邂逅 1部 Phase1
本編の始まりです。しばしのおつきあいを・・・
パステルピンクを基調にファンシーに構築された寝室は、一人用にしては呆れる程広く豪勢であった。
部屋の中央には豪奢な革張りのソファ。
壁一面取り巻くように埋め尽くされた本棚には、魔術や魔道工学の稀少本がずらりと並んでいる。
最先端のホームシアターシステムが完備された一画には、天蓋付きの豪華なクイーンベッドが配置され、ベルベットのように滑らかなシーツの上には半裸の少女が座りこんでいた。
風呂上がりなのだろうか……
バスタオル一枚を身体に巻いただけの色っぽい姿で、キンキンに冷やしたオレンジジュースの入ったカクテルグラスを口元に運んでいる。
まだ湿ったままの髪は、肩の線できれいに切り揃えられており、光の加減で何色にも見える不思議な虹色をしていた。
同色の端整な柳眉の下には、生気にあふれたエメラルドグリーンの瞳が印象的に輝いている。
肌の張り艶や成長途上の曲線から判断すると……まだ十五、六がいいとこだろう。
「―ったくぅ……、ケチなんだから…………」
少女は手元に転がっているこぶし大の透明な《珠》を眺めながら、なにやらぼやいている。
「九つもあるんだから、一つや二つくらいいいじゃないの……そうは思わない―?」
「にゃあ……」
枕元に寝っ転がっている黒猫(?)が薄目を開けて、いかにもおざなりな返事を返してきた。
ふんわりとした羽枕に頭を乗せて気持ちよさそうに伸びている。
「なに猫のふりなんかしてんのよ、シャドウ―。まったく…暢気でいいわねぇ………」
眉間に軽くしわを寄せ、手にしたグラスの底で《珠》を軽くはじく少女。
チィ……ン…………
堅く透き通った音が室内に響き、ゆっくりと転がった《珠》は、互いにぶつかり合いながらやがてシーツの上で一カ所に固まった。
「……そうだ―っ 」
少女は眼を細めて二マッと微笑むと、《珠》を両手に抱えておもむろに立ち上がった。