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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ1
2/95

もう一つのパルクール

>更新履歴

・2月10日午前1時37分付

タイムライン誤植を修正。8月→3月。

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 西暦2018年3月2日、その日は自室でインターネットとにらめっこをしていた。


 部屋は整理整頓されているが、音楽関係の資料だけは山積み状態、窓は換気の為に開けてようと考えても、爆音が近所迷惑になる可能性がある為、空気清浄機は欠かせない。


 パソコンの置かれているテーブルはきれいになっている一方、上にある棚には何かを飾ろうとした形跡はあるが、空きスペースがむなしい状況に。


「情報を調べていく内に、色々な事が判明していく――」


 インターネットを閲覧しているのはデスクトップパソコンだが、用途としてはゲームがメインの為かゲーミングパソコンをベースにカスタマイズした物を使用している。


「それに、奥が深いかと思われるような背景があると思ったら、そうでもなさそうだ」


 蒼空そうくうナズナ、彼は楽曲の制作がスランプ気味と言う訳ではないが、息抜きでインターネットを閲覧していた。



 ARパルクールが注目されたのは西暦2016年10月末と言われている。そこで密かに足立区内で行われていたロケテスト、それがARパルクールだった。


 ロケテストは複数場所で展開されていたが、田舎の様な場所ではなく都心部で行われていた印象がある。何の集計をしようとしていたのかは、公式発表がないので不明だが。


 そして、ARパルクールのモデルケースが正式稼働したのは2017年。その時は、最近の過剰装備型ガジェットと比喩されるようなタイプのロボットタイプガジェットが運用されていた。


 プロのパルクールプレイヤーは、このガジェットに対して「これをパルクールに必要な装備とは到底思えない」と反論した。


 こ乃発言がまとめサイト等で都合よく書きかえられ、様々な炎上系まとめで取り上げられていく。


 遂にはネット上に異常な速度で拡散し、超有名アイドル等がタダ乗り便乗でARパルクールを潰そうとしていたのである。


「これが、最初の大きな事件――」


 蒼空には事件の規模がいまひとつ理解できずにいた。これだけの事件だが、ニュースで大きく取り上げられず、怪我人が一定数報告されているのに、政府は規制等をしない。


 これにはさすがに疑問を持たない方がおかしい。死者は出ていない事もあり、穏便に事を運びたいという意向が働いた可能性もあるが、そうした記事も存在が確認できなかった。


 そこから結論を出すとすれば、この事件は密かに処理をされ、事実を公表しないという事にされた可能性が非常に高いと言える。


「ARパルクールと言っても、どの辺りがパルクールとルールが違うのか――?」


 そして、蒼空がネットの記事とにらみ合いをしている内に、ARパルクールと本来のパルクールとの違いが見えてきた。



 大きな違いは2つある。その内の一つは、ARガジェットと言うARゲームで使用する機械を使う事。


 これは安全確保という意味合いが非常に大きいのだが、それ以上にアスリートでなくてもある程度の動作でスーパープレイが可能にした結果らしい。


 パルクールはスポーツであるともネット上で言及されている為、運動制限を受けているような人間ではプレイは不可になっているが、この辺りは当然の判断だろう。


 もう一つの違い、それはパルクールでは危険なスーパープレイもARパルクールでは多く目撃される事だ。


 パルクールはスポーツ乃部類かもしれない一方で、危険なプレイを推奨していない部分がある。


 それらのプレイはアクロバットと判別され、プロのパルクールプレイヤーは認めていない。パルクールに命の危険があるのは膨張表現ではなく、事実であるのは間違いない。


 実際、ロケテスト当時はなかった事故が、正式稼働前の先行稼働で散見されたからだ。この状況を踏まえ、ARパルクールのプレイに関しては年齢制限や健康診断等のガイドラインも付けられることとなる。

 


 3月3日午前10時、アンテナショップの場所を昨日の内に検索し、蒼空はショップへと向かう。


「あのガジェットは……?」


 ショップへと自転車で向かう途中、蒼空は別のARガジェットでARパルクールと似たようなアクションを披露している一団を見つけた。


 数日前との相違点としては、装備しているガジェットが更に一回り大型である事だろう。


 小型のロボットクラスに匹敵するサイズのガジェットには間違いないのだが、その動きはARパルクールと同じ動きを見せている。


 操作方法としては、巨大ロボットを動かすような形式……ARロボットバトルの様な物と蒼空は考えた。今はアンテナショップへ向かうのが重要なので、寄り道をしている余裕はない。



 同日午前10時10分、谷塚駅近辺の大型アンテナショップへ到着した蒼空は、自転車を指定の駐輪場へ停める。


「特に混雑しているような様子は――?」


 店内に入ると、そこには数百人規模と言えるような客が商品を見定めたり、店舗内のゲームコーナーでゲームをプレイしていたりしていた。


 アンテナショップと言っても、携帯電話やスマートフォンを取り扱うような物とは大きく異なっている。


 大型電機店を思わせるような品ぞろえにゲームセンター並みのゲームコーナーが、そこには広がっていた。しかも、1階でこれほどの規模である。


「ここが遊戯都市とは聞いていたが、ここまでの規模とは予想外だ」


 蒼空は店舗内を散策するだけでも驚きの声を上げる位に、カルチャーショックを受けていた。さすがに田舎者と思われたくない為か、大声を上げると言う事はしない。


「ここに来るのは、初めて?」


 蒼空に声をかけてきたのは、あの時の女性とは異なるが外見をさらっと見る限りでは女性のようだ。


 金髪ロングヘアーの隻眼、身長は170台、体格はスリムの様だが体力はそこそこありそうな――。服装は意外な事に改造軍服と言ったような物である。


 しかし、改造軍服と言っても、既存の軍服をベースに改造した訳ではない。ARゲーム用のインナースーツを改造したような物である。


「ARパルクールについて、知っている事があれば――」


 これはチャンスと考えた蒼空は軍服の女性に尋ねる事にした。ネット上でも不確定な情報があふれており、どれが真実なのかを見抜く力がない限りは、嘘の情報に振り回される事になるだろう。


「構わないわ。こちらも聞きたい事があるし――」


「あなたの名前を聞きたいのですが」


 あっさりとOKがもらえた事に対して拍子抜けをした蒼空だったが、それでも情報が得られるのはうれしい。


 そして、彼女の名前を聞く事にしたのだが……。


「私の名前はビスマルク……鉄血などの称号は持たない、パルクールランカーのビスマルクよ」


 彼女の名はビスマルク。それを聞いた蒼空は何処かで聞き覚えがあるような――と感じていた。



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