第7話 代行御用だ巨大ロボ
今夜の巨大ロボ運転代行のお客は…
県警の「警部」さん
アルコール入りとはいえ、お堅い職業
楽な送迎になりそうだ
さて、居酒屋の前で待機、出てくるのを待ちますか
「おまたせ~! 警部! かえりまーす!」
顔は赤く、足元フラフラ、ご陽気で登場
…今夜も気を引き締めて行こう
「あ、警部、お疲れ様です。 今夜の運転代行、私が担当となります」
「はぁい! よろしくお願いしまぁす!」
ピシッと敬礼し、そのまま自分の巨大ロボに乗り込もうとする
「…運転は私ですので」
「そぉでした!」
やれやれと警部を押し込み、俺も乗り込む
「運転中はハンドルやパネル、スイッチ等に触らないでください」
「そだね!わかった!」
はぁ…気づかれないよう、ため息をつき
随伴機にサインを送ると、アクセルを踏む
警部のロボは持ち主と違い、ズシンズシンと軽快に歩き出す
そして3分後
「気持ち悪い…コクピット開けるね…外の空気吸いたい」
警部はパネルを操作し、コクピットの入り口を開け始めた
冷たい風が高い音を立て入ってくる
「待ってください!ここ、10メートルの高さですよ!
落ちたら2階級特進ですよ!」
俺は慌てて閉じると随伴機にサインを送る
こんな時は早々に路肩に止めて、しばし休憩が一番だ
5分後…
体調も良くなったというので再び走り出す、が
「警部、歌います!」
「?」
「♪いっぬっのお巡りさん~困った困った~」
すると、警部がいきなり外部スピーカーをオンにする
「♪あなたのおうちはどこですかぁぁああああああ!」
街中に響き渡るダミ声
「触らないでください!」
慌ててオフにするも
「夜の街って、音、響くじゃない?」
「あなた警部ですよ!ダメじゃないですか!」
「あんた、運転うまいね。 僕のロボなのに、僕のじゃないみたいだ」
いきなり変わる会話
「警部、頼みますから…寝てください」
「…」
「警部?」
「いや、寝ない」
警部の声が急に冷たく乾いたトーンになると
モニターに映るコンビニを食い入るように見始めた
「運転手さん、あのコンビニの前、止めて、すぐ」
「え?あ…はい」
警部はカメラを操作すると、コンビニ前の1台の黒い巨大ロボ
そして、その足元にいる男へとズームする
「間違いない…ホシだ…」
その横顔は警部になっていた
「運転手さん、あの男、追ってる奴なんだ」
見るとホシの男は黒いロボに乗り込み、目の前を走り去った
「追ってくれ!気づかれないよう、ある程度、間をあけて」
「はい…!」
随伴機を待機させ、新たな代行が始まった
「夜中は厳しいな…歩く音で、こっちがバレバレかもしれん」
警部は街に響く音を気にしだす
「まかせてください…」
俺は巨大ロボ特有の「ズシン」という着地音を
膝関節の制御で消して見せた
「…なんと、忍び足だ」
「家に着くとき、家族バレしたくない人が『静かに帰れ』ってうるさいんですよ」
ホシの黒いロボを引き続き追うが、住宅街から寂しい林道へ
街灯も点々、すると向こうがピタッと止まった
「運転手さん…気づかれたかな…?」
「…灯り、消します」
俺はヘッドライトはもちろん
コクピット内の表示も全て落とし周りを闇に変える
「運転手さん、コクピットの中まではいいよ!」
「大丈夫です」
俺はコクピットを開ける
「肉眼で影の形を読んで歩きます」
「…これも代行のテクニック?」
「はい…夜逃げの代行とかも…ありまして」
ホシの黒いロボは闇に紛れるように道を逸れ林の中へ
俺は木々の下に巨体を潜り込ませて追った
すると、材木会社の倉庫が見え始めると
ホシはそこへと入り、ロボを降りた
「よしっ…! ありがとう運転手さん、ここまで来れば大丈夫」
警部はスマホでどこかに連絡を入れて、10分
闇の中からワラワラと警察のロボが沸いてきた
そこからはあっという間
倉庫で激しい火花が2、3度でホシは御用となった
さて、翌週
俺は警察署の表彰式に呼ばれた
壇上には、あの時から更に威厳を増した警部さん
そして直々に感謝状を貰うと
耳元でボソリ
「ホシを追う前なんだけど、コクピットを開けたじゃない?」
「えぇ」
「スピーカーオンにしたじゃない」
「はい、歌ったりもしましたね」
「あれ、始末書になりそうで…」
「それは…代行できませんよ」
「やっぱり?」
読んで頂き、ありがとうございます!
ちょっとしたエピローグを1話、この後にありますので是非読んでください!
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