第2話「迫力の鋼鉄闘域!熱狂のゴレトル戦闘見学」
学園の熱気!これぞゴレトル!
クローナから借りた『ゴレトル基礎知識』を読み漁り、タクトの胸はゴーレムバトルへの情熱で燃えていた。学園のカリキュラムとして、早速ゴレトル模擬戦の見学が組まれた。
「タクトくん、今日は上級生のバトル見学だよ!本物の鋼鉄闘域を体感するのが、ゴレトルを学ぶ一番の近道だから!」
クローナの声はすでに弾んでいる。ふわふわの狼の耳がピクピク揺れ、キラキラした瞳が闘技場を映す。タクトもまた、心臓がドクドクと高鳴っていた。ゲーム画面越しではない、魔法と機械が火花を散らす本物の戦場——それが今、目の前に広がる!
学園の地下にある巨大な闘技場に足を踏み入れると、観客席は生徒たちの熱気で沸騰していた。鉄と魔力の匂いが漂い、リングの中央では二体のゴーレムが対峙している。
一体は犬人型ゴーレム【ロックドック】。流線型のフォルムに、鋭く光る目が知性を漂わせる。スキルは【感知】【鉄弾】【縮地】【高速】。
「バランス型の機体だね。【感知】で敵の動きを読んで、【縮地】と【高速】で間合いを支配しつつ、【鉄弾】で高火力を叩き込む。とっても洗練されてるセッティングだよ!」
クローナの解説は、まるで戦術書を暗唱するような滑らかさ。彼女の知識量に、タクトは舌を巻く。
対するはゴリラ型ゴーレム【ガッチゴン】。分厚い装甲と巨大な腕が、圧倒的なパワーを物語る。スキルは【超剛力】【剛力】【頑丈】【軟化】。
「あっちは重量級のパワー型。【剛力】と【超剛力】で規格外の破壊力、【頑丈】で鉄壁の耐久力。一撃必殺を狙うタイプね。【軟化】は……何かトリッキーな戦略がありそう!」
クローナの声に、期待と興奮が混じる。タクトは彼女の解説に引き込まれながら、リングを見つめた。審判のホイッスルが響き、バトルが火蓋を切る!
【ロックドック】が一瞬で動く。【高速】と【縮地】を発動し、まるで光の矢のように【ガッチゴン】の懐に飛び込む。
残像がリングに尾を引く!
「速いっ!これが魔法を組合せた時の機動力強化……!」
タクトの叫びに、観客席がどよめく。だが、【ガッチゴン】は動じない。鉄壁の装甲で攻撃を受け止め、巨大な腕を振り上げる。
ドゴォン!
リングに轟音が響き、土煙が舞い上がる。【ロックドック】は紙一重で回避し、観客席から歓声が沸く。
「【ロックドック】は間合いを取り直したよ。接近戦じゃ【ガッチゴン】の一撃に当たれば即終了だからね!」
クローナの解説に、タクトは頷きながら目を離せない。 【ロックドック】は距離を取り、銃杖から【鉄弾】を連射。鉄の弾丸が火花を散らし、【ガッチゴン】の装甲を叩く。
キン!キン!キン!
だが、【ガッチゴン】は微動だにしない。【頑丈】スキルが、圧倒的な耐久力を発揮している。
「効いてない!【ガッチゴン】の装甲が硬すぎる!」
クローナの声に焦りが滲む。このままでは魔力燃費の悪い【鉄弾】の魔力消費で【ロックドック】が先に息切れしてしまう。
その瞬間、【ガッチゴン】のパイロットが指輪に魔力を込める。ゴーレムのボディが白く輝き、装甲が柔らかく波打つ。
「【軟化】!あのスキルは……?」
クローナが息を呑む。直後、【ガッチゴン】が自らの胸を叩く。
ゴオォ!
咆哮と共に、軟化した装甲がバネのように弾け、内部に蓄積した衝撃を爆発的に放出!
バチコォン!
衝撃波がリングを揺らし、【ロックドック】が体勢を崩す。クローナが叫ぶ。
「【軟化】を防御じゃなくて攻撃に使うなんて!重量級の高耐久だからできる技だよ!」
その隙を逃さず、【ガッチゴン】が突進。
「【超剛力】発動!」
ゴリラパンチが【ロックドック】の頭部に直撃!
ガシャン!
【ロックドック】は大破し、リングに沈む。観客席は一瞬静まり返り、すぐに割れんばかりの歓声に包まれた。
「すげえ……!パワーと耐久で、速度と技術を圧倒した!でも、【ロックドック】の【縮地】と【高速】のコンボは、俺の超高速戦闘構想のヒントになった!」
タクトは興奮で身を乗り出し、拳を握りしめる。このカスタマイズの多様性、戦術の奥深さ——これこそ、俺がこの世界で追い求めていたものだ!クローナはタクトの興奮を見て、目を細めて笑う。
「タクトくん、顔真っ赤だよ!ふふ、ゴレトルってほんと楽しいね!」
彼女の笑顔は、いつもの優しさにあふれている。だが、その瞳の奥には、いつもと違う輝きがあった。 クローナの心は、まるで花火のように弾けていた。
(タクトくん、ゴレトルにこんなに熱くなれる男の子の友達なんて、初めてだよ……!)
これまで、彼女の周りでゴレトルに夢中になるのは女の子ばかりだった。男の子たちは流行のアクセサリーや恋バナに夢中で、クローナの情熱を「女の子って感じだね」と笑うだけ。
そんな中、タクトのゴレトルへの純粋な熱意は、彼女の心に新しい風を吹き込んだ。
(一緒にゴーレムの設計図を語ったり、戦術を考えるの、絶対楽しいよね!タクトくんとだったら、もっともっとゴレトルが好きになっちゃいそう!)
クローナは、狼の耳をピクピクさせながら、頬をほんのり赤らめる。タクトがゴレトルを愛する姿に、彼女の心は高揚していた。まるで、初めて「本当の仲間」を見つけたような、ドキドキする喜びだった。
「タクトくん、次は一緒にゴーレム作ろうね!私、すっごく楽しみ!」
彼女の声は、いつもより少し高く、弾むように響いた。 タクトはクローナの笑顔に頷き返す。前世のロボットゲームへの情熱を胸に、この鋼鉄闘域の世界で生きる決意を新たにした。