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断片的なチュートリアル

>更新履歴

・2月10日午前1時47分付

誤植修正:8月→3月

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 3月4日午前11時35分、受付の方は桜野麗音さくらの・れいねが言った通りに空いていた。


 ガラガラではないのだが、書類で時間のかかっている数人程度が足止めをされているらしい。


「提出されたデータでは不確定な場所がありますので、こちらで直接ガジェットを――」


 男性スタッフの一人が、あるプレイヤーのARガジェットを調べようと提出要請を出すのだが、相手側は拒否反応を示す。


「提出データに不備がないのは、デジタル署名で証明されているはずだ」


 相手の男性はいかにも投資家というオーラを周囲に見せびらかしているような……そんな外見である。


 ARガジェットも金色に塗装されており、そこが直接確認要請の原因らしい。


「確かにARガジェットのカスタマイズは認可されているショップで行う分、個人カスタマイズは自由です。しかし、それはARパルクールには該当しません」


 男性スタッフの方も食い下がれない理由がある。下手に事故が起きれば、保険金騒動に発展するだろう。こうした炎上案件を防ぐのも、運営の仕事と考えているのだ。


「最低でも安全装置に不正改造が行われていないかのチェックだけでも――万が一、それも拒否されるようでしたら出禁も検討いたしますが?」


 あまり脅迫的な言葉は使いたくないが、向こうがチェック拒否をするようであれば考えがある。その切り札、それこそレースへの出禁処置だ。

 

「さすがに、それをやられると、こちらとしても大損害になる。仕方がない、ここはチェックを受けよう」


 向こうも出禁の意味が理解できたらしく、黄金のARガジェットを男性スタッフに預ける。



 同日午前11時40分、蒼空そうくうナズナはARガジェットを受付に見せる。チェックの方は一発クリアだったのだが――。


「初レースであれば、チュートリアルを受ける事が可能です。チュートリアルを受けますか?」


 男性スタッフからはチュートリアルを受けるように薦められる。せっかくなので、チュートリアルを受けると言う事にした。



 別の部屋へ誘導された蒼空が目撃した光景、それは複数のプレイヤーが何かのメットを被っている光景だった。


「チュートリアルですね? この席に座って、このメットを被ってください」


 男性スタッフに言われた通りに、指定された席に座り、そこに置かれていたメットを被る。メットから見えたのは、シミュレーターを思わせるような画面だ。


『――シティフィールドのコースは、基本的なルート以外は表示される事はありません。ショートカットを独自で発見する事も、勝利への近道です』


 システムのメッセージをいくつか飛ばし、レース開始辺りのルールからチェックする蒼空だが……飛ばし過ぎたと後悔する。


 あまりにも飛ばし過ぎた為、気が付いた時にはコース取りの説明だった。モードが2種類あると言う部分、ガジェットについても飛ばしてしまった為、後悔の度合いは非常に大きい。


 文章を戻す事は出来ない仕様になっているようで、ここは諦めて残りの文章を確認する事にした。飛ばしてしまった部分は後で調べるという方法である。


『ショートカットに関しては、外コースではなく内コースにあります。観客席になっている外側へ出る事は失格対象になっております』


『ショートカットの入り口に関してはARガジェットに表示されませんが、コースの形状はそのまま表示されます』


『基本的に建造物はバリアが展開されていますので、少しの衝撃には耐えられます。ただし、物には限度がありますので、その辺りにはご注意ください』


『建造物の破壊行為、無差別破壊行為、過度のプレイヤーへの攻撃は警告を受けます。この警告も加算すると失格処分です。ご注意ください』


 文章に関しては硬いものが大半で、ゲームの分野とは離れた業者に頼んだ説もある位だ。


「本当に建造物を破壊しようとする人物が――それも疑問が残る」


 蒼空はARガジェットで単純な破壊行為が出来るわけがない……と思いこんでいる。


 しかし、アカシックレコードの悪用で人類滅亡のシナリオがあり得る事はさまざまな人物からも聞いていた。



 午前12時、お昼時である。蒼空のレースは12時45分と言う事で、若干の時間がある。せっかくなので、先ほどのカフェへと再び足を運ぶ。


「メニューをどうするか――」


 あの時とは違い、今回は一人である。いざ、メニューを見てみると普通のメニューもあるのだが、頭をひねっても想像できないメニューもあった。


「とりあえず、コーヒーは確定として……何かつまめそうな物を頼むか」


 満腹状態でARガジェットを動かしてはいけないというルールは存在しないが、食べてすぐに運動するのは厳しい物があるだろう。


 それに加え、ARガジェットの反動がどれほどの物なのか……想像もできない。


「とりあえず、これとこれを――」


 適当に軽食系のメニュー表から選んだのだが……後に後悔をする事になる。



 午前12時5分、蒼空のトレーにはたこ焼きとプチハニートーストが乗っている。


 プチハニートーストは、トーストに蜂蜜とホイップクリーム、その他のフルーツで盛り合わせた物で、パフェトーストとも言われていた。


「もう一個はチョコと聞いているが、形状がたこ焼きなのは注文ミスなのか?」


 見た目がたこ焼きにしか見えない食べ物、ソースのかわりにかかっているのがチョコホイップ、青のりではなくてチョコチップクッキーと言う事で……たこ焼きではないと分かる。


 ただし、このたこ焼きは出来たてほかほかである。一体、どういう事なのか?



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