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5話:甘い毒と偽りの優越感

「見てくださいませ、殿下! このドレスの輝き……! アイリス様が渋っていた予算を、私に回してくださったおかげですわ」


リルムが鏡の前で、カイルの仕掛けた高値のドレスを纏って舞っている。

エドワード殿下は満足げに鼻を鳴らし、私の差し出した新たな書類にペンを走らせた。


「ふん、アイリス。ようやく自分に回るはずだった予算を、リルムに献上する気になったか。殊勝な心がけだ」


「はい。殿下がそれほどお望みでしたら、私の個人的な管理下に置いている資金も、すべて殿下の自由にお使いいただけるよう手続きいたしましたわ。……これまで面倒な口出しをして、申し訳ありませんでした」


私は殊更に弱々しく微笑み、書類の要点を口頭で告げた。


「これは、公爵家からの支援を一時的に『殿下個人への預かり金』とする確認書です。これにより、面倒な会計監査を通さず、殿下の判一つで宝石でも何でもお買い求めいただけますわ」


「ほう、それは便利だ。いちいちうるさい文官を通さなくて済むのだな?」


「ええ。私が殿下を信頼しているからこその特例ですわ。……たとえ今後、私たちの関係にどのような変化があろうとも、私は殿下にこれまでの支援を返せなどと無粋なことは申しませんから。どうぞ、安心してお使いになって」


「ははは! お前もようやく、女としての可愛げが出てきたじゃないか。やはりお前には、俺という主人が必要なのだな」


エドワードは高笑いし、ろくに内容も読まずに署名した。


〈ええ、私は『返せ』とは言いませんわ。……ですが、私から債権を買い取った『第三者』が、契約に則って機械的に取り立てを行うことまでは、私の関知するところではありませんもの〉


エドワードの頭の中では、「アイリスは俺に捨てられたくないから、必死に金を貢いで機嫌を取っている。婚約破棄した後も、彼女は泣き寝入りするだけだ」という身勝手な方程式が完成していた。

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