12話
キャンプをするにあたって、いちばん大切なのは薪である。琉太たちは、それぞれ3人ずつに分かれて、方位磁針を持って、薪の収集に向かった。向日葵は功、隆之介と共に、薪を集める。
「見て見て!」
向日葵は木と木の間を、チンパンジーのようにすり抜け、枝を伝って先へと進んでいく。
「あっ、待ってよ向日葵!」
功も負けじと、向日葵の後を追いかける。
「おーい、あんまり遠くに行くなよ」
隆之介も追いかけようとするが、高身長が仇となって頭が枝に引っかかったり、雑草に足を取られたりして、なかなか進めない。
「へへっ、いつも身長のことで馬鹿にしてくるから、そういうことになるんだよ!」
向日葵は調子が良さそうに、どんどん先へと進む。ある程度進んだところで、周りが開けている場所に出た。ここなら薪を拾えそうだ。向日葵はそう思い、木の根元を中心に、薪を探し始めた。
「いたいた。勝手に行くと危ないよ」
少し遅れて功が追いつく。向日葵は得意げな顔をして、
「功見てよ。私、もうこんなに薪集めたんだよ!」
と自慢をする。そんな向日葵に、功はニヤケ顔を返した。
「向日葵が先行ったもんだから、僕も途中で薪を集めたのさ」
よく見ると、功の手元やポケットには、向日葵以上の薪が集められていた。
「くっそ〜。負けた〜」
そんな煽り合いをしていると、草木をかき分け、ものすごい勢いで隆之介がやってきた。身体のあちこちに、葉っぱがついており、顔にはくもの巣がべっとりとついている。
「はぁ…はぁ…。やっと追いついたぞこの野郎」
「ゲッ、隆之介…」
二人は息を揃えてつぶやく。
「先に行くなって言ってんだろ。方位磁針も持ってないくせによぉ…」
隆之介は怒りが爆発しそうになったが、深呼吸で怒りを鎮めた。
「薪は集まったか?」
隆之介が問うと、二人は自信満々に、薪を見せつけた。
「こんだけありゃ足りるだろ。帰るぞ」
隆之介たちがキャンプに戻ると、すでに琉太がファイヤーピストンで、火を起こしていた。隆之介たちの姿を見た途端、エリーが駆け寄った。
「遅かったですね。心配しましたよ。なにかトラブルでもあったんです?」
「向日葵がチビな身体を生かして、先に行ったせいで、探すのに時間がかかったんだよ」
「あぁ!またチビって言った!」
隆之介は「事実だろ」と言い返す。向日葵はむしゃくしゃを抑えきれず、舌を出して煽った。
「まぁまぁ。ここで喧嘩したらだめだよ」
功が二人をなだめる。隆之介と向日葵が喧嘩するのはいつものことであり、その時は功か撫子が、喧嘩を鎮める。功にとって、喧嘩の鎮静は慣れたものだった。
日が落ちると、琉太たちは焚き火を囲んで、話し合いを始めた。三十分ほど経つと、話題は、山頂にたどり着いた後のことになった。
「ここから約3キロ。1時間も歩けば山頂だな」
「そういや、琉太って山頂に行ってなにするつもりなの」とアーロン。
「あぁ…そういえば行ってなかったな」
琉太は懐から双眼鏡を出した。
「山頂に着いたら、双眼鏡を使って、周りに何があるか探してみる。山頂の周りには、森林ぐらいしかないし、かなり遠くまで見えるだろう」
「なるほどね」
アーロンはうなずいた。しかし、その隣の隆之介は、あくびしてばっかで、話し合いに参加しない。
「悪い、俺もう寝るわ。明日も早く出発するだろうし。疲れを取りてぇ」
「早くない?もう少しお話しようよ」
向日葵の発言に対し、隆之介は血管をピキピキさせながら、
「誰のせいだと思ってんだ…」
と強い返事をした。琉太は笑いをこらえながら、
「隆之介の言う通りだ。今日は早めに寝るか」
と指示を出した。隆之介はバッグから、動物の革から作ったテントを取り出し、アーロンと功、琉太と共に組み立てる。
「私たちも準備しましょうか」
「え〜。まだ眠たくないよ」
向日葵は駄々をこねる。
「だめですよ。明日もたくさん歩きますから、早く寝ないと」
エリーは、あくまで冷静に向日葵をなだめる。
「…分かったよ」
向日葵は渋々、テントを取り出し、組み立てを始める。エリーはため息をつき、向日葵を手伝う。こうして、向日葵たちの夜は更けていった。




