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静寂の中、私の心臓がやけに五月蠅い。
「あのっ・・」
わたしが彼に返事しようとしたときだった。
「ひまり!こんなところで何してるの?」
幼馴染で大学3年になったばかりの蓮くんが私の腕を掴みながら声をかけてきた。
「ちょっと、騒がしい雰囲気に疲れちゃって・・」
私は蓮くんに見向きもせず答える。私は目の前の瞳から目が離せなかった。
先に視線を外したのは碧い瞳の彼だった。
「深海、ひまりにちょっかい出したりしてないよね?」
蓮くんが私の腕を握ったまま、彼に問いかける。
「出してない。ただ目が合ったから尋ねただけ」
彼はそれだけ言うと、また本に視線を戻した。
「深海、このこは俺の幼馴染で今年から開明大学の1年生になった天野ひまり。俺たちの後輩になるから優しくしてあげてね」
「天野ひまりです、よろしくお願いします!」
蓮くんが彼と知り合いだったことに感謝をして、わたしは自己紹介をする。
彼はゆっくり私のほうに視線を向け、口を開いた。
「深海凪です、よろしく」
わたしはもう一度目が合い、心臓がはち切れそうになるのを抑えるのに必死になりながらも、小さく会釈する。もう1回凪先輩を見てみると、再び本を読んでいた。凪先輩は一匹狼のようなオーラを纏いながらも、桜と木漏れ日が作り出す穏やかな時間にも溶け込んでいて、ずっと見ていたい雰囲気だった。そんな私の想いを知らない蓮くんは、「じゃ、ひまり行こうか。」と私に優しく微笑んだ。
「深海、俺ら行くね。また授業で。」
凪先輩は小さく「うん」とだけ答えた。私は凪先輩から目が離せずにいたが、蓮くんが「ほら、行くよ」と手を引いたので離れざるをえなかった。




