第14話「勝利の後に待つ、四年に一度のゴレリンピック!」
世界を目指す新たなロマン
学園ゴレトルトーナメントの決勝戦。タクトたちの勝利は、リングを熱狂の渦に叩き込んだ。
マリー王女の無敵の最強部隊を、タクトの自滅覚悟の特攻とチームの連携が打ち破った瞬間、観客席は歓声で沸き立った。 リングサイドに駆け寄るクローナ、ローニャ、ニクスに囲まれ、タクトは汗と笑顔で勝利の喜びを分かち合う。
「タクトくん、やったね!学園一だよ!」
クローナの狼の耳が大きく揺れ、涙目でタクトに抱きつく。
「タクトさんの機転が全てを覆しました!私たち、最強のチームです!」
ローニャは眼鏡をクイッと上げ、興奮でメモ帳を握りしめる。
「私の選択は正しかった……」
ニクスはクールな表情に小さな笑みを浮かべ、猫耳がわずかに動く。
その後、会場での表彰式。魔力光が瞬く壇上で、マリー王女がタクトに歩み寄る。負けた悔しさを滲ませつつ、清々しい笑顔で言う。
「素晴らしいロマンだったわ、タクト。次は私があなたを倒す番よ。」
そして、学園長が壇上に立ち、高らかに宣言する。
「タクト、クローナ、ローニャ、ニクスよ!ゴレトルトーナメント優勝、誠におめでとう!君たちの活躍は、ゴルディアス王国に新たな風を吹き込んだ!」
観客の拍手が響く中、学園長の声がさらに熱を帯びる。
「君たちには特別な権利が与えられる!四年に一度、世界中の国々が国家の威信をかけて戦う『ゴレリンピック』の王国代表候補となる権利だ!」
ゴレリンピック! タクトの心に、新たなロマンが炸裂する。ゾルディアーク帝国、バルト人民共和国、スティア連合国——これまで名前だけ耳にした強国から集う猛者たちと、鋼鉄闘域でロマンを賭けて戦う。国対抗の舞台は、タクトの夢の頂点だ。
「国対抗……これこそ、俺の究極のロマンだ!」
タクトはクローナ、ローニャ、ニクスと顔を見合わせ、拳を握る。
「タクトくんと一緒なら、どこまでも行けるよ!」
クローナの瞳が輝き、温かな笑顔が弾ける。
「世界中のカスタマイズ理論を学べるなんて、ワクワクします!」
ローニャの眼鏡が興奮で曇り、メモ帳に新たな計算式を走らせる。
「退屈する暇はなさそうですね、タクト。」
ニクスの猫耳がピクリと動き、クールな声に闘志が宿る。 現代日本から転生した少年タクトは、貞操逆転世界のゴレトル学園で最高の仲間を得た。
プロ、そして世界一へ——新たなロマンの道が、今、開かれた。
Side ルッコ
リング上の熱狂が冷めやらぬ中、観客席のルッコは唇を噛みしめる。その小さな胸はまだ激しく鼓動していた。
(タクト……本当に勝ったのね……)
正直、悔しい。「力こそ正義」と信じるルッコにとって、タクトの「ロマン」を打ち砕くのは自分だと信じている。だが、冷静な悪魔族の頭脳は試合を分析する。
(もし私がマリー王女の代わりに戦ったら……勝てた?)
頭の中でシミュレーションする。【クリムゾンヘイト】のスーサイドコンボ、【黒血呪縛】の速度殺し。だが、タクトの紙一髪の回避と、チームが作り出した「一瞬の隙」を突く機転は、彼女の想像を超えていた。
「無理よ……今の私じゃ、勝てない……」
ルッコはポツリと呟き、俯く。タクトのロマンは、彼女の力を超える緻密さと可能性を纏い、遠い場所へ駆け上がっていた。
視線を上げると、リング上で抱き合うタクトとクローナ、ローニャの賞賛、ニクスの静かな頷きが目に入る。
(楽しそうね……)
胸にチクリと刺さる感覚。タクトのロマンを「面白い」と感じ、初めて闘ったのは自分だった。彼の熱意に心を揺さぶられ、ゴレトルの話をしたくてたまらなかった。
なのに、今、タクトの隣にいるのはこの三人の少女たち。
クローナは無条件の愛情でタクトの無謀を支える「最高の理解者」。
ローニャは天才的な頭脳でロマンを戦術に昇華する「知の柱」。
ニクスはタクトの超高速戦に並ぶ「唯一無二の相棒」。
(バカで変態でロマンとか叫ぶタクトが、こんな優秀で可愛い子たちに囲まれて……)
ルッコの頬が熱くなる。嫉妬だと自覚し、慌ててささやかな胸元を庇うように手を当てる。あのスキャン事件以来、タクトとまともに顔を合わせられない。
(私なんて、スカートを落とされた女!全裸を晒した間抜けな女!としか思われてない!)
この屈辱と嫉妬を、タクトの注意を引く力に変えたい。ルッコの瞳に執念の炎が宿る。
「次はゴレリンピック……甘い仲間ごっこが通用すると思わないことね。」
立ち上がり、タクトチームから目を逸らす。
(嫉妬なんかじゃない!タクトのロマンが間違いだと証明したいだけ!そのために、もっと強くなって……その後で、あいつとゴレトルの話を……)
誰にも聞こえない誓いを胸に、ルッコはダンジョンへと歩み出す。タクトのロマンを打倒し、いつか彼と本音で向き合うために。




