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10話:破産手続き完了

王家の破産手続きは、滞りなく執行された。

エドワードとリルムの二人は、アイリスが用意した「更生プログラム」の名のもとに、人手不足が深刻な北部の開拓地へと送られた。そこは華やかな夜会も、贅沢な絹も、甘い言葉もない場所だ。


「殿下ぁ、泥で爪が割れてしまいましたわ! こんなの、私の生活ではありませんことよ!」


「うるさい、黙れリルム! お前が次から次へと宝石を欲しがらなければ、アイリスもここまで冷酷にはならなかったはずだ!」


かつての「真実の愛」は、空腹と労働の前に脆くも崩れ去り、二人は互いを罵り合いながら、一生をかけて浪費した負債を泥にまみれて返していくことになる。

一方、王城では静かな代替わりが行われていた。

病床の国王と、現実を直視できなかった王妃は、支払いきれない負債の責任を取る形で退位。公爵家が管理する人里離れた修道院へと移送された。彼らに与えられるのは、これまでの放蕩を悔い改めるにふさわしい、最低限の食事と祈りの時間だけだ。


「……さて。これでようやく、案件完了クローズですわね」


代わりに実務能力に長けた第二王子が即位し、王家はアイリスが策定した「国家再建計画」に従って歩み始めた。

公爵邸の私室で、未練なく荷物をまとめる私に、カイルが再び手を差し伸べた。


「素晴らしい手際だった、アイリス。君が引いた境界線の外側には、もう未練はないようだね」


カイルの問いに、私は窓の外を眺めながら小さく肩をすくめた。


〈ええ。不良債権を切り離し、優良な資産(弟王子と実直な貴族たち)を保護した。管財人としての私の仕事は、一分いちぶの隙もなく完了しましたわ〉


「約束通り、私の国へ来てくれるかな? 君にしか任せられない『新しい法』の整備……そして、私の隣に座る権利を用意して待っている」


「ええ。ですが、カイル様。私の顧問料は、この国一国を買うよりも高くつきますわよ?」


「望むところだ。君という唯一無二の価値に、私が支払えない代価などない」


二人の笑い声と共に、公爵家の紋章が刻まれた馬車は国境へと走り出した。

前世の弁護士としての記憶と、今世の公爵令嬢としての知略。それらを武器に、彼女は新たな国で「法の女神」として、その名を永遠に歴史に刻んでいくことになる。

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