第10話「学園最強への道!ゴレトルトーナメント予選」
四人チームの船出!クラスメイトとの激突
数々の依頼をこなし、EクラスからDクラスへトントン拍子で昇格したタクト、クローナ、ローニャ、ニクスのチーム。
ダンジョンでの実戦で磨かれた連携は、まるで一つの生き物のように息を合わせる。次の目標は、学園最大のイベント——「ゴレトルトーナメント」だ。
「みんな!いよいよトーナメントだ!このチームの船出だぜ!」
タクトの声が、リングに面した教室で響く。瞳はロマンに燃え、興奮が抑えきれない。
「うん!予選は同学年のチームだけど、油断できないよ。絶対勝ち上がろう!」
クローナの狼の耳がピクピク動き、気合の笑顔が弾ける。 ローニャが対戦表を広げる。メモにはクラスメイトのデータがびっしり。
「予選はトーナメント形式。注目はルッコさんのチームと、チュニさんのチームです。」
ルッコの【クリムゾンヘイト】は、タクトと引き分けた強敵。一撃必殺の破壊力が脅威だ。
チュニは、丸メガネにおさげ、銀のトンガリ帽子に「人類ゴーレム化計画!」と書かれたマントを翻す変人。だが、彼女の論者型ゴーレム【メシアコード】は、【魔力波汚染】で指令やスキルを妨害する搦め手の名手らしい。
(チュニ、教室でほとんど見ないよな……何でだろう?)
タクトは首を傾げるが、すぐに作戦に集中。
「オーダーはこうだ!初戦は俺とニクスで圧倒的スピードを押し付け、中盤でローニャの【砂塵】戦術で撹乱、最後はクローナの耐久で締める!」
初戦の相手は、バランス型のスタンダードなゴーレムチーム。タクトが叫ぶ。
「【爆風】ブースト発動!ニクス、行けるか!?」
「問題ない。ついてきて。」
ニクスの【アサルトフェリス】が猫の如く滑らかに動き、タクトの【アブソルトレイル】と連動。リングを疾走する二機は、まるで光と闇の双星。
「速い!速すぎるっす!」
相手ゴーレムは棒立ち状態。タクトの【光刃】とニクスの【鋭爪】が、精密な連携で装甲を剥がし、初戦は圧勝。観客席がどよめく中、チームは勢いに乗る。
準決勝の相手はチュニのチーム。彼女がリング中央でマントを翻し、叫ぶ。
「ひひひ!純粋なゴレトル愛を謳う君たちは、ギルドと王国の陰謀に踊る哀れな駒よ!見なさい、我が【メシアコード】を!土は森人族の聖域の奇跡の泉の泥!袋叩きにされたけど脱出してきたわ!装甲は土人族が『一なる元素』をエンチャントされた聖水を飲みながらで鍛えた鋼!お願いしたら微妙な顔されたけど!刻印の展着剤は天蓋の意思を宿す米麦!農家がそう言ってた!美味かったわ!この救いの波動であなた達の洗脳を解いてあげる!」
(凄くチームメイトが不本意そうな顔してるぞ……)
タクトは困惑するが、チュニの【メシアコード】が【魔力波汚染】を発動。
バチバチ!
指輪からの指令が乱れ、ゴーレムの動きが一瞬鈍る。
「くっ、これが【魔力波汚染】か!」
さらに、チュニの【砂塵】がリングを覆い、視界を奪う。
「作戦変更!ローニャ、【砂塵】で上書き!クローナ、防御!」
ローニャの【グラニテカノン】が強力な【砂塵】を放ち、チュニの砂塵を掻き消す。クローナの【ゲイルハルト】は、【頑丈】と【自動回復】で【メシアコード】の無差別な【爆風】【放電】を耐え抜く。
(チュニ、自分のチームまで巻き込んでるな……)
「戦術サポート、私の出番です!」
ローニャが【砂塵】に【石弾】【石砲】を混ぜ、不可視の弾幕でチュニチームを封じる。指令が復旧したタクトとニクスが超高速で突撃、【メシアコード】を仕留め、勝利を掴む!
決勝戦は、ルッコ率いるチームとの再戦だ。
「タクト!あの引き分けは私のゴレトル人生の汚点よ!絶対に忘れない!」
ルッコの紅い髪が逆立ち、悪魔族の耳がピンと立つ。
(良かった、スカート事件のこととかじゃなくて……)
タクトは内心安堵する。
「ロマンとかいう戯言は通用しない!新スキル【黒血呪縛】で、お前の速度を殺す!」
【クリムゾンヘイト】の周囲に、闇の魔力が渦巻く。 ルッコのチームメイトは個性的だ。
サティ(【ジャンピー】):兎人族なのに「にゃん!」と叫ぶ、フリフリ衣装のぶりっ子。「ルッコさま、勝ったらゴレチューブの再生数爆上げですぅ!」【鼓武】で味方の攻撃力を強化し、【光塵】【光弾】で撹乱。色物に見えて、支援の精度は抜群だ。
エル(【シルバースティンガー】):魚人族の不運ガール。「最新武装買ったら次の日半額セールだったの、許せない!」【高速】【飛行】で追撃し、ルッコの猛攻を補完。
クリム(【こむたん】):ゴレトルが苦手な癒し系男子。「こむたん、怪我しないでね。」【良匂】で味方の魔力回復を促進。地味だが、ルッコの魔力消費を支える隠れた功労者だ。
戦闘開始。ルッコが【契約】を発動するが、タクトは前回の教訓を活かし、【爆風】ブーストで射程外へ逃れる。サティの【鼓武】がルッコの攻撃力を強化し、【クリムゾンヘイト】が大鎌を振り上げる。
「【超剛力】【犠牲】発動!フルパワーで消し飛びなさい!」
タクトは冷静に回避し、リングを縦横無尽に疾走。だが、ルッコが新スキルを発動。
「【黒血呪縛】!」
ガシャン!
血のような闇の鎖が【アブソルトレイル】の足首を捉え、【クリムゾンヘイト】と繋ぐ。推進力が魔力に阻害され、超高速機動が封じられる!
「これであなたは私の手のひらの中よ!」
ルッコが鎖を操り、タクトを振り回す。鎖の範囲は彼女の破壊領域の最適距離。大鎌が唸る!
ドゴォン!ドゴォン!
【高速】で間一髪回避するが、直撃は時間の問題。
エルの【シルバースティンガー】が【飛行】で追撃し、サティの【光塵】【光弾】が視界を妨害。クリムの【こむたん】が【良匂】でルッコの魔力を回復し、【黒血呪縛】の持続力を高める。
「タクトさんの機動が封じられた!鎖の魔力濃度が高すぎて切断は危険!」
ローニャが叫ぶ。
「クリム、応援して!ルッコに力を!」
サティのぶりっ子ポーズの間抜けさに反し、【鼓武】の強化がルッコの攻撃を鋭くする。クリムの【良匂】は地味だが、ルッコ達の魔力枯渇を防ぎ、戦況を支えている。
「ローニャ!鎖の魔力属性は!?」
「闇と土の複合!光と風に弱いです!」
「ニクス!鎖の接続点を狙え!そしてクローナ、俺に体当たりしてくれ!」
タクトが賭けに出る。ニクスの【アサルトフェリス】が【超高速】で鎖の接続部に突撃。だが、闇の魔力が逆流し、機体が軋む! その瞬間、クローナの【ゲイルハルト】が渾身の体当たり!
ドゴォン!
「タクトくん、いっけー!」
体当たりは鎖を切るためではない。体当たりの衝撃が魔力回路をショートさせ、クローナの魔力をタクトに流し込み、出力が一時的に増大!
ぶづんッ!
【アブソルトレイル】から光と風の魔力が迸り、鎖が白く発光。ルッコの魔力供給が一瞬途切れる!
「鎖が緩んだ!?」
ルッコが動揺する隙に、ニクスがハルバートで接続部を突く。
ジャキン!
鎖が断ち切られ、【アブソルトレイル】が解放!タクトは【爆風】ブーストを最大出力で発動、ルッコの巨鎌を躱し、【クリムゾンヘイト】に肉薄する。
「もらった!【光刃】最大出力!」
ガシャン!
【クリムゾンヘイト】が大破。
タクトチームの連携が、ルッコの新戦術を打ち破った!
「負けた……!バカみたいな高速戦術を封じたのに、なんで!?」
ルッコは呆然とリングに立ち尽くす。タクトは魔力を限界まで使い果たし、息を切らしながら歩み寄る。
「ルッコ。お前の【黒血呪縛】は俺の機動を完全に殺した。だが、俺のロマンは速度だけじゃない。仲間との連携も、俺のロマンだ!」
ルッコは言葉を失う。体は悔しさに震え、心臓は熱く高鳴る。
(クローナの体当たりで魔力が増大……ローニャが属性を瞬時に見抜き、ニクスが命がけで鎖に挑んだ……)
彼女は個の力と新刻印に頼った。だが、タクトはチームの絆で勝利した。
「くそっ、このひょろ雑魚男……絆とか甘っちょろいもので私の【クリムゾンヘイト】を……」
顔を背けるルッコの瞳には、タクトの輝く姿と仲間たちの絆が焼き付く。
(本当に悔しい……でも、あんなに熱く、仲間と輝く男、初めて見た……)
(ロマン、か。私も、誰かと一緒にゴレトルを追いかけたい……)
悔しさと憧れ、微かな恋心が混じる。ルッコはそっと呟く。
(次は……もっと素直に戦ってみようかな⋯。)
タクトチームから距離を取りながら、彼女の心は新たな決意で動き始めていた。




