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邂逅 3部 Phase1

カチャン…………


 話が途切れて一瞬静まりかえった室内に、ティカップを受け皿へ置く音が響いた。


 すったもんだの後……とりあえず応接室に落ち着いた五人は、一見するとのどかな様子でテーブルについている。


 だがしかし、男達の身体中に巻かれた包帯や絆創膏がそんな雰囲気をぶち壊していた。

 暴発したリューヌの魔力で部屋ごと吹き飛ばされた結果である。


 ガストンはかなりボロボロになっており、クレールもあちこちに包帯が目立つ。

 けれどアレイムだけは、頬に絆創膏が見られる程度でほとんど無傷である。


 単なる運の差によるものではなく、恣意的なものではないかと邪推したくなるほどだ。


 ちなみに素っ裸のままではさすがに具合が悪いので、アレイムはクレールの練習用着(トレーニングウェア)を借り、長い髪を首の後ろの辺りで結んでいる。


 重い沈黙を破り、ガストンが口を開いた。

 震える声と手を無理やり押さえつけ、努めて平静を装ってリューヌに問いかける。


「……つまり、九個の《(オーヴ)》をまとめて一遍に充填(チャージ)しようとしたら、空間異常が起きてアレイム殿が召還されてしまった――と……

 そういうことなのだな?」


人差し指を頤に当て、小首を傾げてリューヌが答える。


「配列が悪かったのね―きっと……。

 多次元世界の門でも開いちゃったんじゃないかしら?」


「他人事のように言うんじゃない――っ!!」


 目を剥き薄くなった毛を逆立てて、ガストンは両手をテーブルに叩きつけて立ち上がった―が……


「~~~~~~まったく~~~~次から次へと…………」


精も根も尽き果て、ぷしゅ〜っと空気が抜けるかのように頭を抱えて座り込んだ。


「ごめんなさ~~い……」


ペロッと舌を出しながらリューヌが苦笑いする。

そんな娘をじと目で睨んでいたガストンは、不意に表情を改めると、


「アレイム殿――この度は誠に申し訳ありません。

詳しい説明は後ほどゆっくりさせていただきますが、当方のミスで貴殿を異なる時間、事なる場所に迷い込ませてしまったようなのです。

元の世界に戻せるように最善を尽くしますので、しばらくの間当家にご逗留いただけませんか……?」


両手をついて深々と頭を下げた。


「あ、いや……お顔を上げてください、ガストン殿。

 私の世界にも魔法使いがおりますので、完全にという訳ではありませんが、大体の所は理解できました」


恐縮したようにアレイムが応える。


「私も刺客に襲われ絶体絶命の状況でしたので、結果的には命の危険を救って貰ったことになります。

……見聞を広めるのにもよい機会かもしれません。こちらこそ宜しくお願い致します」


 異世界からいきなり素っ裸で呼び出された挙句、(かたり)の痴漢呼ばわりされて、終いには魔法で吹っ飛ばされたのだ。


 色々と言いたいこともあるだろうに、全く表情に出すこともなくにこやかにアレイムは応対している。


そんなアレイムの横顔を、眩しそうに見つめていたリューヌは、


「なんとなくいいな、この人……」と、心の中で呟いた。


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