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仕組まれたレース(その2)

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 3月12日午前11時、前に行われたレースでスリップがあった関係上でコース整備が行われていた。


 この間に関してはシティフィールドとしては中断となり、コースの整備が完了次第の対応になる。 


 スリップが起こる事に関しては他のプレイヤーも予測出来たことであり、その対策としてスリップ防止カスタマイズを行うプレイヤーもいた位だ。


「雨の走路はスリップ事故が起きやすいとガイドブックにも書いてある」


「まさか、ガイドブックをチェックせずにARゲームをプレイした結果が……アレなのか?」


「一部のARゲームはライセンス必須と言う物もある。ARパルクールもライセンス必須系列だが、シティフィールドは任意らしい」


「これがサバイバーだったら、ライセンス一時凍結は免れないだろう。自分の起こした事故で、レースを止める事になるからな」


 ゲーセンのモニターで観戦していると思われる背広の人物達の会話が聞こえ、それにうなずいたのは桜野麗音さくらの・れいねだった。


「30分が経過したが、人気作でない限りは――?」


 桜野は、ある重大なミスをしている事に気が付いた。それは、そのARゲームで使用するセンターモニターのシステムを見た事で――。


「整理券の発行型だったとは。うかつだった」


 桜野がプレイしようとしていたゲーム、それは順番に並ばなくても整理券をセンターモニターで発行する事で順番にプレイする事が出来ると言う物だ。


 これによって、順番を守らない等のマナー違反を抑える事が出来ている為、一定の成果は出ていると言えるかもしれない。


 今回のシステムに限った事ではないが、ARゲームでは様々なマナー違反や想定される炎上ケースをアカシックレコードから分析し、防止対策が取られている。



 同時刻、蒼空そうくうナズナはガジェットの調整を行っている。以前にアンテナショップで購入した物ではなく、今回は雨対策がされた物である。


 この辺りはアンテナショップのスタッフが助言を行い、ナズナが現在使っていたガジェットは防水対策を行っている最中――その為の代用品と言う気配だ。


「雨合羽を着て走るのは止めておいた方がいい。サバゲタイプのARゲームであれば雰囲気的な意味でも問題はないが――」


 アンテナショップのスタッフも、蒼空の『雨合羽を着て走る』という趣旨の発言には、あごが外れるような無謀な考えと言わざるを得なかった。


「とにかく、マラソンや駅伝でも雨合羽を着て走る事はしないだろう? ARパルクールも、それと一緒と考えて欲しい」


 スタッフは身振り手振り等も交えて、蒼空に雨合羽は止めて欲しいとアドバイスする。万が一、また怪我人が出たら一大事だ。


「そう言えば、次のレース前に何か救急車の様な物が――」


 蒼空の一言を聞き、スタッフも凍りつく。鋭い指摘と言わざるを得ない。


「スリップ事故があったのです。原因は雨対策のメンテナンスを行っていなかった事です」


 隠しても仕方がないので、レースが遅れている理由を含めた事情の説明を青空に行う。これで、彼が納得して雨合羽を諦めてくれるかどうかは別の話だが。


 

 同日11時5分、スタッフの熱意が伝わったらしく、蒼空は雨合羽を着ないでレースに出ると言ってくれた。


 これには周囲のスタッフも一息をついている。また事故が起こるとなると、レースその物が中止になる可能性も否定できない。


 実際のレースでもトラブルが全くないとは言い切れないが、トラブルは付き物だ。


 ギャラリーが乱入する、応援と見せかけて無関係な宣伝等を行う――。


 観戦する側のモラルハザードも言われる中、何故にARゲームは熱狂的なファンが多い状況でも、大きな炎上をせずに運営が出来ているのか?


 これ自体が『仕組まれている』、『やらせ疑惑』という事も言われており、それに関しては運営も否定していない。だが、肯定もしていない。


 しかし、こうした運営の中立的な発言やファンの理解力もARゲームが大きな炎上をせずに盛り上がっている証拠だろう。


 人気のコンテンツには、慢心すると周囲が炎上するような不適切な発言や行動のひとつふたつはあるのだが――。


 それを狙い、超有名アイドルの芸能事務所が情報収集を行い、自分達が地球唯一のコンテンツになろうと動きだしたのが――一連のアカシックレコードに記された事件の数々だ。


 アカシックレコードの事件を今になって再現させる事、それは今のARゲームに必要な事なのか?


 人によっては『避難訓練』等のように、定期的に行う必要性もあると言う発言も出ており、これらの事件が全ては何者かの作り出した筋書きで動いて――。


「ARガジェットのメンテも、プレイヤーの務めか」


 蒼空はARガジェット用のインナースーツに軽装アーマーという――シティフィールドではスタンダードな装備で挑む。


 それ以外では右腕に防水用ARガジェットを装着し、頭はARモニター等の役割も果たすヘルメットを被る。


「あの時はシステムを把握する前に負けていた。しかし、今度は違う。ARゲームが何なのかも知った。そして――」


 蒼空は軽いストレッチを行い、転倒しないようにコースの入念な確認をARガジェットで行う。


 レースの方はガジェットの方にショートメッセージが送信され、午前11時15分になるらしい。


「とにかく、今は何も考えずに出来る限りの事を――」


 装備に不具合は発生していない事に加え、運営スタッフの確認でも異常なしという診断だ。これで外部チート等は疑われないだろう。

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