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榛名・ヴァルキリー(その2)

>午前3時5分付

誤植修正:ブラウザのつぬやき→ブラウザのつぶやき

追記:榛名の言うコンテンツの正常流通~→榛名の言うコンテンツの正常流通の障害となる存在、

###


 3月11日午前12時、ニュースで伝えていた内容は誰もが目を疑う内容だった。


「ここまでやろうと言うのか――!」


 そのニュースを見て驚いたのは柏原隼鷹かしはら・じゅんようである。彼と同じような反応を示した人物も多い一方、冷静に対応している人物もいた。


「想定の範囲内と言うべきか。遊び半分で炎上させ、それが大事故を招く可能性があるとすれば――文字通りのブーメランだな」

 

 ガジェットの登録作業等の関係でアンテナショップで缶詰状態のビスマルクは、今回のニュースを見ても驚くようなことはなかった。


 

 このニュースに関して、ネット上では予想通りと言うか――炎上していた。


【まとめサイトも、速攻で削除されている。それほど、今回の事件は相当なものと言えるな】


【ゲリラライブとの関連性はなかったが、影響は広範囲に及んでいる】


【このままでは、埼玉県内では超有名アイドルのライブが見られなくなるだろう】


【これは、さすがにネタだろう】


【虚構サイトで取り上げていない以上、マジ物だろうな】


【このニュース、どういう事だ?】


 つぶやきサイトでも釣りニュースなのでは――と疑問を持つユーザーがいる。


 しかし、テレビ局がこのニュースを取り上げている以上は、偽ニュースではないという事になるが――。


【一体、何を取り上げて削除されたのか?】


【遊戯都市奏歌では、ある話題に関してはネット炎上を危惧して投稿できないという話を聞いた事がある】


【該当するニュースはテレビで検閲されている様子はなかったのだが――どういう事だ?】


【どうやら、ゲリラライブとは別に芸能事務所が――】


【それは違うな。原因はゲリラライブではない。梅島で行われていたイベントで――】


 ある人物の発言が途中で途切れている。梅島のイベントで何が起こったのか?


「なるほど。そうきたか」


 コンビニ前でARガジェット内アプリのブラウザで方法を仕入れていたのは、大和やまとアスナである。


 彼女の服装は若干露出度の高いARアーマー用のインナースーツを着ており、これからARゲームに参戦しようと言う中で――。


「しかし、イベントの詳細が分からなければ――。待てよ、あの付近はフジョシ系のイベントが頻繁に行われていたが」


 ブラウザのつぶやきで閲覧できない物を推測するのは容易だが、本当にその勢力が起こした物なのか……というのは疑わしい。


「今は、シティフィールドに集中すべきか」


 大和のいる場所、それは草加市である。一部ニュースが閲覧できない状況は、そこにあるのかもしれない。



 同日午前12時10分、例のニュースの内容を検索しようとした蒼空そうくうナズナだったが、ニュースの方よりも重要視すべきなのはガジェットの方だった。


「あのガジェットの情報を、仕入れないと――」


 アンテナショップを出て、シティフィールドのエントリーエリアを探すのだが、西新井ではシティフィールドの受け付けは見当たらない。


 それもそのはず、ここでは別のパルクールを扱ったARパルクールである、通称『サバイバー』のメインフィールドでもある。


 こうした事情もあって蒼空はやむ得ず、最も近場である竹ノ塚まで戻ろうと考えたのだが――。


『アイドルコンテンツによるディストピア――それに反旗を翻そうと考えている、全ての人間に告げる!』


 声のする方向を向く蒼空の目に映った物、それは先ほどまで動画を見ていた榛名だった。


 この中継は午前12時5分辺りから始まった為か、内容は途中からだが……その内容は何となく分かる気配だ。


『我々はアキバガーディアン――超有名アイドルコンテンツを初めとした、不正流通を正す為の組織である』


『コンテンツの不正流通、たいていの人間であれば違法アップロードや違法コピーの類を思い浮かべるだろう。それらも不正流通なのは間違いない』


『しかし、そうした不正流通以上に法律では規制できない事例が確認されている。それが、超有名アイドル商法と呼ばれる存在だ――』


 榛名の言うコンテンツの正常流通の障害となる存在、それは動画の違法アップロードに代表される物とは違い、いわゆるネット炎上やタダ乗り系まとめサイト、アフィリエイト系まとめ等の事らしい。


 それに加え、超有名アイドル商法と呼ばれる一部アイドル投資家が大量に商品を爆買いする等、正常なコンテンツ消費とは思えないような売買――ようするに株式投資型コンテンツ消費に対して敵視していた。


『――超有名アイドルだけが勝利者だという世界は終わりを告げた。我々は、コンテンツ産業に新たな革命を起こす為に行動する!』


 拳を上げるようなポーズはせず、榛名は重要な宣言を行う。コンテンツ産業に新たな革命を起こす事――それが、彼女の目的なのだ、と。


「アキバ――ガーディアン」


 蒼空は思う。彼女の様な考えを持っている人間も、確かに存在する。超有名アイドルばかりが売れているのには日本政府が影で操って――という考えを持つ者もいるかもしれない。


 その一方で、強硬な手段に出てまで超有名アイドル商法を撤廃しようと言うのもおかしな話だ。Web小説の影響を受けている等の反応はネット上のつぶやきでも散見される。


【彼女の言う事にも一理ある。確かに、CDランキングで超有名アイドルばかりが無双するのはおかしいと考えるだろう】


【しかし、超有名アイドルが日本経済を救ったという噂もある。それに対して反逆するのも、勇気がある話だ】


【超有名アイドルは神であり、絶対的な存在。それに対して異論を唱える彼女こそ、国家――】


 中には過激な発言で榛名を批判する者もいる。それ位に、榛名の宣言は馬鹿げているの一言では片付けられない所まで到達していた。


「こうした思考を持った人間は――利益を求めようと暴走する企業よりも危険な存在だ」


 蒼空は榛名の宣言を聞き、その考えが大企業の利益至上主義よりも危険だと直感で感じていた。


 しかし、蒼空のような否定的な考えを持つ事は間違っていない。その一方で、一部の情報だけで即座に危険と考えるのも――と蒼空は思いとどまった。

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