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リミテッド

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 3月31日午前12時25分、運営のテントに緊急停止しているプレイヤーがいる事が報告された。


「やっぱり。そう言う事か」


 運営責任者はゴールしているプレイヤーの顔ぶれを見て、何か疑問を抱く部分があった。それに加え、あの時のアレである。


「レースの順位取り消しは行わず、15分の制限時間延長をアンテナショップへ指示――」


 そして、指示したのは制限時間を午前12時45分へ変更すると言う延長処置である。


 これに関しては特殊ルールを把握していなかったプレイヤーに対する救済処置と言う事で会場に説明しているが……。



 同刻、蒼空そうくうナズナはガジェットのメンテが完了し、コンビニを後にする所だった。


「あの時の発言、それが本当だとすれば――情報操作も容易という事になる」


 蒼空は花江はなえ提督の言っていた事に対し、にわかには信用が出来ないのだが……。



「電波の性質がどのような物かは不明だが、ARガジェット全体に影響を及ぼしている以上――対象外になるガジェットは数が絞られる」


 花江提督は今回の電波がARガジェットに影響を及ぼす物である事に対し、こう付け加えた。


「その電波がARガジェットに影響を及ぼすって、どのような規模なのか」


「規模レベルは過去に起こった物では、超有名アイドルの楽曲を強制的に選択し、楽曲ランキングの不正という物があった」


「どのような物と思ったら、その程度なのか? てっきり、無差別テロと思っていたが」


「ARガジェットに絶対はないが、ARシステムを軍事利用すれば永久追放クラスの罰則が待っている。大量破壊兵器への転用は――」


 蒼空の一言に対し、花江提督の方も言葉を選ぶ。本来、ARゲームで軍事転用と言う物はWeb小説の題材レベルの話であり、現実ではあり得なかった。


「どうして、ARガジェットは兵器転用されてこなったのか?」


 蒼空は言う。今までも破壊兵器ではないが、レスキュー用ガジェットは存在している。


 しかし、作ろうと思えば作れるはずの大量破壊兵器を、どうして作らないのか?


 それに対し、数秒ほど花江提督は沈黙する。最終的には何も答えないのも彼にとって有益ではないと考え、少しだけ喋る事にした。


「簡潔に説明する。ARシステム自体が日本以外で稼働出来ない――類似システムは海外でも確認されているが、それは日本のARシステムに遠く及ばない。そう言う事だ」


 花江提督は真実は言及しつつも、ある程度はぼかすことで何とか納得させようとした。向こうも、納得はしたようだが。



 午前12時26分、蒼空はゴールエリアまで500メートル付近まで到達した。若干の遠回りをしたのは、距離を稼がないといけないからであるが。


「あと少しで――!」


 蒼空がゴール付近まで辿り着いた所で、ビームライフルの音が鳴り響いた。


 この音はARガジェットを通じて流れている為、ARガジェットを持っていない一般客には聞こえない物である。


「外した――!?」


 蒼空を狙ったスナイパーはARサバゲのプレイヤーであり、本来はシティフィールドに介入できないはずだ。


 しかし、例の電波が影響して介入システムに若干の障害が発生したらしく、こうした妨害工作が容易に出来るようになっていたのである。


 そのスナイパーだったが、ライフル音が大きすぎた為に何者かに気付かれてしまい、あっさりと迎撃されてしまう。


 蒼空がライフルの音がした方向を振り向いた頃には、全てが決着していた後だったらしく、自分には関係ないという事で先を急ぐ事にした。



 一方、スナイパーを迎撃した人物はARガジェットと特別なアーマーを装着していたシヅキ=嶺華れいか=ウィンディーネだった。


 別勢力の妨害工作が起きているという事で、花江提督の救援要請を受けたという形だが――実際は違う事情があるのかもしれない。


「ここにきて、妨害勢力の行動が巧妙になってきている。手段を選ばず――と言ったところか」


 シヅキの方もアキバガーディアンのサポートとして雇われた身だが、最近は自由行動が多い。


 これに関してはガーディアン側も許可している一方で、これが影響してガーディアン内でもシヅキに対する風当たりも微妙な物になっている。


「どちらにしても、超有名アイドルの暴走する未来。それを止める事が急務で――」


 シヅキが別の場所へ移動しようとした矢先、彼女はある人物を発見した。


 あの外装を見る限り――間違いなく、榛名はるな・ヴァルキリーである。



 午前12時30分、蒼空が無事にゴールをした頃には、電波絡みの事件は完結をしていた。


 あのスナイパーは事件に関係ないと思われるのだが、そこには向こうも言及していない。


 あくまでもARサバゲで起きた出来事――という認識らしい。ペナルティも向こうの運営に任せ、あくまでもシティフィールド側でペナルティは加えない。


 まるで別のARゲームで起こった出来事には不干渉という様な認識だ。


『まずはじめにお断りをさせていただきますが、このレースはいわゆる出来レースをしている勢力をあぶり出す為のフィールドとして用意した物です』


 まさかの展開だった。このお断りの放送をしている段階では蒼空はゴールをしていない。まだ、残り300メートル付近の位置にいたからだ。


 周囲もネット上で話題になっていた八百長疑惑について発表があると思っていただけに、出来レースと言う単語が出た事には困惑しているようだが。驚いていたのはマスコミだけであり、訓練されたようなギャラリーにとっては何処吹く風である。既に耐性が出来たとも言えるが、真相は定かではない。


 それに加え、一部プレイヤーが外部ツールを使っていた件も運営は把握していたのだと言う。つまり、それらを百も承知でレースを行っていた事になる。電波の発信源が特定できたような口調ではなかったが、それを含めて失格にしたプレイヤーから事情を聴いているのだろう。


『今回のレースでは当初からネット上でも騒がれている八百長よりも――ARゲームで行われている裏ゲームと呼ばれるギャンブルをあぶり出す目的もありました』


『八百長はスポーツ競技で行われるべきではない物ですが、ARゲームでも行われてはいけない』


『そして、それを行っている勢力は我々とは異なる部署のARゲーム関係者が芸能事務所とのタイアップに絡んで動いている事も――』


 運営責任者が途中まで話している段階で、ようやく蒼空がゴールをした。これで、リタイヤしたプレイヤー以外は完走した事になる。

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