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グットボンドへ  作者: 魔界人EM
異世界編(二章)
13/70

13話

 翌日、一番に目を覚ましたのは、隆之介とエリーだった。二人はそれぞれのテントから、同時に顔をのぞかせ、互いに挨拶をした。そして、無言で食事をする。朝ご飯はもちろん栃の実だ。二人がそれぞれのタイミングで食事を終わらせると、隆之介が口を開いた。

「暇だな…」

「暇ですね…」

互いに顔を見合わせず、そっぽを向いて話す。

「一番最初に琉太が起きると思ってたが…お前が最初だったか」

「いえいえ、隆之介さんが先でしょう」

二人は、謎の譲り合いを見せる。

「隆之介さん…手合わせしましょうか」

「あぁ。その言葉を待っていたぜ」

ここで、二人は初めて互いに顔を見合わせる。その口角は、ニヤリと上がっていた。特にエリーは、昨日のほほえみとは違い、まるでこれからフェンシングの試合が始まるかのような、破格の笑顔を見せていた。

「おはよう。ってなんで二人とも剣を…」

準備体操をしていると、アーロンが顔をのぞかせた。

「ちょうどよかった。これからちょっとした決闘が始まるのよ」

「絶対ちょっとじゃないでしょ…」

いつもは、ハイテンションなアーロンをエリーが止めているが、今回ばかりは立場が逆だ。

「お前はどっちを応援するんだ?」

「うぇー。どっちにしようかな」

「どっちにするの!」

自分を応援してもらおうと、二人はアーロンに詰め寄る。アーロンは動揺しながらも、

「おぉ…。いつも二枚目なのにモテないアーロン様が、ここに来てモテるように…」

と独り言を漏らした。しかし、それは聞こえていたようで、二人はスッと元の位置に戻った。

「おはよー。二人とも何してるの?」

「おっ、向日葵ちゃんおはよ。今日もかわいいね」

「アローン黙って」

向日葵は眠そうに目をこすっている。

「隆之介と姉ちゃんが手合わせするんだって。向日葵ちゃんはどっち応援すんの?」

「えぇ〜。昨日隆之介に怒られてムカついたから、エリーちゃんかな」

「何だその理由!」

隆之介が鋭いツッコミを入れる。向日葵は幼馴染に対する失言が多いので、隆之介にとって、ツッコミは慣れてしまったものである。

「そろそろ始めましょうか」

エリーは右手にレイピア、隆之介は両手に木刀を構える。

「それじゃあ、始め!」

アーロンの合図とともに、両者が同時に踏み込む。5mほどあった距離は一瞬で縮まり、両者は剣を交えるかに思われた。なんと、隆之介との距離を縮めた瞬間、エリーはレイピアで鋭い突きを繰り出したのだ。初見殺しの一撃。しかし、隆之介はそれをサイドに躱す。

「何回お前とやってると思ってんだ!」

そのまま隆之介はレイピアの懐に入り、木刀の鍔を押し当て、鍔迫り合いに持ち込んだ。エリーはなんとか持ちこたえるも、力では隆之介に敵わない。徐々に体勢を崩していく。

「やべえ、姉ちゃんがピンチだ」

このまま勝負がつく。アーロンはそう思った。だが、エリーはここで、自身の身体とともにレイピアを大きく後ろに引いた。

「なにっ!」

体重をかけていた隆之介は、前に体勢を崩す。エリーはその隙にレイピアの鍔を使って、木刀を絡め獲った。隆之介は丸腰になり、エリーはその首元にレイピアをかざす。

「勝負ありですね」

「くっそ〜」

こうして、二人の手合わせはエリーの勝利で終わった。隆之介はエリーの手を取って起き上がると、

「驚いたぜ。まさかレイピアにあんな使い方があるなんてな」

と驚きを素直に口にした。

「ふふっ。お母様から教わったバリツの裏技です」

エリーは得意げな顔で言った。ちょうどその時、琉太と功がその場に現れた。琉太と功は急いで朝食を済ませ、出発の準備をする。向日葵たちもテントの片付けを始めた。

 数分後、2つのテントは綺麗にまとめられ、隆之介の背負うバッグにピッタリ収まった。琉太は方位磁針を使いつつ、山頂までの道を確認する。

「今日は山頂まで行くぞ」

「何が見えるか楽しみだね」

焚き火を消し、琉太を先頭に向日葵たちは歩き出す。そして、山頂で発見したものが、向日葵たちの運命を大きく狂わせることになるとは、向日葵たちはまだ知らなかった。


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