19話
村に到着した後、向日葵たちはヴィラージュの家へと案内された。千代子たち3人は二度目の訪問だが、向日葵や功らは家の大きさに驚きを隠せない。
「うわぁ〜。大きい家だね。私の身長何個分だろう」
「向日葵ちっちゃいから、二十人分ぐらいじゃない?」
「功もそんなに変わらないでしょ!」
新たな場所でも、二人の会話の雰囲気は変わらない。撫子はその微笑ましさを見て、目を細めた。
家の中に入ると、千代子たちがヴィラージュと対面した時と同じ部屋に案内された。部屋はとても広いが、総勢23名ともなると、一人当たりの空間も狭くなる。部屋に入って少しすると、先程よりもサイズを縮めたヴィラージュが奥から姿を現した。琉太たちは一斉に頭を頭を下げた。
「お主がリーダーの土佐琉太か?」
「はい。この度は私達の移住を提案してくださり、ありがとうございました」
「うむ」
ヴィラージュは千代子のときよりも重厚感のある声で琉太と話す。しかし次の瞬間、
「って硬いのは止めじゃ!面を上げい」
ヴィラージュの雰囲気が一気に緩んだ。琉太は意表を突かれ、思わずぽかんとしてしまった。
「琉太。お主らの移住、楽しみにしておったぞ。これからわしらは仲間じゃ。よろしく頼むぞ。じゃが、わしらも忙しくての。しばらくはテント暮らしを続けてもらうことになりそうじゃ。お主らの中には建設を始めとした、様々な技術者がいると聞いている。期待しておるぞ」
「はい!」
二人の話が一段落し、クライゼルが退出させようとしたその時、なんと悠玄が口を開いた。
「村長さん…。いちばん大事な『戦争』についてお聞かせ願いたい」
その声はいつもの低い声より更に低いものだった。ヴィラージュは顔を曇らせた。
「そうじゃな。なるべく話題にしたくなかったが、仕方あるまい」
「お願いします」
「わしらは理由あって村の総力をかけて戦争をしている。上からの命令で、相手はまだ言えぬ。じゃがお主らを戦争に駆り出す気は毛頭ない。だから安心せい。もし不安があるなら、村の奴らが護身術ぐらいなら教えてくれるじゃろう」
悠玄は満足したようで、ヴィラージュに一礼した後、コルチたちを引き連れて一番に退出した。
「まったく、何なんだあいつは」琉太が珍しく口調を乱暴にする。
「それだけ悠玄組のみんなが大切ってことかもね」千代子は呟いた。
外に出ると、悠玄組の姿はなかった。どうやら琉太たちと仲良くやっていく気は全くないらしい。
「なんで派閥を作りたがるのか…俺には理解できない」
「ほら悠玄のことは忘れな!まずはどこにテントを立てるか決めるよ」
ヴィラージュの家の北側に少し小高くなっている場所があった。日当たりはそこまでだったが、琉太が村のスペースを無駄に使ってはいけないと判断を下した。
「いやーこれから寒くなるのに、この日当たりはきついね。さっさと森を切り開きたい」
「本当に切り開くなら、その木材ちょうだい!私家建ててみたいの」
アーロンと桜花は技術者の血が騒いで仕方がないようである。
日が沈むまで少し時間があったので、琉太たちは各自村の探索に赴いた。解散に指示が出た瞬間、アーロンはエリーを誘い、南の海へとダッシュで向かった。一方、向日葵は幼馴染の3人を連れて、ヴィラージュの家の向かい側へと向かった。そこには、同じぐらいの大きさの建物があった。
「いやー、この四人が集まるの久しぶりじゃない!?」
「そうだね。隆之介や向日葵と一緒になることは多かったけど…撫子とは久しぶりかも」
「私も色々労働に駆り出されたからねー。久しぶりにダンスやりたい」
4人はわちゃわちゃと話しながら、謎の建物へと向かった。それはヴィラージュの家から200メートルほど先にあり、ヴィラージュの家と違い、門や塀がなかった。
「勝手に入っていいのかよ」龍之介が問う。
「まぁまぁ大丈夫でしょ。私に任せなって」向日葵が自信満々に返答する。
「信用できねぇ…」
向日葵たちは建物の西側に入口を見つけた。誰が扉を開けるのか論争になったが、ジャン負けで隆之介に決まった。
「俺こういうじゃんけんだけ負けるんだよな」
隆之介が恐る恐る扉を開けると…中にいたのは竹刀片手に稽古をするクライゼルだった。
「おや…あなた達は…」
「御影隆之介です。ほら、お前たちも名乗っとけ」
「そっ、そうだね。鷲見撫子です」
「水鳥川功です」
「えーと、花巻向日葵です」
向日葵の名前を聞いた途端、クライゼルの顔色が少し明るくなった。
「あなたが向日葵さんでしたか。偲さんから聞きましたよ、クラスの中で一番元気な人だって」
「良かったじゃねえか」
「それって褒めてる…?」
向日葵は納得いかないのか、不機嫌な表情を浮かべる。
「それにしても、立派な稽古場ですね」
「この先には和室、和室の先には弓道場があります。皆さんは何をされているんですか」
「俺は剣道を中心に、柔道や空手も勉強しています。向日葵と功は柔道やテコンドーなどの体術、撫子はダンスを得意としています」
「なるほど。稽古場は自由に使って構いませんので、じゃんじゃん腕を磨いてください」
向日葵は「ほんと!?」と呟き、喜びをあらわにした。
「この前は向日葵に負けちゃったからね。次は負けないよ」
「えー。功が私に勝てるかなー」
柔道やテコンドーの競技者としての血が騒ぎ出し、二人はすぐに手合わせを始める勢いだった。しかし、撫子が間に入り、二人の勢いは鎮まった。
その後、クライゼルの案内で和室と弓道場を見学した後、向日葵たちは稽古場を後にした。辺りもすっかり暗くなり、夕食をとって、向日葵たちは就寝した。




