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グットボンドへ  作者: 魔界人EM
生活開始編(三章)
19/70

19話

 村に到着した後、向日葵たちはヴィラージュの家へと案内された。千代子たち3人は二度目の訪問だが、向日葵や功らは家の大きさに驚きを隠せない。

「うわぁ〜。大きい家だね。私の身長何個分だろう」

「向日葵ちっちゃいから、二十人分ぐらいじゃない?」

「功もそんなに変わらないでしょ!」

新たな場所でも、二人の会話の雰囲気は変わらない。撫子はその微笑ましさを見て、目を細めた。

 家の中に入ると、千代子たちがヴィラージュと対面した時と同じ部屋に案内された。部屋はとても広いが、総勢23名ともなると、一人当たりの空間も狭くなる。部屋に入って少しすると、先程よりもサイズを縮めたヴィラージュが奥から姿を現した。琉太たちは一斉に頭を頭を下げた。

「お主がリーダーの土佐琉太か?」

「はい。この度は私達の移住を提案してくださり、ありがとうございました」

「うむ」

ヴィラージュは千代子のときよりも重厚感のある声で琉太と話す。しかし次の瞬間、

「って硬いのは止めじゃ!面を上げい」

ヴィラージュの雰囲気が一気に緩んだ。琉太は意表を突かれ、思わずぽかんとしてしまった。

「琉太。お主らの移住、楽しみにしておったぞ。これからわしらは仲間じゃ。よろしく頼むぞ。じゃが、わしらも忙しくての。しばらくはテント暮らしを続けてもらうことになりそうじゃ。お主らの中には建設を始めとした、様々な技術者がいると聞いている。期待しておるぞ」

「はい!」

二人の話が一段落し、クライゼルが退出させようとしたその時、なんと悠玄が口を開いた。

「村長さん…。いちばん大事な『戦争』についてお聞かせ願いたい」

その声はいつもの低い声より更に低いものだった。ヴィラージュは顔を曇らせた。

「そうじゃな。なるべく話題にしたくなかったが、仕方あるまい」

「お願いします」

「わしらは理由あって村の総力をかけて戦争をしている。上からの命令で、相手はまだ言えぬ。じゃがお主らを戦争に駆り出す気は毛頭ない。だから安心せい。もし不安があるなら、村の奴らが護身術ぐらいなら教えてくれるじゃろう」

悠玄は満足したようで、ヴィラージュに一礼した後、コルチたちを引き連れて一番に退出した。

「まったく、何なんだあいつは」琉太が珍しく口調を乱暴にする。

「それだけ悠玄組のみんなが大切ってことかもね」千代子は呟いた。

 外に出ると、悠玄組の姿はなかった。どうやら琉太たちと仲良くやっていく気は全くないらしい。

「なんで派閥を作りたがるのか…俺には理解できない」

「ほら悠玄のことは忘れな!まずはどこにテントを立てるか決めるよ」

ヴィラージュの家の北側に少し小高くなっている場所があった。日当たりはそこまでだったが、琉太が村のスペースを無駄に使ってはいけないと判断を下した。

「いやーこれから寒くなるのに、この日当たりはきついね。さっさと森を切り開きたい」

「本当に切り開くなら、その木材ちょうだい!私家建ててみたいの」

アーロンと桜花は技術者の血が騒いで仕方がないようである。

 日が沈むまで少し時間があったので、琉太たちは各自村の探索に赴いた。解散に指示が出た瞬間、アーロンはエリーを誘い、南の海へとダッシュで向かった。一方、向日葵は幼馴染の3人を連れて、ヴィラージュの家の向かい側へと向かった。そこには、同じぐらいの大きさの建物があった。

「いやー、この四人が集まるの久しぶりじゃない!?」

「そうだね。隆之介や向日葵と一緒になることは多かったけど…撫子とは久しぶりかも」

「私も色々労働に駆り出されたからねー。久しぶりにダンスやりたい」

4人はわちゃわちゃと話しながら、謎の建物へと向かった。それはヴィラージュの家から200メートルほど先にあり、ヴィラージュの家と違い、門や塀がなかった。

「勝手に入っていいのかよ」龍之介が問う。

「まぁまぁ大丈夫でしょ。私に任せなって」向日葵が自信満々に返答する。

「信用できねぇ…」

向日葵たちは建物の西側に入口を見つけた。誰が扉を開けるのか論争になったが、ジャン負けで隆之介に決まった。

「俺こういうじゃんけんだけ負けるんだよな」

隆之介が恐る恐る扉を開けると…中にいたのは竹刀片手に稽古をするクライゼルだった。

「おや…あなた達は…」

「御影隆之介です。ほら、お前たちも名乗っとけ」

「そっ、そうだね。鷲見撫子です」

「水鳥川功です」

「えーと、花巻向日葵です」

向日葵の名前を聞いた途端、クライゼルの顔色が少し明るくなった。

「あなたが向日葵さんでしたか。偲さんから聞きましたよ、クラスの中で一番元気な人だって」

「良かったじゃねえか」

「それって褒めてる…?」

向日葵は納得いかないのか、不機嫌な表情を浮かべる。

「それにしても、立派な稽古場ですね」

「この先には和室、和室の先には弓道場があります。皆さんは何をされているんですか」

「俺は剣道を中心に、柔道や空手も勉強しています。向日葵と功は柔道やテコンドーなどの体術、撫子はダンスを得意としています」

「なるほど。稽古場は自由に使って構いませんので、じゃんじゃん腕を磨いてください」

向日葵は「ほんと!?」と呟き、喜びをあらわにした。

「この前は向日葵に負けちゃったからね。次は負けないよ」

「えー。功が私に勝てるかなー」

柔道やテコンドーの競技者としての血が騒ぎ出し、二人はすぐに手合わせを始める勢いだった。しかし、撫子が間に入り、二人の勢いは鎮まった。

 その後、クライゼルの案内で和室と弓道場を見学した後、向日葵たちは稽古場を後にした。辺りもすっかり暗くなり、夕食をとって、向日葵たちは就寝した。

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