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グットボンドへ  作者: 魔界人EM
異世界編(二章)
10/70

10話

その日の夜、琉太たちは焚き火の周りに腰を掛け、話し合いの準備をしていた。琉太は全員に情報が回るようにしたはずだった。しかし、何人か姿が見当たらない。

「また悠玄組は来ていないのか」

「アタイが悠玄に声をかけたんだけどねぇ」

悠玄組とは琉太に相反する者が集まった、ちょっとした不良グループである。学校にいたときから、琉太と千代子は頭を悩ませていた。

「琉太、始めるぞ」

琉太が頷くと、耕作は語りだす。

「わしは今朝、千代子と葉月と一緒に、近くの広場まで食べ物を探しに行ったんじゃ。そこでわしは奇妙なものを見た。ヒト型の猪じゃ」

「ヒト型のいのしし?」

向日葵が興味を示す。耕作は続ける。

「その猪は手に槍を持っていてな。わしは目があった瞬間叫び、猪はどこかへ行ってしまった」

耕作は深刻な雰囲気で話を進めた。だが次の瞬間、豪快に笑い出した。

「ガッハッハ!まあ一応みんなの耳に入れておこうと思っただけじゃ。そう心配せんでもええ」

そんな耕作の一部始終を、琉太は黙って聞いていた。

「ん?どうかしたかい琉太?」

隣の千代子が声を掛ける。琉太は表情を変えない。

「いや、俺に考えがあってな」

耕作の話が終わったのを確認すると、琉太が口を開く。

「みんな、俺に考えがある。少し前、一鉄たちが見つけた獣道があっただろ。俺は昨日その先まで行ったんだ。そうしたら…洞窟に繋がっていた」

「んで、その洞窟がどうしたっての?」

アーロンがツッコミをいれる。

「入口の看板が立てかけてあった。その看板にはかすれつつも文字が書いてあった。平仮名と漢字で『山頂へ』とな」

アーロンたちの間に衝撃が走る。唯一向日葵だけはぽかんとしていたが、琉太の話が本当であれば、向日葵たちのいる地方は地球で間違いない。何なら、日本かもしれない。そんな希望がアーロンたちの心に生まれた。

「俺は近い内に洞窟へ向かい、山頂を目指してみようと思う。誰かともに来てくれないか?」

琉太は少し緊張していた。普段は指示を出す側であり、腹を割ってお願いすることは初めてだったからだ。そんな状況の中、アーロンが手を挙げる。

「もぉーしょうがないな。このクラス一のイケメン、小桜アーロンが一緒に行ったげるよ」

「アーロンが行くなら私も行きます。このナルシストが迷惑かけるといけませんので」

続けてエリーも名乗り出る。琉太は「心強いぞ」と二人につぶやく。

「琉太、俺もいいか?最近、他の人の手伝いばっかで、ちょっと飽きちまった」

「えー隆之介だけずるい!私も行くよ!」

隆之介と向日葵も名乗り出る。琉太は思わず「ありがとう」と口からこぼす。隆之介はそんな琉太の背中を軽く叩いた。

「よそよそしいこと言うなよ。俺達、クラスメイトだろ?」

「…そうだな」

 一方その頃、悠玄組の五人は松明を持ち、森の中を歩いていた。夜の森は鬱蒼としており、いつ何が出てきてもおかしくなさそうだ。

「もう少しで例の広場よ」

どうやら彼らは、耕作がヒト型の猪を目撃した広場を目指しているようである。そこから数分ほど歩くと、あの広場が姿を現した。月明かりを反射し、花々が美しく光っている。この光景にはまさしく「幻想的」という言葉が似合うだろう。

「綺麗だね…」

「あぁ。こんなに綺麗ならもっと早く来ればよかったな」

早速、五人は中央部の開けた場所に腰掛ける。周りにはコスモスをはじめとした、様々な秋の花が咲いている。

「この広場に来れば、耕作がつぶやいてた化け物が見えると思ったんだが…残念だ」

黒澤悠玄。国語を得意としており、それ以外の科目も優秀で、その優秀さは琉太にも負けずとも劣らない。しかし、かなり喧嘩っ早く、学校にいる間は問題児の筆頭でもあった。

「私は星がよく見えるから、全然ここにいてもいいけどね」

墓前胡留知。化学、物理学、地学に精通しており、特に薬品に関する知識が豊富である。趣味で薬品を調合したり、夜空を観察したり、多趣味な人物でもある。

「紙とペンがあればいい絵が描けそう…」

安芸創。美術を得意としており、学校にいたときには、個人展も出されていたほどの実力がある。

「あの…悠玄…?」

「どうした?ひまり?」

この控えめな女の子は、朝田ひまり。こう見えて数々の定理を発見した、凄腕の数学者である。しかし、クラスで一、二を争うぐらいのコミュ障である。

「美猫ちゃんがどっか行っちゃった…」

その時、手提げかごを持った一人のちっこい女の子が、ダッシュで悠玄たちの元へと帰ってきた。

「いやぁーごめんね。ちょっと花を摘みに行ったら、時間かかっちゃった!にしてもこんなに花がたくさん咲いてるなんてふしぎ〜」

「美猫…ひまりが心配してたぞ」

白石美猫。生物学に精通しており、これまで発見した新種は数知れず。「ふしぎ」が口癖で、一度気になったことは満足するまで調べ続ける、根っからの研究者である。

「そうよ、美猫。あと少し待ったら、ひまりが悠玄の裾を掴むところが見れたのに」

「そそそそそんな甘えん坊じゃないもん!」

胡留知がひまりのことをいじるのは、いつものことである。

「さぁてこいつも戻ってきたことだし、本題に移るぞ」

悠玄がこの広場にみんなを誘ったのには理由があった。周りに誰もおらず、悠玄組以外の誰も聞かない状況に、この広場は適していた。

「この世界に来てから早二週間が経った。滝の近くに拠点を構えてから、みんなは各々才能を活かし、不自由ながらも前向きに暮らしている。だが、俺等はどうだ?自身の才能を活かせず日々雑用ばかり。こんなのはもううんざりだ」

「確かに。僕も絵とか少しは書きたいな。わがままだとは思うけど…」

創のつぶやきに対し、女子三人はうなずきを返す。

「お前らだって自身の才を振るいたい気持ちは変わらないだろう。ここは一度琉太たちと距離を取って生活してみよーぜ」

悠玄の問いかけに対し、しばらく沈黙が続いた。しかし突然、美猫が「ハイハーイ」と手を挙げた。

「ボクは賛成だよ!悠玄くんと一緒にいれば、昆虫採集とかできるってことでしょ。最高じゃん!」

「そうね。私も天体観測とかしたいわ。ちょうど天体望遠鏡もあるしね」

「背中のやつは望遠鏡だったのかよ…」

悠玄はツッコミを入れつつ、くすっと笑った。自分の意見が受け入れられたことが嬉しかった。ひまりと創の方に視線をやると、二人はにっこりとほほえみながらうなずいた。

「よし、決まりだな!」

琉太たちの悩みとは裏腹に、悠玄組は絆を深めていた。


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