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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ1
4/95

ショップ

###


 時間的には午前12時に迫る時間になっていた。


 その為、アンテナショップも昼休みに入るのでは……と蒼空そうくうナズナは考えている。


 しかし、特に客足が途切れる事もない為、受付自体は問題ないと判断しアンテナショップを見て回る事にした。


 数十人規模のお客が全て冷やかしと言う訳ではなく、純粋にガジェットの品定めをしている光景には驚かされる。


「ジャンルによって形状が異なるのは聞いていたが、ここまでとは……」


 蒼空が手に取ったガジェット、それはエレキギターを思わせるようなARガジェットだった。


 実際のギターと比べると、ギターの弦がない事、タブレット端末を思わせるモニターがある事が決定的に違う。


 ギターの弦が存在しないギターなんてあるのか……と言われると、エアギターや音ゲーに使われるギター型コントローラ等が代表例か。


「他にも、色々な楽器の形状をモチーフにした物がある。ここは、音楽ゲーム用か」


 蒼空がチェックしていた棚にある物、それはAR音楽ゲームに使用されるガジェットだった。


 遊戯都市奏歌では音楽ゲームが予想外のヒットを記録しており、その噂は海外からの観光客を呼び寄せるまでに至っている。


 そうした事もあり、遊戯都市奏歌で市販されているARガジェットには、多言語翻訳が可能なアプリが初期装備で実装されていた。



 ARガジェット、それはARゲームをプレイするのになくてはならない物。ゲーム機で言う所のコントローラに該当する。


 ジャンルによっては色々な形状があり、一部のガジェットは別のARゲームでも使用が可能と汎用性が高い。


 その一方で、外部ツールやチートを搭載した不正ガジェット、偽ブランド、違法な転売等が続いている。


 俗にARガジェット犯罪と言われる、これらの犯罪は遊戯都市奏歌に限った話ではない。他のエリア、足立区や秋葉原、東京23区でも発生しているのだ。


 そこに超有名アイドルや炎上サイト管理人等の様な炎上マーケティングを行う勢力が介入し、ARゲーム業界は混乱していく事になる。



「何かお探しでしょうか?」


 別のギター型ARガジェットを品定めしている中、一人の男性が様子を見にやってきた。アンテナショップの制服を着ているので、スタッフかもしれない。


 ARガジェットは高級品ではないのだが、内蔵しているハイテクやレアメタルの関係で、海外への輸出が禁止されている。


 アカシックレコードでも海外へ技術が流れる事で、軍事兵器に転用される事は危惧しているのだが……そこまで過剰反応する物なのだろうか?


「実は――」


 せっかくスタッフが来たので、ARパルクール用のガジェットを置いてあるかどうか問い合わせる事にした。



 5分後、男性スタッフが受付の方へ向かってから時間がさほど経過していないように思える。結局、ガジェットはなかったのか。


 入手できないようであれば別のショップへ移動しようと考えていた、その時だった。


「ARパルクール……シティフィールドの方ですね」


 聞きなれない単語をスタッフが言った事に対し、自分の頭の上にははてなマークが浮かび上がるような反応をしていた。


「えっ? ARパルクールで1種類じゃないのですか」


「ARパルクールだけでも10種類はあります。初心者向けから上級者向け、更にはマニア向けの物もありますし――」


 驚きである。ARパルクールだけでも10種類近くあったとは。その辺りを詳しく聞かないと大変なので、説明を求める。


「一番の人気があるとすれば、サバイバーとシティフィールドです。遊戯都市奏歌ではシティフィールドの方が人気ですが」


 他にもARゲームでパルクールを扱う物はあるのだが、スタッフから勧められたのは2作品である。


 片方はサバイバー。元々は別タイトルで運営されていたが、サバイバーと言うタイトルになった経緯がある。


 こちらは大型ARガジェットを使用するという点が大きい。操作感覚はロボットに近いと言っているが、カタログの形状を見る限りではパワードスーツを思わせる。


 もう片方はシティフィールド。最近になってロケテストが行われ、そこからサービスインしたばかりの新作だ。


 こちらもパルクールを題材にしているが、ARインナースーツにアーマー等を装着するタイプであり、あの時に目撃したARパルクールはこちらだろう。


 しかし、両方とも共通する部分が存在する。コース周回方式、ソロプレイではなく対人形式、ARガジェットを使用する事――。


 ARガジェットに関しては、これがARゲームである以上は避けては通れないか。


「どちらならば、すぐにプレイ可能ですか?」


「どちらもエントリーの時間はかかります。プレイ可能なコースを考えると、サバイバーよりはシティフィールドの方がプレイしやすいでしょう」


 コースと言う言葉が引っ掛かったが、シティフィールドの方がすぐにプレイできそうだ。ただし、エントリー終了後である。


「では、シティフィールドの方でお願いします」


 後には引けなくなった。結局、値段とも相談してシティフィールドに決める。サバイバーのガジェットはカスタマイズの関係もあって、入荷待ちだったのも大きいが。



 午前12時25分、一通りのエントリーも完了したので、アンテナショップを出ようと考える。


 値段としては3000円もかからなかった。レシートと言うか電子領収書を転送されたARガジェット経由で見ても、まだ驚きで手が震えている状態だ。


 スタッフによると、ARガジェットの本体価格がサービス期間中で半額になっていたのも大きい。


「そのカードがあるのでしたら――」


 ビスマルクからもらったカード、このカードは携帯電話で言う所のSIMに当たるカードらしい。


 実際の役割としては、SIMと言うよりは電子マネーカードなのかもしれないが。


「カードにはデータも入っていないので、そのままエントリー情報を入力いたします」


 ARガジェットに電源を入れ、最初にやった事が個人情報の入力だ。身分証明書が必須で、自動車免許等を使うのだが……なければ学校の生徒手帳でもできるらしい。


 あるいは、数年前に運用が始まったマイナンバーカードでも良いらしい。自分は持ってきていない為、身分証明書で代用する。


「データ入力はこちらで行いますので、ARガジェットを――」


 男性スタッフが手慣れたガジェット捌きでプレイヤー情報を入れていく。そのスピードはこちらでも目で追うのがやっとの速度だ。


 自分が購入したのは、ARパルクール用のガジェットだが、その形状は腕時計と言うよりはガントレットにノートパソコンを合体させたような物である。


「これが、始まりの第一歩――」


 まだ実際にコースを走る訳ではないが、これが最初の一歩であるのは間違いなかった。ARパルクール・シティフィールドへの参戦である。




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