17;00~20;00
さすがにここまでくると口数やひとり言も減ってくる。心と体の疲れが効いている。もう既にピークだ。それに…退屈だ。
幽香が出てきてから1時間半。俺はぼけーっとしながらこの空間の目が何個あるか数えていた。
ポクポクポク
「おお…藍様か」
「乳、寄せまっせー!」
「なんかちょっとやる気になってない!?バラエティ慣れした藍様とか嫌だぞ俺…」
「いやもう、吹っ切れてしまおうと思ってな」
「大胆になったな~」
「それで…紫さまから伝言があるんだが」
「何ですか?」
「走り続けて疲れてる月見草のために、マッサージ用意した」
「え!?マッサージ!?」
「少し準備をしてくる。持ってきたこの敷布団にうつぶせになっていてくれ」
そういって渡された薄い敷布団を広げる。できる限り平静を装っているが内心わくわくだ!藍様のマッサージだよ!?
あの白魚のような手でマッサージ…仰向けだったら大変なことになっていた。少し赤面しつつあるチェリーボーイが期待を胸にうつぶせになる。
と、その時誰かが近寄ってくる気配がした。藍様だ!そしてその手が俺のふとももへと触れた。
感覚の鈍いふとももでも、その手の柔らかさがよくわかる。これこそまさに役得!やっててよかった~
ムニュ
「え!?」
突然背中に感じる柔らかい感触、足全体に伝わる温かさ!?おいちょっと待て、藍様が後ろから抱きしめている!?マッサージって18禁系なのかぁぁ!!
おいおい紫!自分の式に何させてんだ!そう思いつつ緊張のせいで体が全く動かない。
とにかく感触が良すぎる!特に背中が敏感になっている。背中に伝わる柔らかさ、そして硬さ…ん!?硬さ!?なんかおかしいと思いふり返ると…
「なんで衣玖さんが!?」
「ごめんなさい…“棘符”雷雲棘魚!!」
「ぎゃああああああ!!」
衣玖さんの体が雷に包まれ、逃げることもできず感電させられた!!あの硬い感触、衣玖さんの帽子のつばだったんだ…
『どう?マッサージは?』
「…藍様がやるかと思ってた」
『一言も藍がマッサージするって言ってないわよ?それに電気ショックで肩こりがとれたでしょ?』
「強烈すぎるわあんなん!巨大スタンガン押しつけられたようなもんなんだぞ!」
『添い寝できたんだからいいでしょ~』
「良い感触ならすでに吹っ飛んだよ…」
頼むからマジに不意打ちはやめてほしい。あのブッシュウウウ!で出てくれる方が気持ち的にまだマシだ。
走れるかなこりゃあ…体全体がしびれていてしばらくうつぶせのままでいることにした。
ブッシュゥウウウ!
「言ってるそばから!?誰だよおい…永琳!?」
「ごめんなさいね“蘇活”生命遊戯‐ライフゲーム‐」
「絶対謝ってる顔じゃねぇぇぇ!」
その微笑みに隠れた黒い感情を俺は見逃さなかった!絶対ありゃ心のうちでほくそ笑んでやがる!
いきなり現れた弾が俺の周囲を包み、緑色の大玉と粒の弾幕が襲い掛かってくる!俺は心の中で医者を求めたが弾幕なんか注文してないぞ!!
「わ、わ、わ、わー!“恋符”ノンディレクショナルレーザー!!」
三方向に放出したレーザーが回転し、弾をどんどんかき消していく!
Time Up! Bonus Failed…
『あらら、スペカ使ったからご褒美は無しよ』
「いやもうあれはご褒美なしでもいいよ…」
永夜抄はEasyしかプレイしていない。霊夢と魔理沙にボコボコにされるからだ。Easyでも姫には会っていないなあ…
それから30分後…
とりあえず、またエアーサロンパスを足に吹き付け横になる。言っておくがキャラとキャラが出てくるまでには何十分か空きがある。
たまにそれが1時間だったりするから余計に怖い。予想の仕様が無いのだ。
ブッシュゥウウウ!
「うわああ誰々!?かぐや姫だっ!」
思ったそばからやってきた!?おいおい俺は姫のスペカ見たことないんだぞ!本のグリモワール・オブ・マリサで見た程度だぞ!?
「“難題”龍の頚の弾‐五色の弾丸‐!!」
七色に光るレーザーが移動範囲を狭めつつ、七色に光る弾が襲い掛かる!見てる分には綺麗なことこの上ないんだけど!
「うぉっと!おおっ…とっとっと!おおー!」
ピチューーン!
訳わからん叫び声とともに後ろに逃げようとして足に当たった!
『何でスペカ使わなかったの!?』
「…抱え落ちした。いけるかと思って使わなかった」
『ありがちな話ねえ』
「リアル弾幕ごっこでは抱え落ちは厳禁だな…」
ブッシュゥウウウ!
「またっ!?誰だ…てゐ!?」
「あーっはっはっはっは!この企画最高ね!私もいくよ!エンシェントデューパー!」
「わあああ!」
「南無三!“大魔法”魔神復誦!!」
突然飛んできたスペカがてゐの弾幕をかき消した!
「誰だ!」
突然の来訪者にてゐが叫ぶ!たしかに弾幕ごっこで2対1はまずない。
「弾も打てない一般人に…なに弾幕撃ってるの?妖怪が人間困らせて、それがそんなに面白い?」
「あ…あなたは!?」
「あんた一体誰だ?」
「私?私はねえ…寺の住職よ!」
「ひじりー!!」
カッコよく聖がやってきた!やった!最高だ!これこそ神だ!ゴットマザーだ!
もう今度から俺ピンチになったら“助けてひじりん!”って叫ぼう!“ひじりん!ひじりん!”って右腕大きく振り上げよう!
「それでも相手になると言うなら…相手になるわよ」
「ちい…」
悔しさをにじませつつ、尻尾巻いててゐは逃げて行った。何か本当にドラマの悪役っぽいなてゐ…
「聖…いや助かりました!ありがとうございます!」
「いえいえ…それより無事でしたか?」
「はい!おかげさまで…」
あー、なんかマジに嬉しい。惚れそうだ俺。嫁さんにしたいよこの包容力…あんなカッコよく俺を助けにきて…ん?
「あれ?聖?なんでスキマ空間に入り込めたんですか?」
「それはねえ、紫に呼ばれたからよ」
「ねえ聖。どうして紫に呼ばれたの?」
「それはねえ、あなたを驚かせるためだよ」
「……ねえ聖、どうしてメガネをかけてるの?」
「それはねえ~ワシがマミゾウだからじゃ!“狢符”満月のポンポコリン!」
「化けてたのかこのォォ!!」
ピチューーン!!
輪状に飛んでくる弾幕、円状に並んだ蛙…を一瞬見た気がする。なんせすぐに被弾したから。
あいつめ…聖に化けていったん助け、俺の油断を誘うとは!
ということは…もしかすると、てゐのやつとも事前に口裏合わせていたのか!?マミゾウ…恐ろしい人!
一瞬抱いた聖への思いを返せ!脳内で助けてひじりんと叫んだ数十秒前の俺にドロップキック喰らわせたい…
ポクポクポク!
「うわあああ!あ~藍様か」
「乳、寄せまっせー!」
「おー…」
もう疲れてるせいか、レアな藍様の乳寄せでも元気が出ない。
「ずいぶん疲れているな…晩御飯持ってきたぞ」
「ありがとうございます」
「元気になってくださいね」
「ありがとう橙~」
やばい、橙に心配されるとは…でもこれすごい嬉しい!藍様が親バカになるのわかるな!こんないい娘いたら何が何でも仕事早く切り上げて帰るぞ!
「肉じゃが作ったぞ」
「おおー!」
藍様の肉じゃが食えるとは!さっきの怒り全部帳消しにしてもいいなこれ!弾幕ごっこなかったら最高だな!
手料理に癒されつつ、心と体の疲れをとる。ここに来て4度目の食事だが、食事中に襲われたことは無い。
食事中に弾幕ごっこ仕掛けると弾幕で飯や器がぐちゃぐちゃに壊されるからだ。紫はそれが嫌で仕掛けなかったんだろう。これまでの経験上そうだ。
そう思うと飯がとても美味しい!苦労しているときに女性の手料理とは…オトされる典型的なシュチュエーションだな。
現在PM7;37
残り12;23
ようやくここで半分に到達しようとしていた…