第5話 高級巨大ロボで仙台へ旅行する
「仙台…思ったより都会だな…」
「それ、初めて仙台に行く奴、全員言うな…」
そんな会話が事のはじまり
「じゃあ、次の連休に行こうぜ」
「なら、高級スラスター機、借りようぜ!」
「ノリ」と「勢い」で全部決めがちの二人
タダシとケンは同期の29歳
中小企業のサラリーマン
貯金はほとんどございません
さあ連休となりまして、まずはレンタル会社へ
そこには全高15メートル
シンプルな流線形
年収×3はする
そんな高級機が威風堂々と二人をお出迎え
「こちらの機体はですね、ホバーにより地面を滑るように――」
店員の言葉なんか聞いちゃいません
二人はただ、うっとり
顔の肌ツヤも十代に戻っております
さて、いざ乗り込もう!
なんていう段になってタダシが言い出す
「……ケン、運転、やる?」
「いやいや、スラスター機を借りようって言い出したのタダシだろ?」
「……その、高級機だろ?見本を見せてほしいな…なんてな…」
仕事の時も石橋叩く奴だけど、こんな時も?
「わかった、わかった、まぁ見てろ」
ちょっと呆れたケンが運転席へ
システムオン
起動音がやさしく鳴ると
全天周囲モニターがぱっと点き
高級機でございます!と言わんばかりの
文字やラインがスッと出る
背筋と顔を縦に伸ばし
はしゃぐ二人に…
「左右!どっちから出るんですか!」
足元で痺れを切らした店員の声
ケン、慌てて発進も、スッとぬるりと路上に
「おー」
「おおっ」
「お!」
と、しばらくの間二人は「お」しか言えない人間に
やがて高速の入り口が近づく頃
「さすがケン…我が社の切り込み隊長だな」
こなれてきたケンの運転にタダシが感心すると
「一応ね、動画で勉強してきたのよ」
「スラスター機専用レーンの入り口も?」
「もちろん」
「ホバー走行のみの専用道路、とうとうだな…」
そんな二人を待ち構える巨大な入り口
優越感という名のETCゲートです
ETC
ETC?
ETC!!
「カード!」慌てるケン
しかしタダシはピンチに強い
無言で財布を開き、すっとETCカードを差し込み
なんとかギリギリ通過
「良かった……」
「正直忘れてた」
ちょい波乱の幕開けでしたが
やっと旅行スタートな気分
コクピットから見える15メートルの景色も
高速だと更に遠くまで見える
これだけでも来てよかった二人
そして、ここで気づいた
「静かすぎない?」
「俺も思った」
高速を走るスラスター機
とても静か
歩行型のドスンドスンがない
ケンがポテトチップスを食べ始めて
「ほら」
「ホントだ…食ってる音の方がうるさい、静かに食べて」
さて、運転交代、サービスエリアに寄ります
高級機専用ハンガーへ停めると隣も高級機
二人、急に声が大きくなり
「俺たちも、こっち側なのね」
なんて意気揚々と飲み物を買って戻ると
隣の機体に乗り込むのが
どう見ても年下、彼女持ち
ナンバープレートは「わ」じゃない
一気に鎮火となり、再び高速へ…
「あれはあれで良いよな」
タダシは隣のレーンを走る一般機を見てポツリ
「こっち側走って分かったんだけど…
一般機って走る振動でさ、自分が走ってる感覚になるよね」
「あー確かに」
「高速だと、巨大な自分が長い道のりを走り続けられる」
「スラスター機は静かすぎて、つまらん時あるな」
「なんか、こっから見ないと分からない良さってあるな」
外から見る
視点を変える
新たな気づきから
お互い、どう見えてるの?
なんて話に…
褒めて
指摘して
照れて
少し憤慨して
笑って
沈黙
「そうだ…来年くらいに転職しようかと思うんだけど」
ケンが寂しそうに言うと
「え?俺もなんだけど…」
「考える事、似てんなぁ」
仲が良くても、初めて知ることもあり
そして、似たようなところもあり
再び沈黙
景色は山から住宅地へ
タダシがぽつりと言う
「こう、人生って高速道路みたいだよな
分かれたり、合流したり、他人との機体性能を感じたり」
「……なにそれ? 旅情?」
「うるさい、そうだよ」
「なんか、旅行っぽいねぇ」
「旅行っぽいねぇ」
やがて住宅地はビルになりケンが一言
「ほら、仙台市内に入ったよ」
「仙台って思ったより都会なんだな…」
「それ、初めて仙台に行く奴、全員言うな…」
読んで頂き、ありがとうございます!
次のエピソードは、巨大ロボが「怪異」に巻き込まれる話です。
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