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あまねく光、なぎの底  作者: カレンナカレン
碧色の残像

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5/10

1−2

「ひーちゃん、このあとどうする?ご飯でも一緒に食べる?」


私たち新入生は、今日も簡単なガイダンスだけで授業はない。りっちゃんは私にそう問いかけるも、りっちゃんの周りにはすでに人が集まってきていた。「律くん、一緒にご飯行こうよ」とさりげなくボディタッチをしながら話しかける女の子もいる。私は無駄な争いはしたくないのでご飯は断ることにしよう・・。


「いや、私はいいや。」

「そう?じゃ、ひーちゃん、また連絡する。」


りっちゃんは私に小さく手を振って教室をでていく。私はなんとなくご飯を食べる気にもなれず、昨日の凪先輩と出会った桜の木の下まで行くことにした。




昨日と同じ、大きな桜の木の下。

昨日より少し風が強くて、風が吹くたび、足元にはピンク色の絨毯が広がっていく。


期待と諦めが半分ずつ。でもそこには昨日と同じように、凪先輩がいた。


今日は本を閉じて、どこからかやってきた黒猫を撫でながら優しい顔をしていた。

私は声をかけるのも忘れて、凪先輩から目が離せずにいた。すると、凪先輩がゆっくり私の方に顔を向けた。


「月浪の知り合いだっけ」


凪先輩は低く落ち着く声で私に尋ねると、すぐに猫に視線を戻した。


「はい、幼馴染で…」

私は緊張してうまく言葉が出てこない。

「立ってるのもなんだし、座ったら」


凪先輩が少し横にずれてくれたので、私は「はい…」と蚊の鳴くような声で答えて、横に座った。


ひらひらと舞い落ちる花びらと、風の音だけの静かな空間。

私の鼓動が響かないか心配だ。


「あの…な…深海さんは、よくここにくるんですか?」

私は緊張しているのが悟られないよう、平静を装いながら話しかけた。いきなり凪先輩って言ったら気持ち悪い!?と咄嗟に思い深見さんに変えた。


「うん、この猫に懐かれたから。あと、落ち着いてて好きなんだ。」


優しい声で、猫を撫でながら答える。私はそんな凪先輩をずっと見ていたいと思った。


突然風が強くなり、桜の花びらが一気に落ちてきた。私は頭の上の花びらを必死に払っていると、凪先輩が私の頭に触れた。まるで時が止まったように私の体は硬直していた。頬だけ赤く染まって。


「花びらまだついてる。」

「あ…りだとうございます」


再び沈黙になるかと思いきや、凪先輩が口を開いた。


「そういや名前、なんだっけ」

「天野ひまりです!」


私は少し食い気味で答えてしまい、少し後悔していたけど、凪先輩は「声でか」と少し笑いながら言った。


「学部は?俺は理工学部」

「私は経営学部です…!」

「経営学か…あんまり教えてあげれることなさそう…共通科目あったかな…」


凪先輩は授業の内容を見ながらそうつぶやく。私は凪先輩が意外にも話しやすい人だということに驚いていた。私は今しかないと思い連絡先を聞くことにした。


「深海さん、よかったら連絡先教えてもらえますか?」


断られたらどうしよう…と思うも、今しか私にはチャンスがない!お願い、神様!!


私が必死に神頼みしていたが、凪先輩はあっさり「いいよ」といいスマホのQRコードを私に見せてくれた。


「また授業のこととか聞いてもいいですか?実は深海さんが主席って聞いて…」


正直授業はどうでもよかったが、今の私には凪先輩との繋がりは同じ大学なことぐらいだ。


「もちろん、いいよ。」

「ありがとうございます。」

私は少し凪先輩との距離が縮められたような気がしてうれしかった。

私はスマホの中の凪先輩の連絡先をしばらく見つめていた。


そんなとき、後ろからまた馴染みのある声が聞こえた。


「深海とひまり、何してんの?」


昨日と同じく、蓮くんだった。


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