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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ1
3/95

ビスマルク襲来

>午前11時32分付

誤変換修正:芸能事務所ガイル事→所属事務所がいる事

微調整:人が入らない構造→人が入られない構造


>2月10日午前1時39分付

誤植修正:8月→3月

 3月3日午前10時15分、蒼空そうくうナズナは突如として姿を見せたビスマルクと共に、ARガジェットを選ぶ事になった。


 こうなったのには別の事情もある。おそらく、ビスマルクにも狙いがあるのだろう。



「私の名前はビスマルク……鉄血などの称号は持たない、パルクールランカーのビスマルクよ」


 あの時、ビスマルクは確かにそう名乗った。


 何かが引っ掛かると考えた末、ARパルクールを調べていた際に別のARゲームのサイトも見ていたのだが……そこでビスマルクと言う名前を見つけた事を思い出す。


「もしかして、ARミュージック――」


「それ以上は禁則事項よ。あのゲームタイトルを出すことは、別の勢力や反ARゲーム勢力を敵に回しかねない」


「どういう事ですか? それ程の指定をされたARゲームはパクリ認定された某作品以外には――」


「ここだと色々と都合が悪いから、歩きながら話を続けましょう」


 蒼空の方がゲーム名を言及しようとしたが、ビスマルクは禁則事項として詳しくは言及しない。


 それだけではなく、ARゲームで黒歴史認定された一件も、もしかすると他の話題を隠す為の偽装という疑惑まで浮上した。



 まず最初に訪れたのは、ARゲームの書籍等も扱っている書店だった。ARゲーム関係が充実している以外は、他の大手書店と変わらない。


 立ち読みをしている客がいないのは、ここで売られているARゲーム関係の本に窃盗防止のタグが付いているから――ではなく、単純に監視カメラの数的な意味だろう。


 それ以外にも、超有名アイドルや芸能関係の書籍もない。単純に取り扱いしていないという事ではなく、客の注文があれば取り寄せは出来るらしい。


 ただし、ここがARゲームのアンテナショップと言う事もあり、そこまで命を投げ捨てるような行為を行わないというのが正論だろうか。


 こうした行為がネット上で晒された結果、アイドルグループが解散に追い込まれる位にネットが炎上するのは、さすがに避けたいと言うのがネット上で言われていることだ。


 しかし、そこまでしてアイドルグループに対して風当たりが悪いのはどうしてか? さすがに、そこまで調べようとは思わない。


「そう言えば、あなたもパルクールランカーでしたよね? あの件について、何か知っているのですか」


 ビスマルクが隣で本を受け取っている中、蒼空が先ほどの一件に関する答えを聞こうとするが、沈黙を守っているようだ。



 次に訪れたのは、クレーンゲームが置かれているエリアだ。構造はゲーセンに置かれている物と同じだが、景品口は人が入られないような構造になっている。


 人が入られない構造にした為、大型景品には不向きになっているのだが、フィギュアやグッズ等の箱物をメインにしている為、これと言った不満は出ていないようだ。


 これには理由があり、その昔に景品口に手を入れて景品を取ろうとした事件。それがシステム改善の大きな理由だ。


 同様のケースに関する再発防止のために防犯機能を強化したらしい。そこまで過剰反応するのか……と言われると、微妙なラインだが。


 搭載した防犯強化と言っても、ピンボールで不正な振動を検知するとゲームが強制終了するのと同じ原理であり、大改造と言えるものではない。


 そのシステム詳細は企業秘密なのだが、このシステムを巡っては特許関係で独占の疑惑を持たれている。


 炎上商法その物に対する風当たりが激しい遊戯都市奏歌、その中でもネット炎上は一歩間違えると大損害が出ると言われていた。


「そう言えば、遊戯都市奏歌のゲーセンには音ゲーしか置いてはいけないというルールが――」


「それは都市伝説よ。別の無関係カテゴリーが面白半分で炎上させるケース、企業側が意図的に炎上マーケティングを展開しているような悪質なケースもある」


「炎上マーケティングって――まとめサイト系のコピペや批判的な記事で炎上させるケースの?」


「そう言った手法が使い古されているのも事実だけど、もっと悪質なのはフジョシ勢を利用して利益を得ようとしている芸能事務所がいる事。それが、大手の超有名――」


 ビスマルクは遊戯都市奏歌内のゲーセンに音楽ゲームしかないという都市伝説を否定する一方、炎上マーケティングに関しては思う所があるようだ。


 彼女が炎上マーケティングを語る際の口調は、面白半分で一部の反勢力がネットで炎上させる事が日本でも日常茶飯事となり、それが原因でARゲームを舞台としたコンテンツ戦争が起きた。


 かろうじて海外が無差別テロと報道する事がないのは、それがゲーム内で完結している事も大きい。



 しかし、反勢力は芸能事務所から報酬を受け取り、その報酬で超有名アイドルのCDやグッズを購入、その無限サイクルを繰り返した結果が――一連のアイドルバブル崩壊とも言える、あの騒動だった。


「遊戯都市奏歌では炎上商法は禁止されているのに――」


 ビスマルクは何かを言おうとして、言葉を詰まらせているようにも思える。それに対し、蒼空は言及を避ける。


「ある芸能人の会話アプリの履歴が流出し、それが騒動となっている。それに便乗して商売に利用するハイエナ連中こそ――遊戯都市奏歌が最も嫌うプロ炎上勢力とも言える、夢小説勢よ」

 

 言葉を詰まらせたビスマルクだったが、勇気を出して蒼空に面と向かって話す。超有名アイドルファンの中でも、フーリガン等の例えにするのも吐き気がする……それが夢小説勢の行っている悪行だ。


「あの連中が行っている事、それはコンテンツ産業にとっては不要――吐き気を催す邪悪と言っても過言ではない」


 ますますビスマルクの口調が激しくなっているのを、蒼空は感じていた。彼女の方も本当であれば、このような発言をすれば自分が晒されて炎上するのは明白だ。


 しかし、ビスマルクは会話アプリやつぶやきサイトのアカウントは持っていない。


 パルクールランカーには炎上サイトに加担しているようなアプリを所持するのが禁止されているのだろうか――。


 実際はARゲームに会話ツール等が実装されており、こうしたアプリは特に使わなくても問題ないというのが周囲の見解らしいが。



 最後に訪れたのは、目的地のアンテナショップだ。ここまでに1時間弱はウインドショッピングというか、ビスマルクに付き合ったのも大きい。


「お互いに譲れない物があるからこそ、論争は起こる。それは理解しているが――限度を越えて無関係な周囲を炎上させ、不安をあおるマーケティングは見ていて不愉快にしかならない」


 ビスマルクの話を一通り聞いて、蒼空も何となくだが超有名アイドルファン等が今まで起こした行動に関して分かったような気がした。


 その行為はネット上で『吐き気を催す邪悪』と言っても過言ではない。


 警察が違法投資や不正転売、悪質な詐欺事件に関しては取り締まっている一方で、個人サイトの炎上等はスルーされているのが事実。


 そのような泣き寝入りするしかない現状を打破する為に、アキバガーディアンやハイランカーの様な勢力が超有名アイドル投資家等がARゲームに流れてこないようにしている。


 この行為に関しては過剰反応と示す一般市民が存在するのも事実だが、遊戯都市奏歌のやり方に反論する勢力をプロ市民として切り捨てているのは遊戯都市側と言う事も――。


「ビスマルクさん、あなたは超有名アイドルやフジョシ勢の炎上マーケティングに関して何を?」


 蒼空としても、途中から愚痴に近くなったビスマルクの話は聞くに堪えない。単純に愚痴を聞いてほしいだけで声をかけた訳でもないのは事実だが。


「――ごめんなさい。超有名アイドルの話題になると、どうしてもヒートアップするみたいね」


 我に返ったビスマルクが、蒼空に対して謝罪をする。そして、最後にこう述べた。


「私は過去に別のARゲームで無双とまで呼ばれた事があった。その影響もあって、周囲からは敬遠されていたのかもしれない」


 他にも語りたい事があったが、時間切れと言う事もあり、1枚のカードを蒼空へ手渡して別の場所へ向かった。


「そのカードはARゲームにエントリーする際に使う物よ。アンテナショップで役立つと思うから」


 カードの絵柄は特になく、ARガジェットカードと裏面に書かれている。注意事項もあるようだが、現状だと専門用語ばかりで分からないことだらけだ。


「まずは、アンテナショップで聞くか――」


 アンテナショップ内に入る蒼空。客が誰一人いなかったら……と考えたが、ショップ内には数十人規模のお客がいた事に驚きを隠せなかった。


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