1/10
0
春の陽光がすべてを祝福するように降り注ぐ大学の入学式、私は、自分に向けられる好意に息苦しさを感じていた。
「君、新入生??よかったら連絡先教えてよ」
「うちのサークルには君みたいなこが必要なんだ!」
向けられる言葉はどれも私に好意的だった。けれども、私の心は踊らず居場所も見つけられないまま、人混みを逃れて桜の木の下へと辿り着いた。
そこで、あなたを見つけた。
喧騒から切り離された静寂のなか、古びたベンチに腰を下ろして一冊の本を開いている人。
ひらりと、桜の花びらが、その白く長い指先に落ちる。
桜の花びらが舞い落ちる中、私はあなたの深い海の底のような目から目が離せなかった。
入り込む隙間なんてないくらい、深い深い碧ーーーーー
ふと、その瞳が本から離れ、まっすぐに私を捉えた。
「・・・何か用?」
低くて優しい声。
その瞬間、私のなかにあったなにかが弾けた。
あまねく光が届かない、その深い海の底にーーーー
私は今恋をした。




