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新たなる提督(その1)

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 3月25日、学校は卒業式シーズンと言ったような状態だが、ARゲームとしては大きな稼ぎ時でもある。


 新成人応援と言う訳ではないのだが、ARガジェットのライセンスが必要な機種に関しては費用を半額、ガジェットも半額で購入できるなどのキャンペーンを行っていた。


 こうした現状を見て、ため息まじりにコーヒーを飲む人物、それは提督の服装でコンビニ前に座っていた北条ほうじょう提督である。


「あの事件から数週間――フルバーニアンの開発者がデータの特許侵害で逮捕され、更にはフジョシ勢や夢小説勢の活動も大きく減った」


 北条提督としては、アキバガーディアンの目的を達成しているのだが、上手くいきすぎていて逆に何かのフラグを立ててしまうのではないか、と疑念を抱いていた。


 本来であれば、北条提督や榛名はるな・ヴァルキリーは正式にアキバガーディアンではない。真実としてはアキバガーディアンの偽者なのだが、ネット上は彼らこそ本物と信用している。


「本物のアキバガーディアンは、こちらを訴えるような事をしないのも逆におかしい。様子見を決めているのか――あるいは、本当に気付いていないだけか」


 いらついている訳ではないのだが、そんな感じにも見て取れる。それが、今の北条提督だ。



 しばらくして、彼の目の前で足を止める人物がいた。身長は自分と同じか、それより高めか――と思ったら、自分が1センチ高いようである。


 それに加え、胸のふくらみも確認出来る。女性提督だろうか? 


 その人物は寄りにもよって、自分と同じ白い提督服を着ている。これは、どういう事なのか――と逆に北条提督が問いたい状況なのは間違いない。


「お前は一体何者だ?」


 女性提督の方は機嫌が悪い訳ではないが、尋ね方が女性というよりも――。


「同じ提督勢でも、自分を知らないと言うのか」


 北条提督も彼女に関しては見覚えがない。新入りと言う可能性もあるが、アキバガーディアンにあの形式の提督服は存在しない。


 そして、女性提督の右腕に装着しているARガジェットを見て、警戒すべき勢力だと言う事が直感で分かった。


「このタイミングでパルクール・サバイバーの運営直属が登場か」


 警戒すべき人物なのは間違いないが、今は騒ぎを起こせば超有名アイドルや根絶しきれていないまとめサイト勢に炎上商法として利用されるだけだ。


「この街でもパルクール・サバイバーを知っているとは――って、知っていて当然か」


 女性提督の反応を見た北条提督は、向こうに戦闘の意思がない事を確認し、その場を去ろうと考えた。


「我々としては、下手に争いは起こしたくない」


 思い付きだけで発言し、その場を逃げられるとは考えにくいが、この場は去った方が良いと考え、別の場所へと歩いて去る。向こうは北条提督を追跡しようと言う気配はなく、思い付きの逃亡作戦は成功してしまった。



 午前10時10分、一連の騒動をみて駆けつけてきたのは同じ白い提督服を着た男性だった。こちらも、おそらくはパルクール・サバイバー運営だろう。


佐倉さくら提督――ここで、一体何を?」


 コンビニドーナツの袋を持った男性提督が、コンビニの出入り口から姿を見せる。駆けつけたと言っても、走ってではなく歩いてだが。


「先ほど、別の提督服を着た人物を見かけた。アキバガーディアンと似たような紋章を見たが――」


 佐倉提督は、男性提督からドーナツの袋を受け取り、そこからオールドファッションを取り出す。


「それはあり得ない。アキバガーディアンの紋章は偽物の見分けが付けられるように、特殊なデジタル技術が使われている」


 男性提督の名は、花江はなえ提督。アカシックレコードを扱うサイトでの異変を感じ、遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかへとやってきた。


「そう言えば、花江はここで行われているパルクールに関してい知っているのか?」


「ここで行われているパルクール、それはシティフィールドと呼ばれている。そして、他にも存在するパルクールは全てがサバイバーのフォロワーだった」


「噂には聞いていたが、ソーシャルゲームの様に増えていくような感じだな。ARリズムゲームも、今となっては30近くか」


「パルクール自体、元々はエクストリームスポーツの位置付け――安全性を求めようとすれば、自然にガジェットの仕様なども似通ってしまう」


 2人はコンビニ前でドーナツを食べながら話を続ける。草加市と奏歌市では管轄が違うと言う訳ではないが、扱うARゲームのジャンルが多すぎる印象を受けた。


 タブレット端末で花江提督がARゲームを調べているが、その多くはあるジャンルのフォロワーという位置づけだ。


「さすがに、ありとあらゆるジャンルをARゲームで出来ると言うのは無理があるか」


 佐倉提督の一言、それは一種のアダルトジャンル等も含まれている。花江提督の方はほぼ無表情で、ARゲームに出来ないジャンルもあると明言した。


「――アダルトジャンルは需要があるかもしれないが、法律問題などのクリアすべき課題も存在する。そこまでの労力を使って整備するかどうかは、有識者に丸投げされるだろう」


 それ以外にもグロテスクな表現は秋葉原以外でも規制されているらしく、それは遊戯都市奏歌でも例外ではない。


 一定のガイドラインを守った開発が出来れば、開発費用を提供してもらえる仕組み――というのは、サイトを調べて判明した事だった。

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