第3話「指輪に宿る魔力!俺だけのゴーレム作成の夜明け」
夢のカスタマイズ、始動!
ゴレトルの模擬戦見学から一夜明け、タクトの胸はまだ熱く燃えていた。クローナから借りた『ティナリス先生のゴレトル基礎知識』を読み込み、超高速戦への情熱が止まらない。
(ていうかこの本は凄いな、まるでゲームの攻略本みたいに分かりやすいし、挿絵も魔法で動くから見てて全然飽きない!)
そんな興奮冷めやらぬ中、ゴレトル学園の授業はついにゴーレム作成へ突入する。
「本日は、皆さんのパートナーとなるゴーレムの作成を行います。」
先生の言葉に、教室がざわめく。タクトの心臓はドクンと跳ねた。
「ゴーレムはこの世界の『争いの代理人』。皆さんの指輪に魔力を込めることで、ゴーレムの収納、換装、修復、戦闘中の命令を制御します。」
先生が掲げた指輪が、青い魔力光でキラリと輝く。それはただの装飾ではなく、魔法発動体そのものだ。 続けて、先生が重要な説明を始める。
「ゴーレムの作成には、専用の術式を刻んだ魔法陣を使用します。これにより、素体に魔術刻印を施し、ゴーレムを形作るのです。ただし、授業では基礎的な素材と刻印に限られます。上質な装甲や高度な改造を望むなら、鍛冶屋や刻印師に依頼する必要があります。彼らの技術は、ゴーレムの性能を飛躍的に高めますよ。」
タクトは目を輝かせる。鍛冶屋!刻印師!この世界のカスタマイズは、前世のロボットゲームを超える奥深さだ!
「ゴーレムの強さを決めるのは魔術刻印です。学生の魔力量では、1体のゴーレムに4~6個の刻印が一般的。ただし、刻印の数は多ければいいわけではありません。強力な刻印には高い魔力コストがかかり、指輪を通じて注げる魔力は限られています。例えば、【加速】を2つ刻むより、コストは重いが効果の高い【超加速】を選ぶ判断が重要です。」
魔術刻印の取捨選択。コスト管理。スキル間のシナジー。
「これだ……!」
タクトの脳裏に、前世のロボットゲームのカスタマイズ知識が閃く。何を犠牲にし、どの刻印に賭けるか——まさに俺のロマンそのものだ!
「タクトくん、どうしたの?急に目がギラギラしてるよ?」
隣のクローナが、狼の耳をピクピクさせながら心配そうに覗き込む。彼女のふんわりした声に、タクトはニヤリと笑う。
「クローナ、この魔術刻印のルール、めっちゃ燃えるんだ!限られた枠で最高の機体を作るなんて、まるで俺が愛したカスタム系のロボゲーそのものだ!」
クローナの瞳がキラリと光り、嬉しそうに耳が揺れる。
「ふふ、燃えてるねタクトくん!」
授業は実践へ。まず、ゴーレムの「素体」を選ぶ。タクトは迷わずシンプルな人型ゴーレムを選択。無駄のないフォルムは、自分のイメージを最大限に反映できるキャンバスだ。
そして、いよいよ魔術刻印の選択と付与。魔法陣の上で指輪を掲げ、魔力を込める瞬間、教室に魔力光が瞬く。
「俺のロマンは、ピーキーな超高速機動戦!」
模擬戦で見た【ロックドック】の速度に心を奪われたタクトだが、目指すのはそれを凌駕するスピードと一撃離脱の戦術だ。しかし、学生の魔力量では【超高速】のコストが重すぎる。リソースを食い潰してしまう。
そこで、タクトはひらめく。【ガッチゴン】が使った【軟化】の反動利用戦術をヒントに、別のアプローチを思いついた。
「【爆風】の反動をジェットブースターとして使う!前世のロボットの機動をイメージすれば、魔法制御はなんとかなるはず!装甲は極限まで削って、さらに機動力を極める!」
選んだ刻印は以下の4つ
【光刃】:刃を生む光魔法。射出可能だが威力は控えめ。
【熱閃】:直線的な高出力熱線。チャージで破壊力が増す。
【追尾光弾】:低威力だが目眩ましや索敵に有効な追尾弾。
【爆風】:強力な衝撃を放つ風魔法。反動を機動力に変換。
武装は、【熱閃】と【光刃】の発動を補助する鋼の杖槍のみ。防御力を捨て、機動に全てを賭けたピーキーな設計。一歩間違えれば自滅する、まさにタクトのロマンそのものだ。
魔法陣の上で刻印が光り、ゴーレムが完成。タクトは相棒に名前を刻む——ロボ型ゴーレム【アブソルトレイル】。
「よし、これで俺の相棒ができた!クローナ、俺はこの世界で最強のゴレトルプレイヤーになる!」
「タクトくんのゴーレム、とってもかっこいいよ!私も負けない!私もゴーレムと一緒に、絶対強くなるから!」
クローナの笑顔が、陽だまりのように温かい。
「クローナの相棒はどんな機体?」
クローナは、照れくさそうに耳をピクピクさせながら答える。
「うん!私の相棒は人狼型ゴーレム【ゲイルハルト】!魔術刻印は【頑丈】【剛力】【自動回復】【狂化】。硬くて力持ちで、タクトくんのゴーレムを守れるよ!」
なるほど、【狂化】は制御が難しいが全能力を強化。被弾リスクを【頑丈】と【自動回復】でカバーする、バランスの取れた設計だ。タクトは感嘆する。
「すごいゴーレムだ!クローナ、俺とチーム組もう。一緒に頂点を目指そうぜ!」
おでこが触れ合う距離で、タクトはクローナの手を強く握る。クローナは顔を真っ赤にして、もじもじしながら「う、うん……!」と答えた。
(しまった、ちょっと熱くなりすぎたか……?キモくなかったよな?)
タクトは内心で焦るが、クローナの瞳はキラキラと輝いている。 二人の熱い握手が、異世界でのゴレトルライフの幕開けを告げた。