歯車を新しく作ろう
ど田舎の我が家の無駄に広い裏庭に突如現れたロボットとそれとそれをただ見つめているちんちくりんな私。おしまい。ちゃんちゃん。ではなく、私は冷静になりつつもロボットよ!ロボットが目の前にいる!とキャーキャーとアイドルのライブ並みに心の中で叫んでいた。
しかし、ただ広いだけの空き地同然の裏庭でよかった。これが密集地ならば警察とかマスコミが押し寄せてくるのだから、クレーターができていても近隣住民の心配とか何も動じることもない。現にこのロボットは我が家の裏庭に立派なクレーターを作っているのだから。
「 」
「え、なに?」
ロボットが何かを発している音が、言葉が聞き取れない。何語だろう。もしかしてこれはアニメなどのありきたりの地球外の言葉なのだろう。それなら日本語と大嫌いな英語しか話したことがない私だからこの二つの言語ではないことはすぐにわかった。
「何を言っているのですか」
私はもう少しロボットに近づいた。じゃりじゃりと石がこすれる音が妙に普段より大きく感じる。
「 ne… k…」
「ですから何を言っていのですか。あー日本語わかります?Can you speak English or Japanese?」
「…英…语…I…、…我…」
ロボットが何かを言っている。英語だろうか…しまった。と私は頭を抱えた。私は英語が大の苦手なのである。しまったと思うがもう後の祭りである。「畜生…」と声を絞り出すしかできなく、目の前のロボットを見る。
「Yo..u...can s..peak...」
「あなた英語しゃべれるのね!」
たぶん英語だろう。フランス語とかロシア語でなないと思う。
「Do you understand?」
「...Yes」
英語なら話せるらしい。アニメの嘘つきめ。あれはすぐに日本語を話せたぞ。
「ん?でも英語が喋れるってことは英語圏で作られたのあなた?」
「ァア...well...いや… ス」
英語なにか英語ではないのか何を言っているのかますます解らない。うーんうーんと唸っている私にロボットが手を伸ばしてきた。ビクッとする私に対してロボットは私に触れるか触れないあたりでぴたりと手を伸ばしているのを止めた。止まるロボットと何をするのかと警戒をする私。あーこれはどっかで見たあれだわ。えーと某有名アニメのあれだわ。空を飛ぶ城のあれだわ。と思いながらも警戒を怠らない。
「びっくりさせてすまない…」
「へ?」
間抜けた声が私の口からあふれて出てきた。いきなり日常会話で私が話している言語、日本語を話すからだ。
「えーっと…日本語お上手ですね」
アハという言葉が出てきそうな声で答えてしまった。
「そうか。上手いのかこれは」
「そ、そうッスねーお上手ですねー」と棒読み同然で言う。ムクリとロボットが立ち上がる。多きい。たぶん3mぐらいはありそうな大きさだ。大きいですねーと声が漏れそうになった。
「君の言葉からして日本という国であろうと判明した。母国語を日本語に変換して話している」
「へー便利なんですねー」
「ああ、だから君が話した英語は少し発音が違うぞ。understandはunderstandと発音する」
とネイティブも唸る綺麗な発音でロボットはわざわざ私の発音をなおしてくれた。いらんお世話じゃ。このやろー!
「少女よ。すまぬが私を匿ってはくれないだろうか」
「へ?」
突然言われた匿ってくれ宣言。私はどうする?匿う?匿わない?というゲームなら下に選択肢が出てきそうな言葉がロボットに綺麗な日本語の発音を出している口からポロリと出てきた。本当にポロリと。
「いやいや、我が家はロボットさんが住めるような大きな家ではありませんよ?」
むしろ小さい。玄関に入り口が狭い。ロボットなんか入ってみろ。一回で家が壊れてしまう。
「いや、むしろあれでいい」
「あれでいいの?本当に?」
ロボットが指差したのはもう使っていない蔵。蔵の入り口は無駄に大きいし入りやすそうだ。
「あそこなら誰も使っていないからいいと思うよ」
「そうか。すまない」
となにも考えずに了承したがよくよく考えてみると私のものではなく祖父の蔵だったなと思いながら蔵をロボットと見つめていた。これが私とロボットが一緒に暮らすようになった理由である。別にロボットと一緒に暮らせるようなったから良いよね。とかないということがすぐに判明したのだが。