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トライアルレース

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 3月31日午前11時、谷塚駅より少し離れた場所にあるスーパーマーケット、そこには多くのお客が集まっていた。


 目的はARゲームという訳ではなく、スーパーの特売品らしい。その割にはお客の数が多いと言うには大げさすぎる。


 一般客にとっては、駐車場を占拠しているARゲームの設営車両が邪魔に考えられるのだが――。


 しかし、不当に占拠している訳ではなく、遊戯都市奏歌の指示通りに書類を提出、正規の手順で許可申請をもらっている。


 スーパー側も駐車場の利用料金を何割かは受け取れるというメリットがあり、ARゲームのギャラリーが買い物の為にスーパーを利用すると言う臨時収入も見逃せない。


 ARゲームのギャラリーは基本的に教育されているパターンが多く、特に周辺住民とトラブルになるケースは非常に少ない。


 皆無という訳ではないのは、炎上勢力やアイドル投資家がコンテンツ炎上の為に手を組み、ファンに偽装して風評被害を拡散する――というパターンによる物だ。


「駐車場をシティフィールドで使用している以上、自転車や徒歩以外にはお客が入らないという事か」


 スーパーの客入りの様子を見ていたのは、桜野麗音さくらの・れいねである。彼も簡単な食事をする為、菓子パンを買う為にスーパーに入ったのだが。


 菓子パン以外にも、ペットボトル飲料が数本入っているが――冷えている状態の物ではない。


「普段からスーパーに行くような住民にとって、ARゲームはどう見えているのだろう」


 桜野は気にするのも無駄になるかもしれないが、周囲の一般市民がARゲームに悪い印象を持たない事を祈っていた。



 同日午前11時15分、レースに関しては特殊コースと言う事が発表されている。


『コースに関しては、この範囲を1周する事です。コースアウト、銃刀法違反に触れる不審物の持ち込み、無差別傷害は禁止とします』


 コースの定義が崩壊しているようなマップには周囲もどよめきが起こるほどだ。スタート地点から半径2キロ全域をコースとしているからである。


 まるで、ARサバイバルゲーム等を思わせるような設定には、ARパルクールのランカーも困惑する程。


『1周と言っても最低1キロ以上は走る事が条件ですが』


 予想通りの展開である。最短距離で400メートルという試算が出そうなコース設定も容易に出来る為、最低限の距離設定が1キロ以上にきめられた。


 それに加え、スタート地点とゴールは同じ、チェックポイントを2個以上通過という条件も一見して厳しいように思える。


 しかし、コース取りに関してはランナーの自由、これには変わりない。


「1キロであれば、長距離と言う訳ではない。何を問題にする必要性がある?」


「ARガジェットなしでの1キロは厳しいと見るかもしれないが、これはあくまでもARガジェットを使用したARゲームだ」


「しかし、1キロは最低限。更にキロ数を稼ぎだせばスコアにも影響する」


「あくまでも、シティフィールドはスピードレースではない。それを考えれば――後は分かるな?」


「ARパルクールでもスピードレースのルールもある。シティフィールドでもローカルルールでスピードレースを採用しているが――」


 周囲からは、さまざまな話が出てくる。今回はスピードレースではないという事で、速度に自信のないプレイヤーにとっては朗報だろうか。



 同日午前11時20分、レース開始は11時30分だと言う告知放送があった。どうやら、コースの安全確保やエントリー増加に伴う変更らしい。


「あの時に、榛名は――」


 会場入りが遅れていた蒼空そうくうナズナは、周囲の状況を見てエントリーには間に合うと踏まえ、特設テントに向かう。


 その時、彼は榛名はるな・ヴァルキリーの言った一言を思い出した。



『本来であれば、ARゲームにルール以上の束縛を加えるのは本意ではない。それを潰そうとしているのは、芸能事務所のような権利独占や賢者の石を手に入れようとしている連中だ』


『CDチャートで超有名アイドルの楽曲しかランクインしないのは、アイドル投資家がCDを複数枚購入する事で芸能事務所に献金していると考えてもいい』


『――さすがに、CD購入を政治献金に例えるのは不適切だと思えるが、そうした状況を生み出したのは力を持った一部芸能事務所だと言う事を忘れるな』


  

 蒼空は本来の意味でコンテンツ業界が盛り上がっているのか――と言われると、疑問を持っていた。


 ネット上でも疑問を持っている批評家は『たった2つの芸能事務所が――』と言及する。


 アカシックレコード的に言えば『悪の芸能事務所からコンテンツの自由を守る為、ガーディアンが立ち上がった』と。


 本当に今のコンテンツ流通が正しいのか――蒼空は悩んでいる。


「今は、シティフィールドの真実を見極める事が先と言うべきか」


 蒼空はガジェットの調整を行った後、テントでレースへのエントリー受付を行った。


 受付の途中、ガジェットのチェックをスタッフが行う。特に違反している要素もないので、チェックは1分足らずで終わる。

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