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特別な思い 後編

はてさて、季節は冬となりました。受験の方もかなりヤバす。

ただ今私、山畑卓也は学校の先生に恋をしています。受験シーズンに何故と思う人も多数だと思います。まあしょうがない。国語の教師、佐久間明日香に奮闘中だ。



「だから違うってば。ここは、この文章を捉えればいいの。」

呆れながら明日香先生が言った。

「分かりませ~ん。」

「やる気ある?」

今の俺にどうしろと?

「あんたが教えてって嘆いてきたから私は帰らないで残ってるの。」

「だって…。」

先生が愛しいんだもん…なんて言えない。不意に思った。

「先生...。俺が浪人したらどう思う?」

「私としては、嫌だよ。合格して欲しいし。」

何だかほっとした。

「覚えてる?大会の原稿で山畑に行ったこと。」

いろいろ言ってたからな~。

「いっぱい言ってたから分からないです。」

「あんたに、生徒の合格した時の顔を見るのが嬉しいって。私、山畑にこれを一番伝えたかったんだよ。」

「俺に頑張って欲しいですか?」

「当たり前じゃん。だから一緒に頑張ろ。」

えっ、一緒に頑張ろうって事は、一緒にいる時間も増えるじゃん。やる気出てきた。



冬休みになった。冬休みになると、冬期講習と必勝祈願祭がある。でも今の俺の頭の中は、明日香先生と初詣の正月勤行だ。しかも必勝祈願祭の日は、静岡の富士宮市にいます。必勝祈願祭よりも大事な行事なので…。

「卓也ー。着いたぞ。」

祐太がでかい声を出す。

「正月早々疲れるんですけど~。」

「学校で必勝祈願するよりは良いでしょ。」

今俺は、祐太と一緒に富士宮にある所属寺にいる。そりゃ、うちの学校は宗教法人だからね。

「最近明日香先生とどう?」

お決まりの質問じゃん...って笑いながら言うな。

「馬鹿にしないで、少しずつだけど良い方向に進んでると思う。」

「少しだけね。」

絶対馬鹿にしてる...。

「とにかくちゃんと手を合わせよう。そうでもしないと受験も明日香先生も失っちゃうからね。」

「ったく、分かったよ。」

二人でお寺内を歩いていると亜由美から電話がかかってきた。

「誰?亜由美?」

「うん...ものすごくうっとうしい。」

仕方がなく電話に出た。

「もしもし、どうした。」

「どうしたじゃないよ。必勝祈願祭来てないじゃん。」

…えーーーーー。

「ごめん今忙しいから切る。」

ブツッ...プーップーッ。

「もしかして必勝祈願祭来てた?」

そうみたい。何で?

「やっぱりこっち来て良かったね。」

「これじゃー本当のストーカーじゃん。」

亜由美に関しては言葉が出ない。

「どうしたらいいの?分からないよ。」

「とりあえずお寺行こう。少しは気が楽になるよ。」

そうなれば簡単なんだけど…。嫌な気分で勤行が終わった。



冬休みが終わってそろそろセンター入試だ。こんな情緒じゃ受験どころではない。

久しぶりに部活に行った。

「どうした山畑?珍しいじゃん。さては悩み事でもあるな?」

さすが指導者。手塩にかけてくれただけあるわ。

「センター入試前なので少し原点に戻るという意味で...。」

「1・2年生は外でアップして。」

下級生に向けて言った。おそらく先生は気を使っているのだろう。

「明日香先生の事?」

この際だから思い切って相談しよう。

「違うんです。亜由美の事です。」

「別れたくても出来ないんだ。って顔に書いてある。」

えっ…。もろばれてる。

「だったらそれをぶつけてみたら。てか、言いたい放題言えばいいじゃん。それで縁を切れ。」

「……。」

「後は、お前の強い気持ち次第だ。それだけ鍛えてきたんだろ?それだけ明日香先生の事が好きなんだろ?」

そうだ俺は、自分自身に勝つためにここまでやってきたんだ。

「思い切って別れを告げろ。」

なんだか気持ちがふっきれた。

「はい、ありがとうございます。頑張ります。」



俺は、思い切って亜由美のいる大学に行った。もちろん制服だとまずいから私服に着替えて。とは言っても大学は迫力あるな…。完全敵地じゃん。

「あっ、卓也。こっちこっち~。」

無言で亜由美のもとに歩いた。

「来てくれたんだね。」

「……。」

「勉強頑張ってる?」

何も言いたくない。

「どうしたの?」

「……無理、もう別れる。」

やっと言えた。問題はこれから。追って来るか来ないかで亜由美の考えてることが分かる。亜由美の口が動いた。

「……、分かった。」

「じゃあね。」

走って帰った。…って追って来ないし。“それもどうなの?”って思う。けどまあいいや。



センター入試の前日になった。この日は、センター入試の壮行式だ。これもめんどくさい。式中に何だか物足りない感じがした。式中に祐太が紙を渡してきた。

“この式が終わったら明日香先生に会いに行ったら”

ナイス。どうせみんな早く帰るんだろうから。

式が終わりみんなが帰った。そのすきに俺は明日香先生の所に行った。

「明日香先生ー。」

「お~山畑。センター入試いよいよ明日だね。」

「うん。先生から何か俺に言って欲しいな。」

「何を?」

「先生の力が欲しいし。」

「ハハハ、分かった。じゃあ、これあげる。」

と言って先生のシャープペンをくれた。

「何これ?」

「見れば分かるじゃん、シャープペン。」

「はい?」

「はいって何?言葉より良いかなって思って。特別なんだからね。」

どういう意味で特別って言ってるの?でも嬉しい。

「これ使って頑張って。」

うお~~~、気合が入るぞ~。

「先生?俺、先生のために絶対合格してみます。」

明日香先生は自然と笑みを浮かべた。

「先生?卒業したら話したいことがあるんだけど…。」

「えっ?今じゃ駄目なの?」

「卒業してから、そうじゃないければ先生が困るから。」

「分かった、待ってるよ。」



そして今日はセンター入試。朝は4時起きです。しかも、クラスメートのみんなは、初日だけ。俺だけ2日目も。何だかんだで初日は終了し、問題の2日目。教科は、生物と数学。

“では始めてください”

わっ分からない...。でも、明日香先生に貰ったペンがあるから絶対大丈夫。

最後の科目は、生物だった。最後が簡単で良かった。すべてを解き終えて少しだけ時間がある。

ふいに俺は明日香先生に貰ったペンを見ていた。何だか明日香先生を思い出して涙が出てきそうになった。

何でだろう?明日香先生に会いたくなった。ペンからは、暖かい温もりを感じる。

会いたい。試験問題を解き終えた俺は今、明日香先生のことしか頭になかった。

先生のために受験勉強を頑張ってる。そう、先生に1人の男として認めてもらうために...。

センター入試が終わった後、所属の寺に行った。

お寺には、住職さんがいた。

「試験どうだった?」

「結果は分かりませんが、一応頑張りました。」

「そうか、あんだけ本堂で手を合わせてたもんな。」

おそらくそうゆう意味じゃ…。

「頑張ったんだからきっと良いことあるよ。」

「例え好きな人に振られてもですか?」

「うん。」

笑顔で言ってくれた。



俺は、受験が終わり、ひとまず大学にも受かった。とは言っても滑り止め。そして今日は卒業式。今日、明日香先生に思いを伝えるんだ。悔いを残さないように。って式中に考えてた。

「早く帰りたい。」

隣に座っている子が俺に言ってきた。誰だって早く帰りたいよ。

「そういえば、明日香先生は?」

今日に限って来てないなんて言わないでよ。

「てか俺さっき見かけたよ。」

「まじで、ありがと。」

「何が、ありがとうなの?」

「まあいろいろだ。」

あっぶねー。



式が終わって時間があったので廊下で祐太と話をしてた。

「今日言うんでしょ?心の準備は?」

「うん。大丈夫。」

「本当に今日で最後なんだね。明日香先生とも会えなくなるんだよ~。」

こいつ馬鹿にしてる。

「からかわないで。」

「でも本当だよ。来年度から明日香先生が学校を移動したらって考えると本気で言った方が良くないか。まさに、当たって砕けろだよ。」

“はーい席につけ”と担任の先生が言った瞬間に明日香先生が廊下を横切ってたのが見えた。

やっぱり今すぐ会いたい。早く解散して。

こみ上げてくるものが山ほどある。俺は、こんなにも人を好きになったことがあっただろうか?今まで生きてきた中で一番好きになった人だ。確信できる。



クラスは解散して俺は、すぐさま明日香先生のもとに向かった。職員室には、相原先生がいた。

「明日香先生は…、帰った…。」

「そうですか…。」

嘘だろ、もう会えないなんて…。

「だけど手紙渡してくれって明日香先生がお前に。」

訳も分からず手紙を読んだ。

“山畑へ。卒業式の今日、私に伝えたいことがあったんでしょ?でも今日は用事があって学校に残れません。明日の正午に私の所に来てください。放送部の室内練習場にいます。”

見捨てられてなかったんだ。

「明日、明日香先生に室内練習場の鍵を渡しておく。協力してやるから、しっかり思いをぶつけてこい。成長したかが試される最後の試練だ。」

そう言って相原先生は、職員室を出た。厳しいけど、良い指導者だな。



そして翌日。室内練習場に行った。そこには、椅子に座っている明日香先生の姿があった。

心を決めた。

「明日香先生。」

「おはよ。」

「先生、俺さ…明日香先生のことが…好きです。」

「え?」

「佐久間明日香を愛してます。」

間合いが長い。

「ごめんね、今までそうゆうの考えたことなくって。別に嫌いって言ってる訳じゃないよ。ただ山畑は、18歳じゃん。人生これからだし…私の入る余地ないし…。」

完敗だ…。

「でも、気持ちは嬉しいよ。ありがと。」

そう言って俺の唇にキスをした。

「俺、先生が俺のこと必要だって言うまで待ってます。ずっと。」

何だか泣きそうになった。泣くのをこらえて明日香先生を抱きしめた。



こうして、俺の高校生活は終わった。



半年後、法龍大佛眼高校の文化祭。

俺と祐太で顔を出しに行った。

「明日香先生に会えるかね。」

笑顔で祐太に言った。

「会えるんじゃない。」

と言われたとたん、明日香先生が。

「山畑。」

って言って手を振ってくれた。

俺は、笑顔いっぱいに手を振り返してこう言った。

「明日香。」



おしまい。

皆さんは、普通じゃありえない恋をしたことがありますか?どんな立場であっても、どんなに年齢が離れていても愛する気持ちは一緒だと思います。視点は、男の子です。ケータイ小説にしては少し珍しいかと。ですが、今好きな人に告白できない男の子。告白する勇気少しは出たのではないでしょうか。ありのままを伝えれば思いも伝わりますよ。



ユアサヒトミ

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