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プロローグ

 さらさらと、森の中を小川が流れる。

 川辺の大きな石に腰掛ける、二つの影が並んでいた。


「ねえウィル、王都ってどんな所だった?」


 少し前に王都の城下町へ初めて訪れたという、年に数日ほど村へとやって来る幼馴染の少年に、少女は満月の如き金瞳を輝かせて訊ねる。


「街には武器とか服とか食べ物とか、色んな店があって、たっくさんの人達が買い物してたんだ!私も自分で選んで鍛冶屋でナイフを買ったよ!」


 「ほらこれ!」と自慢げに見せられたのは、革で出来た鞘に収められた、シンプルながらもしっかりとした作りのダガーナイフだった。


「おおー!…でも、“買い物”って?」

「んー、村だと物々交換で物をやり取りするだろ?それが大きな街だと、物の代わりに金属のコインで交換してもらうんだ」

「へぇー。こんな小さな金属で交換するんだ…。変わってるねー?」


 例として大小揃った形の硬貨を渡されて、しばし眺め、少女は幼馴染の少年の手に戻した。


「王都って知らない事がいっぱいだねぇ…。私も行ってみたい!」

「…来れるのか?魔法使いがこの森に居るのは、普通の人間に見つからない様にだろ?」

「……でも、行ってみたいんだもん」


 むっすりとした少女に、少年は苦笑して話題を変える。


「こっちは最近、変わった事あったか?」

「えーと、従姉妹のお姉さんの所で子供が産まれたよ!」

「そっか、おめでとう」


 思っていた答えでは無かったのか、少年は一度目を瞬いて祝いの言葉を口にした。


「うん、ありがとう!それから私、この前練習してた魔法が使える様になったんだ!」

「おおお!今できるなら見せてくれよ!」

「良いよー、それっ!」


 少女の掛け声と共に、ふわりふわりと幾つもの水球が浮かぶ。

 宙に浮かばせた最後のひとつは光球で。少女は「はい!」の一言を合図に全ての水球を割り、水飛沫に変えると、光に照らされた水飛沫のお陰で、小さな虹が出来た。


「うわぁ〜!!すごいな!また魔法精度上がったか?」

「うん、いっぱい練習したからね!」

「良いなぁ…魔法使えて。まあ、私はお前みたいに魔法使いじゃないから、仕方ないけれど」


 幻想的な景色に上げられた歓声の後、羨ましさを隠さず(こぼ)されて、少女は眉をハの字に下げる。


「ううん…私にはどうしようも出来ないなあ…。じゃあ、ウィルは私にこれからも王都とか、村の外の話をいっぱいしてよ!そしたら、ウィルの為に私が魔法を使ってあげる!」

「…そうだな。ありがとう、ライラ。よろしく頼むよ」


 そして幼い少年少女達は、一つの約束を交わしたのだった。

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