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邂逅 2部 Phase2

《不純異性交遊》

                《妊娠》

       《退学》

             《未婚の母》


 様々な言葉が頭を駆け巡り思考停止状態に陥った三人の目の前で――


 素っ裸の若い男とバスタオルを素肌に巻いただけのリューヌが、ベッドの上で組んず解れつ絡み合っていた。


「……………………………………………………………………………」


「なっなっなっなっなっなっなっなっなっなっなっなっなっなっなっ」


「あら、あら、あら、あら、あら、あら、あら……」


 呆気に取られて眺めているクレール、

 震える手でリューヌを指さしひたすら「なっ」の言葉を繰り返すガストン、

 頬を染め困ったような笑みを浮かべるメール。


 そんな三人に気付いたリューヌは、半身を起こして手をぶんぶんと振りながら、


「パ、パパ……ち、違うのよ! これは――」


 顔を真っ赤にして状況説明を試みた。


 ……がその時、絶句したままだったクレールが不意に顔色を変えると、手にした木刀の先端を裸の男に向けた。


「きさまっ 強盗か―っ? それとも痴漢か―っ 」


 半身を起こしたリューヌにつられて身体の位置をずらした男の右手に、抜き身の小剣が握られているのに気付いたのである。


「リューヌから離れろ!」


 叫ぶと同時に裂帛の気合いを込め、男目がけて一撃を繰り出すクレール。


 刹那――銀光が走り、切り取られた木刀の先端が宙を舞う。

 豹の様にしなやかな動きでベッドから飛び降りた男が、音もなく着地するや剣を一閃し、自分に向けて振り下ろされた木刀を切り飛ばしたのである。


「我が名はアレイム=ギボール、アンティクトン王国の第一王子である―


 なにやら事態がよく飲み込めぬが、剣を向けるとあらば容赦はせぬぞ」


 男は――一応共通語ではあるが―形式張った古めかしい言い回しで毅然と言い放った。

 一同を見据える黒い瞳は、澄み渡った夜空のように冴え、強い意志の光が宿っていた。

 全く無駄のない引き締まった身体つきの十七、八の美青年で、蒼みがかった黒い髪が背中の半ばまで覆っている。

 片膝をついた姿勢のまま、一点の隙もなく剣を構えた姿は神々しい彫刻のようであり、リューヌは状況も忘れて思わず見とれてしまった。


 しかし、メールの呟いた「まあ、ご立派」という言葉を耳にして、あるモノ(、、)に気づき、顔を真っ赤にして背けたのだった。


「……ば、馬鹿を言え――っ! うちの王国(アンティクトン)にはアレイムなんて王子はおらんわ」


 青年――アレイムの放つ威厳に呑まれた一同であったが、真っ先に我に返ったガストンが口角泡を飛ばして指摘した。


「何者だ、貴様!


 痴漢の分際で大それた身分の詐称まで謀るとは――

 いったい何が目的なんだ?」


 ガストンの言葉の意味を吟味していたのか……

 一瞬遅れて反応したアレイムは憤然として剣先を二人に突き付けた。


「我を(かたり)呼ばわりするか――っ!」


「はんっ! 丸腰の相手に剣で威圧か……? たいした王子様だ――」


 気を取り直して、小馬鹿にするような調子でクレールが挑発すると、


「………ならば、拳で勝負だ 何人でもかかってこいっ 」


 アレイムは即座に短剣を投げ捨てて掴み掛かっていった。

 ……案外単細胞のようである。


「よ、よし! 助太刀するぞ、クレール」

「パパ――!?」


 組み合わせは違うが再び組んず解れつ縺れ合う二人の間に腕まくりをして飛び込んでいくガストン。

 乱闘を止めようと、リューヌが立ち上がった。


「ち、ちょっと やめてよ、パパ……三人とも― 」


 必死に声を張り上げるが、絡まるように殴り合っている三人には全く届かない。


 リューヌは思いっきり息を吸い込むと、館中に響き渡るような大音量で叫んだ。


「もう――、違うんだってば―っ  話を聞きな――」


 ――パラッ…………………………………………


 握った両拳を一気に振り下ろした途端、巻き付けていたバスタオルが外れて落ちた。

 リューヌにとって最悪のタイミングであった。


 凄まじい怒声に驚いた三人が、殴り合いを止めて、声の主に注目を寄せたまさにその瞬間――

 未発達ながら均整のとれたみずみずしい肢体が、さらけ出されたのだ。


 小振りだが形の良い胸は重力に逆らってツンと上を向いており、淡い桜色をした蕾がその先端を彩っている。

 カップメンなんぞを間食している割には、無駄な贅肉など欠片も付いておらず、きゅっと引き締まったウエストから腰のラインはすでに幼児体型を脱している。

 淡い虹色の翳りは申し訳程度に秘所を覆っているだけで、柔らかそうな盛り上がりが男供の目を釘付けにした。


 男達にとってはまさに最高のタイミングだったかもしれない……


「~~~~~~~~~~~~」


 真っ赤になってしゃがみこむリューヌ――

 羞恥と怒りのため髪は逆立ち、肩が小刻みに震えている。

 リューヌを中心に、空気中に放電現象が生じて幾十もの雷光が迸る。


 空間に描かれた白銀色の茨模様は徐々にその範囲を拡げていった。


「リューヌ、まずは深呼吸をして落ち着こう――なっ……」


「立派に育って―父さんは嬉しいぞぉ…………」


「……………………」


 とりあえず宥めるクレール。

 うるうると目の幅涙を流して、拳を握り締めるガストン。

 耳まで赤くして後ろを向いたアレイム。


 殴り合っていたことなどすっかり忘れ、それぞれ違う反応を示した三人だが……

 その末路は等しく哀れであった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ~~~~~ 」


 リューヌの絶叫とともに、怒涛逆巻く衝撃が館を突き抜けた――

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