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迷宮都市群(その1)

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 3月31日午前11時35分、運営から再び放送が入る。


『先ほど、チートガジェットを使用している報告がメールで送られてきまして、確認した結果――巧妙な細工をしたガジェットが確認されました』


 この放送を聞いた観客は動揺しているが――あくまで一般人レベルの観客のみ。


 ARゲームの事情を知る人間にとっては、この程度は日常茶飯事と割り切っていた。


 野球賭博に代表されるような行為が確認されていないからこそ、観戦する方も下手に動揺して周囲を恐怖させるのは望ましくないと。


『その為、こうした違法行為を助長させない為にもレースの中止を考えましたが――最終的には該当するチートガジェットの使用したプレイヤー以外は問題なしと判断いたしました』


 レースは行うという趣旨の発言を聞き、観客が再び盛り上がる。これに関しては、一般人の方が対応に困っているというか――リアき出来ていないようだ。


「結局、レースは止めないという事か」


 提督服の下にARガジェットギアを装備していたのは、瀬川菜月せがわ・なつきである。


 彼女はARガジェットを強制起動させ、ジャンル変更も考えたのだが――この状況でジャンル上書き等を行えば、ブーイングが避けられない。


「郷に従えば郷に従え――という事か」


 周囲の観客を敵に回せば、おそらくは助からないと判断した瀬川は瞬時にして姿を消した。


 目の前から姿を消したので、おそらくはARバイザー等をジャミングするセンサーを使ったか――ステルス迷彩と思われる。


 

 今回のレースにエントリーしたのは100人を超える数だったと言う。これがレース開始が遅れた原因でもあった。


 しかし、大きな大会や賞金のかからない小規模トライアルレースに100人以上のエントリーと言うのもおかしな話。


 そうした事もあって、運営もチートガジェットを捜索していた。一部のチートは発見出来たが――。


 最終的には瀬川のメッセージを受けて調査した結果、あの大規模な失格者が出ると言う展開になった。


 巧妙な細工がどのような物なのかは、真似をするプレイヤーが続出する事を避ける為に公表せず。


 色々な意味でも情報開示が出来ていない部分もあるが、レースの中止と言う最悪の結果を回避できたのが大きい。


 ガジェットにチート疑惑がなかったプレイヤーは、指示された番号のポジションに――という訳ではなく、各自でスターラインに付いた。


 ただし、大型ガジェットはサイズの関係もあって、先頭グループの後ろからのスタートである。


 これに関しては一部プレイヤーから不公平という言及もあったが――。


『なお、スタートに関しては小型ガジェットのプレイヤーと大型ガジェットのプレイヤーでコースが違いますが――』


 具体的なスタートラインとしては、軽装ガジェットのプレイヤーがハンデ0メートル、大型ガジェットは20メートル、超大型は40メートルと設定された。


 ここでいう超大型とは、以前に運用されたフルバーニアンやバイザーユニットと言われるような部類であり、サバイバーで使用されているランニングガジェットとは違う。


 さすがに、ランニングガジェットをそのままシティフィールドで運用する場合、あのサイズのガジェットが運用できるコース設定が難しく、公平なレース運営が出来ないとの事らしい。


「ある意味でも、シティフィールドのコースが迷宮都市と言われるのは、この為か――」


 ある場所でレースの中継をバイザーを通して見ていたのは、榛名はるな・ヴァルキリーである。


 彼女は別の作戦で行動していたのだが――このコースのスタート地点の目と鼻の先にいた。しかし、周囲には彼女がいる事を気づかない。


 その理由は、ARバイザーでは見る事が出来ない特殊なコーティングがガジェットに施されている説がある。


 実際にステルス迷彩は技術として確立し、一部ARゲームでは試験的に運用されているが、レース系では衝突事故を危惧して実装されていない。


 彼女の技術は、どちらかと言うとチャフグレネードやジャミング技術として使用されている物の応用だが。


「しかし、この迷宮都市を制覇する者こそ――ARパルクールを制すると言うつぶやきもある」


 膨張表現ではなく、ネット上ではシティフィールドのコースが複雑である事を例える発言として『迷宮都市』という単語が使われている。


「見極めさせてもらおうか――蒼空ナズナ」


 そして、榛名はARガジェットのステルスを切り、姿を見せるのだが――それでも気づかれないのは彼女がいた場所が、人気の少ない場所だった事もあった。

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