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炎上勢力の罠

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 3月29日午前10時、ある番組で取り上げられた特集がネット炎上を誘発させた。その特集とは――。


【偏向報道なのは明白だな】


【超有名アイドルの芸能事務所から賄賂を受け取り、ネット炎上を狙っている】


【この手の特集が増えたのも、芸能事務所側が焦っているからか?】


【税金対策とは考えにくいか】


【税金とか、選挙対策という考えは違うだろう。特定政党が不利になるような報道をすれば――】


【しかし、何か意図的な編集を感じる】


【プレイ人口が100万人弱の作品で、ここまで特集が組まれる事がおかしい】


【イースポーツとして展開されている格闘ゲーム、アイテム課金が問題となっているパズルゲーム等と違い――こちらは、いわゆる乙女ゲームだ】


【何か意図があるとすれば――何だ?】


 ネット上では、該当するワイドショー番組の特集を見ていると推測されるようなつぶやきが目撃された。


 その一方、意図的な編集も感じられると言う考えは共通しているようである。


 特集されている乙女ゲームは、一部のフジョシ勢が大手小説サイトでデイリーランキング等を独占している状況を生み出している作品なのだが――詳細はアカシックレコードに記されていない。


 意図的にアカシックレコードが記述を削除したような形跡はなく、炎上する可能性のあるコンテンツは掲載しないというルールがあるのでは――という疑惑もある。



 同日午前10時30分、一連の炎上タイムラインを分析するまでもなく、即座に動いた勢力がいた。


 それは北条ほうじょう提督率いる勢力である。それだけではなく、偽物のアキバガーディアンが総出になったと言わざるを得ない。


 ただし、そこに榛名はるな・ヴァルキリーは関与していなかったというのは――後に判明する事であるが。


「こちらとしても、あの炎上つぶやきで大参事になる事は避けたい。一歩間違えればマフィア抗争レベルの非常事態が起きる」


 北条提督は別の意味でも本気だった。今まで静かだった状況が嘘のように慌ただしくなっている事に対して。


 それは、アカシックレコードの記述にあった破滅の未来を超有名アイドルコンテンツによる市場制圧――それを回避する事だけに全力を注いでいるかのようだ。


「遊戯都市からマフィアを一掃出来たのは警察の協力もあった。しかし、今回は警察の協力を得る訳には――?」


 北条提督が別の人物に連絡を取ろうとした矢先、スマートフォンの着信があった。


「八郎丸か――」


 そこに表示された着信名義、それは八郎丸はちろうまる提督である。しかも、このタイミングでの着信だ。


 本来であれば、八郎丸提督との連絡は依頼等の時限定のはず。そう言う約束も交わしているのだが――。


『今すぐテレビを回せ!』


 口調も何時もと違い、かなり慌てている声である。一体、何があったのか。リモコンを使用し、自室のテレビを点けると――。


『本日の商品は――』


「通販番組がどうかしたのか?」


 テレビに映っているのは、新型のパソコンを宣伝する通販番組だ。この番組が重要な物なのか?


『そのテレビ局ではない。別のチャンネルを回せば分かる』


 八郎丸の声を聞き、手頃なテレビ局を回す。すると、ある場所の中継映像が出ているのだが――。


『その場所に覚えがないか?』


 まるで、誘導尋問である。中継映像は竹ノ塚駅近辺、確かフルバーニアンのトライアルが行われた場所だ。


 窃盗事件や他の一件で動きがあったのか――と思われたが、内容を確認する限りでは違っているのは一目瞭然。


「まさかと思うが、アキバガーディアンが動いたのか?」


『本物が動く訳はない。それに、サバイバーの提督勢を目撃したと前に報告したな』


「確かに、遊戯都市でサバイバーの提督勢を見た。それに、阿賀野も目撃している」


『そこまで目撃して、なぜ放置した?』


「サバイバーの提督勢に手を出せば、あちらの勢力を完全に敵に回すだろう。ARゲームの運営が、どれだけの――」


『そう言う言い訳を聞く為に電話をした訳ではない。もうすぐ、問題の場所が――』


 八郎丸の方も慌てている為か、口調が安定していない。それに、説教をする為に電話をした訳ではないのも分かるのだが――。



 竹ノ塚駅からの中継映像、そこには一斉に摘発されているイベント会場、それに拘束される人物を乗せたと思われる車も映し出されていた。


 もしかしなくても、超有名アイドルの夢小説かフジョシ勢が問題行動を起こしたとしか思えない。


 レポートしているアナウンサーも、フジョシ勢や夢小説勢の仕業と明言している為、そうとしか思えなくなってくる。


 犯人が何者なのかは報道されていない。逮捕されたのが未成年だからという可能性もあるが、それ以外で伏せる理由があるのだろうか?


「どういう事だ? 実在のアイドルグループを扱っている夢小説勢ではないのか?」


 目を疑っただけではなく、自分の耳も北条提督は疑う。


『今回のイベントは、某スポーツ漫画の二次創作イベントで――』


 明らかな誘導尋問的な何かである。ネット炎上のきっかけになったテレビ番組で特集していたのが、丁度この作品だったというのもあるのだが――。


「八郎丸――まさか、これを仕掛けたのは?」


 北条提督は八郎丸に尋ねる。そして、彼はこう答えた。


『これがアキバガーディアンに対する挑戦状である事は明白だ。こちらとしても、抗争の火種は消化しなくてはいけないだろう』



 それから30分後、今回の事件に関係する勢力は一斉に摘発された。ここまであっさりと決着する事に対し、警察も疑問視する声はあったのだが――。


 その正体は有名ビジュアルバンドの夢小説勢力であり、自分達のイベントを潰された事に対する報復だと言う事が判明したのは、それから1時間後である。


 しかし、さすがに有名バンドを解散に追い込むのは不適切と芸能事務所側の判断により、この事件は一部の夢小説クラスタの暴走によって起きた事件として処理された。


 この事件に関する記述がアカシックレコードからも抹消されたのは、午後1時ごろだと言う。


「一連の事件を黒歴史にしようと言うのか――炎上勢力勢は」


 これに対し、反撃を行おうと考えていたのは秋葉原のコンビニで買いだしを行っていた柏原準鷹かしはら・じゅんようだった。


「ならば、こちらにも考えがある」


 柏原は別の事件が起こった時に想定していたプランを、このタイミングで展開する事に否定的な考えだったのだが、そうも言ってはいられない。


 それ程、今回の事件はアキバガーディアンにとっても衝撃が大きな事件であるのは間違いない。

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