卒業~雪解けて春へ~
「リナちゃ--先輩、卒業おめでとうございます」
「ありがとう。 く……ふふふ……わざわざ言い直さなくてもいいのに」
一歳年下の幼馴染みである春人が、神妙な顔で言ったのが何となく面白くて、ついついからかってしまう。
「……むぅ、せっかくちゃんと送り出そうと思ってたのに」
「ごめんって、そんな拗ねないでよ」
「--っ! ~~///」
頬を膨らませてむくれる春人が可愛くて、無意識に頭を撫でると、顔を赤くして飛び退かれてしまった。
「そんなに避けるなんて、お姉ちゃん悲しい! よよよ……」
「勝手に言ってて貰っていいですかぁ?」
「ひ ど く な い!?」
小さい時から一緒だったせいか、歳の近い弟みたいに思ってたんだよね。
「あ、そう言えば、結局冬木先輩に告白したの?」
「ん? あ~……あれね、やめた」
だから--
「え? なんで!? ずっと“好き”だって言ってたじゃん。 卒業したら離れ離れなんだし、ラストチャンスでしょ!」
「そうなんだけどね。 ……だからこそ、かな」
気になる人が出来たから協力してよ、とか--
「どういうこと?」
「冬木君への“好き”は、アイドルとかへの憧れとか、好きの代替みたいな感じだったって気付いたから」
付き合えた時のデート用に、服選ぶの付き合ってよ、とか--
春人の気持ちには、何となく気付いていたのに、今の居心地のいい関係を壊したくなくて、気付かないフリをして……
他の“好きな人”を作る事に、必死になっていた。
「……そう、なんだ」
「うん。 だから冬木君への告白はやめちゃったから、『告白の後でいいから時間くれ』って言ってた春人が全部時間使えるわけよ。 さぁ、どうぞ~」
それでも、春人との関係を壊したくないのは、今でも一緒。
「--え? いや、そんないきなり!?」
「ほらほら、時間無くなっちゃうよ~?」
でも、どうせ離れ離れになるなら、卒業式の今日くらい、自分の“好き”に素直になってみたいなって--
「うぅ……心の準備がまったく出来てないのに……」
「なんだ? 心の準備が必要な事を言おうとしてたのかね、春人クン?」
--そう思ったから。
「あぁもう! どうせバレてるんでしょ!?」
「--ナンノコトカナァ?」
自分からは、何となく恥ずかしくて言い出せないけど--
もし--
もしも--
春人も同じ気持ちでいてくれてるなら--
恋に恋をしてただけの、寒い“冬”を卒業して。
「リナちゃんの事が、ずっと--」
ずっと側にいてくれた、暖かい“春”を迎えたいな、って思う。