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あまねく光、なぎの底  作者: カレンナカレン
深海の図書館

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12/13

2−3

胸の奥が、熱い。


初めて名前を呼ばれたこと、図書館の奥で陽の光が当たりながら本を読む凪先輩の姿…

脳裏に焼き付いてる。


嘘をついてまで、来てよかった。


そんな幸福感に浸りながら、人気のない旧館の廊下を足早に歩いていた、その時だった。


「ずいぶんと楽しそうな顔してんじゃん、ひまりちゃん?」

階段の踊り場、手すりに背を預けていた人影が、私の行く手を塞ぐように動いた。

 

「……朝霧くん」

 そこにいたのは、一年の朝霧結弦(アサギリユヅル)だった。

昨日会ったときと全く同じ場所。


「結弦で良いよ。2限が終わってから姿を消したと思ったら、図書館にいたんだ? 今日ランチ誘おうかなとおもってたのに」

凪先輩や蓮くんとは違う、綺麗な顔で笑いながらそういう彼に、好きとは違うが少しどきっとした。


「図書館で勉強? 勉強だけにしては、凄く楽しそうに見えるけど」

結弦くんが意地の悪い笑みを浮かべて、一歩、私に近づいてくる。

逃げようとした私を壁に手をついて逃さないようにする。

幼なじみ2人で美男子耐性はできていたはずだけど、さすがにこの美男子に、少女漫画展開をされると私も少し頬を赤らめた。


「……別に、誰とも。一人で勉強してただけだよ」

咄嗟に横を向きながら私がそう答えると、結弦くんは「ふーん」といい視線が、私が今出てきたばかりの図書室の扉へと向けられる。

すぐに私へと視線を戻し、ぱっと壁から離れる。

私は一度深呼吸をして、凪先輩と別れてからの胸の鼓動を落ち着かせようとした。


私が落ち着く間もなく、結弦くんはすぐに話しかけてきた。

「俺ひまりちゃんと仲良くなりたいな」

「え?」


私の驚く声に、結弦くんは面白そうに目を細めながら耳元まで顔を近づけ、「なんか気になるんだよね」と囁く。 

くすぐったいような、恥ずかしいような、何とも言えない感情で私は耳まで真っ赤になっていた。


結弦くんは「少しからかいすぎたかなぁ」と笑いながら私から離れた。


「もう何よ」

私が怒った顔をすると、「ごめんごめん」と悪びれなく言う結弦くん。そういうとスマホを取り出し、何かを確認する。


「ひまりちゃん、15時から1年全体の集まりあるから行こうか」


凪先輩との図書館での待ち合わせですっかりわすれていた。時計は14時45分を示していた。


「時間、結構ギリギリじゃない?」

ここは旧館なので、本館のさらに先の講堂まではかなり距離があった。私は少し焦っているが、結弦くんは

「まぁ大丈夫でしょ」と余裕の返答をした。


結弦くんは特に急ぐ気もなく歩き始める。

私は結弦くんの後をついていくように講堂へ向かった。


「旧館って結構広いよね、あと出口が少ない」

と結弦くんは話すも迷う様子なく進んでいく。




5分ほど歩いて、ようやく旧館を出た矢先、 そこに立っていたのは、肩で息をし、冷や汗を流しながら私を見つめる——蓮くんだった。

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