットではなく――』


 この言葉の続きを3人組は聞く事無く、何かの攻撃を受けて気絶する。一体、何が起こっているのか。



 午後1時10分、今回のレースの結果が発表され、トップだったのは榛名はるな・ヴァルキリーという人物だった。


 人物なのは間違いないが、青いARアーマーにガジェット、それにシールドビットを兼ねているウイングパーツ等も特徴的である。


 しかし、榛名はレースの結果を確認して、すぐに姿を消してしまう。決勝8名の中に残ったと言うのに、決勝への出場辞退だろうか?


「ここで奥の手を見せるほどではないか」


 榛名はバイザーを脱ぐ事無く、その場を去っていく。既に運営には決勝辞退の連絡を通してあり、これも受理される事になる。


『榛名選手の出場辞退に伴い――』


 結局、榛名は出場辞退となった。スキャンダル等の影響もないはずなのに、一体どういう事なのか?



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