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俺は・・・慕われてる方ではなかった。
元々、人付き合いは得意ではなかった。
口下手だったし、自分のことを語るのは苦手だったからだ。それが災いしたのだろう。
世界の雰囲気と悪い意味でマッチしてしまったのだ。この世界は魔王と呼ばれる存在が居た。そして、その魔王は人々に恐怖や苦痛を与える存在として名を馳せていた。魔王は単独の存在ではなく、魔族を従えていたのとは別に心の弱い人間を利用してスパイ活動のようなことをさせていたらしい。そして、俺が人と関わらないことでスパイとして素性を隠してるからではないかと悪い噂が流れるのだった。
「ねぇ・・・あの人って」
「そうよ、隣の奥さんも言ってたじゃない」
妙齢の女性が3人集まってヒソヒソと俺のことを噂してる。
「・・・」
俺がじろと見ると、何か怖いものを見つけたみたいに逃げるのだった。
「行きましょう、関わらない方がいいわ」
そんな声が聞こえてきた。
「はぁ」
俺はため息を吐く。
別に言い訳するつもりはない。
スパイではないのだが、このまま疑われることに抵抗が無いというのが俺の考えだった。
この町の住民たちと関わって楽しいことが待ってるのかと言われれば正直分からない。
だったら別に無理して関わることも無いだろうと考えていたのだ。こちらから危害を加える気は無かったし、向こうも噂だけで俺に直接危害を加えようとか考えてるわけではなかったからだ。ある意味、平和と言える、この状況にそこまで不満が無かったのだ。しかし、この日はそうも言ってられなかった。ついに1人の男性がしびれを切らしたようだった。
「お前、魔族のスパイだろ」
「違うって言ったら信じるのか?」
「信じる訳ないだろ、人と関わろうとしないで、いっつも何してるか分からないお前に誰が信用するって言うんだ」
「それで、何が望みなんだ」
「出てけ・・・出てけよ!
皆、お前が居るから安心して眠れないんだ」
「止めて!」
そこに偶然通りかかったのか、
エナトリアがやってきた。
「エナトリア・・・君はこいつのことを庇うのか?」
「同じ人じゃない、どうして疑うの?」
「どうかな人の皮を被った魔族かも」
「そんなこと言わないで!」
エナトリアは言い返す。
俺は面倒だと思い、その場を離れる。
「反論してくれた君に礼を言うことも無く去っていったじゃないか、彼に義理立てする必要はあるのか?」
「それは」
「エナトリア、悪いことは言わない。
他の人ならばいい。でも、あいつと関わることだけは止めておけ。不幸になるぞ」
男はそう、アドバイスした。
「クルバス・・・」
エナトリアは俺の背中を見つめて言った。