御伽噺
構想20年…一部リメイクしながら再構成していきます。
週一以内に更新していくつもりです。
しばらくの間お付き合いください。
昔々あるところに、心優しい王子様がいました。
戦の絶えない世の中で、貧しい暮しを余儀なくされる人々を見て、
王子は、大変心を痛める毎日を過ごしていました。
そこで王子は、ある日周りの国々に、
不戦条約の締結と共同灌漑事業への参加を呼び掛けました。
ところが、どこの国でも頭の固い軍人や官僚組織が幅を利かせていた上、
死の商人達が争いの継続を望んでいたため、
賛同してくれる国は一向に現れませんでした。
それどころか、国内においても同様の勢力から疎まれ、
命を狙われるようにさえなってしまいました。
それでも王子は諦めずに、
彼の理想に共感してくれる仲間を少しずつ増やしていき、
一歩一歩着実に改革を進めていこうと、
地道な努力を続けて、毎日を過ごしていました。
そんなある日、王子を力尽くで排除しようとした一派が、
王子の入浴中を狙って暗殺団を送り込んできました。
寸鉄ひとつ身につけていなかった王子は、
刺客から奪った小剣で、必死に抵抗しました。
その時―
たまたま下界を観賞していた気まぐれな女神様が、
裸で戦う若い美男子の王子様に興味を引かれて、
ひょいっ…と、助けあげようとしました。
けれど……うっかり者の女神様は、
途中で王子様を落っことしてしまい、
天界と下界の狭間で荒れ狂う
時空の奔流に巻き込まれた王子は、
すっかり迷子になってしまいました。
時の門の向こうに流されていく王子を
悠然と見送った女神様は、
従者を振り返り、ただ一言――
後は任せたわよ~♡
任されてしまった従者は、
深い深~いため息をひとつ吐き、
さて……、どうしたもんかねぇ…………
そう呟くと、
後始末のために王子を追って、
時の門を潜って参りましたとさ――