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アキバガーディアンの正体

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 3月31日午前12時10分、花江はなえ提督はある人物とコンタクトを取ろうとサバイバー運営へ連絡をしていた。


『それは本気で言っているのか?』


 通話に出たのは渋めの声をした男性、大塚おおつか提督と呼ばれている人物。現在は彼がサバイバー運営及びガーディアンの運営を指揮している。


 本来であれば、総責任者でもあるヴェールヌイことガレス提督が出るべきなのだが、あいにく不在だった。


「こちらも本気で連中の真相を聞き出す必要性がある。書類は既に転送しているはずだ」


 花江提督の話を聞き、大塚提督は送られて来た電子メールの添付ファイルを開き、そのデータを確認する。


『これを見る限り、芸能事務所がクロなのは疑いの余地がない。しかし、それとアキバガーディアンが繋がっていると考えるのは早計と思わないのか?』


 大塚提督が慌てている理由、それは超有名アイドルの芸能事務所とアキバガーディアンがマッチポンプ的にシティフィールドの事件を起こしている――という記事だった。



 週刊誌やマスコミレベルのゴシップを信用しないのがサバイバー運営の方針だ。しかし、相応のソースがあれば情報を信用する。


 このような方針を取るようになった理由として、ネット炎上やまとめサイト等による情報操作、印象操作や風評被害を踏まえての事だ。


 ここまでの情報管理を行っているのは、この世界ではサバイバー運営とごく一部のARゲーム運営だけだろう。


 それだけ、情報管理に関してザル警備に近い訳ではないのだが――。なお、シティフィールド運営は、極秘情報の持ち出しを規制する一方、あっさりと開示する情報も存在する。


 こうした情報管理が必須と言う考えになる背景には、まとめサイトやネット炎上が金儲けの為に利用されていたり、ネット炎上詐欺の様な犯罪が急増し始めている現状もあった。


 結局、サバイバーの事件は情報管理の重要性を理解していなかった会社の上層部等の慢心が起こしたヒューマンエラーというのが、一部勢力の結論である。



「国際スポーツで金メダルを望める競技を探した結果――イースポーツを利用したのは、大塚提督もご存知でしょう」


『サバゲやパルクール、格ゲーも国際スポーツ大会の競技に仕様と言う動きがスポーツ紙に――』


「それを再び起こそうとしていたら?」


『可能性は否定できないが――』


「どちらにしても危険性があります。違法動画を取り締まる規模でARゲームが規制される前に、行動を起こすべきだ」


 花江提督の力説も分かる。しかし、大塚提督はアキバガーディアンが本当にマッチポンプを仕掛けているのか分からない部分もある。


『しかし、柏原が簡単に真相を話す口か?』


「それを百も承知の上でだ」


 2人の会話はしばらく続く。その間に他のプレイヤーも花江提督の前を通過し、蒼空そうくうナズナも通過していった。



『ところで、榛名・ヴァルキリーと言う人物を知っているか?』


「榛名? 聞いた事が――そんな人物がいると言う話だけはネットで見た事がある」


 大塚提督から榛名はるな・ヴァルキリーの名前が出てきた際、花江提督は話だけを聞いた事があった。


 詳細な経歴は知らないが、ガーディアン組織を名乗っているという話もネットで拡散している。


 それをある部分を調べている際、偶然に目撃したというレベルだが。


『その榛名が名乗っている組織、それがアキバガーディアンだとしたら?』


 大塚提督の一言を聞き、花江提督はスマートフォンを落としそうになる位の衝撃を受ける。しかし、実際には落とさなかった。


 衝撃を受けた理由、それはアキバガーディアンのダミー組織は容易に作れない事を知っていたからである。


「それは絶対あり得ない。アキバガーディアンと名乗るダミー組織は既に摘発されたはずだ――」


『そちらとも違う――と言ったら?』


「それは、どういう事だ?」


『プリントされたエンブレムを確認したが、どうやらアキバガーディアン本来の物とはデザインが異なるらしい』


 大塚提督の一言は、花江提督にも衝撃と言える物だった。榛名はアキバガーディアンのメンバーではないというのだ。


「本来の物? 旧エンブレムを流用している可能性は?」


『その可能性もない。アキバガーディアンのデジタルプリントには本物と認証する為の印刷技術がある。ダミーを作るのも難しいはずだ』


「それは、こちらでも分かっている。あの技術がダミー組織の出現を阻害していたと言ってもいい」


『そうなると、このアキバガーディアンは一体何者だ?』


 結論が振り出しに戻る。ここで水掛け論となるのも時間の無駄遣いになるだろう。


「とにかく、この話は他の提督には他言無用で頼む。下手に提督達の士気を下げれば、向こうの思惑に――」


『分かった。一応、そう言う事にしておこう』


 その後、ある項目の確認をした後に通話を切る。



 同日午前12時15分、最初の完走者がスタート地点に戻ってきた。距離に関しては3キロと電光掲示板に表示される。


「このレースはスピードレースではない事を踏まえ、この距離で区切ったか」


 アンテナショップからスタート地点の場所まで移動してきたビスマルクは、特別観覧席でやきそば弁当を食べていた。


 やきそば弁当と言っても、他にはおにぎり2個とフライドポテト、コーンクリームコロッケが入っている。


 ビスマルクはおにぎりを口にしつつ、他のレース状況もチェックしていた。


「結局、超有名アイドルの宣伝しているプレイヤーはいなかったか」


 当てが外れたと思い、弁当を食べ終わったら移動をしようと考えていた矢先、ビスマルクの目の前をある人物が横ぎった。


「レーヴァテイン――」


 私服姿の上条静菜かみじょう・しずなこと、レーヴァテインである。どうやら、あれから様子見の為に戻って来たらしい。

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