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第3話  【保護法案】

「先輩、先輩!大変ですよ」

相変わらず朝からあわただしい奴だ。


「どうした山下?そんなに慌てて」


「これ、これ見ました?」

山下がスマホで見せて来たのは、ネットニュースだった。

そこには、「スクープ!白面の魔女の正体は絶世の美女だった!?」と言う見出しと、暴漢と格闘した際に仮面が外れて落ちた瞬間の写真で、顔がモロに写っていた。


(しまった、あの時のか…)

チッ。

思わず舌打ちをせずにはいられない。


瑞稀みずきちゃんが、俺の瑞稀みずきちゃんが、白面の魔女だったんですよぉ。何か秘密のあるだとは思ってたんですけどね」


(誰がお前の瑞稀みずきちゃんだ!)

それにしても、週刊誌に撮られていたとは不覚。

でもあれを見てて助けようとしなかったのか?

あれ?まてよ、もしかすると全員グルで、私を撮影する為におびき寄せたとか?マスコミってそこまでするか?いや、やり兼ねないかも知れない。


1日中ニュースや社員達も、その話題で持ちきりだった。

私は何とも言えない気持ちになった。

狼少年の話を知らないのか?助けを求める人がいても、どうせ取材だろ?と疑う様になったら、助けなくなるぞ、私。

でも、見殺しには出来ない。

そうであっても、そうでなくても困ってる人は助けよう。


私の意に反して「白面の魔女」人気は高ぶり、勝手に作られたグッズも好評みたいで、既にファンクラブまで存在し、人気芸能人達をもしのぐ程の人気を博している。

そして、危惧していた通りの事件が起こる。


いつもの様にカラスや黒猫達の目を通して、事件・事故に巻き込まれた人はいないか見ていると、マンションの5階の手すりにぶら下がり、今にも落ちそうになっている男の人を発見した。


私は急いで向かい、何とか耐えていた男の人は遂に手を滑らせて落ちた。

完全物理攻撃無効障壁パーフェクトシールド

男の人に空中で追い付いたものの、女のか弱い筋力で大の男の体重を、それも重力まで加わっている体重を支えられるはずもなく、男の人を抱きしめたままシールドを張って地上に落下した。


防御魔法のお陰で2人とも無傷だった。

起き上がった男の人に思いっきり抱きしめられた。

「ありがとう、お陰で助かったよ」


そこをカメラマン達が私を取り囲み、写真や動画を撮影した。

これは、露骨なヤラセだ。

一歩間違えば、私の到着が遅ければ死んでいたかも知れない。

悪質なヤラセは最早、犯罪だ。

それに、勝手に私を抱きしめて感動的なシーンを撮影したいのだろうが、これはセクハラでは?


私を抱きしめる男の股間を蹴って引き離し、カメラマンに近寄るとマイクを奪った。

「視聴者の皆さんにお願いがあります。この様な危険な真似は決して行わないで下さい。私の身体は1つしかありません。全員を助ける事なんて無理です。今回は事なきを得ましたが、一歩間違えば死んでいました。これでは本当に助けを求めて困っている人を助ける事が出来ません。くれぐれもこの様な軽率な真似はつつしんで下さい。どうかお願い致します」

そう言ってカメラに頭を下げると、飛び去った。


この映像は放送され、物議をかもした。

視聴者のほとんどは私の味方となって、TV局や週刊誌を叩いた。

やがて、政府まで動かす騒動に発展し、「白面の魔女保護法案」が可決された。

今後、私が関わっている事件・事故の調査や行動を阻害した者には刑事罰を受ける事になる、と言う特別法案だ。

これで「白面の魔女」は政府公認のヒーローとなった。


空を飛んでいる時点で、私がSランク以上なのは政府にバレてしまった。

能力者超大国のアメリカや中国とは違い、日本は事前調査でSランクは1人、Aランク以上もわずかな人数しか確認されていない事が分かっている。

Sランク以上の正体不明の「白面の魔女」を、政府としては取り込みたいはずだ。


「先輩、瑞稀みずきちゃん、良かったですね。でも何だか随分と遠い存在になってしまったみたいで寂しいなぁ」


「本人はそんな事無いと思うけどね」


「ですよねー。はぁ、会いたいなぁ」


しみじみとする山下を見ると、何故か心が痛んだ。

こいつとこうやって、女性の時の私への告白を聞いてると、女性化して会った時にフィードバックして胸が高鳴ってしまうんだよな。


今の私より6歳下なのに、女性に変身した時の私は20歳固定だから、逆に6歳年上で頼もしく見えるから不思議だ。


「まぁ運が良ければ会えるんじゃない?」


素顔を見られると、身動き取りづらいから白面で顔を隠したのに、それがグッズ化され、かえって有名になってしまった。


また少し考えないといけないな、そう考えながら窓から外の景色を眺めた。


仕事が終わると、女性社員から飲みに誘われたが断った。

連日の様に食事に誘われると、誘われたとは言え女性と一緒に食事に行くと、男がおごるのは当然になる。

そろそろ給料日前でキツくなって来たので、やんわりとお断りした。


帰りの電車で、「確かに金欠だよなぁ」とつぶやいた。

あんまりやりたくはないのだが、ナンパ待ちをした事もある。

何せ女性に変身した私は、『絶世の美女』の称号持ちだ。

男達がほっとくはずもなく、飲み屋の近くに1人で「はぁ〜何だか、お腹が空いたなぁ」っと一言ひとことつぶやいただけで、「お姉さん、良かったら一緒に飲まない?」と誘われて、タダで飲み食いした事もある。

勿論、男達には下心があり、私が酔い潰れでもしようものなら、ホテルにお持ち帰りするつもりだ。

残念ながら私は、身体状態異常無効スキルがあるので、酔ったりしない。

男達を変えて朝まではしご酒をやってみたが、酔っ払った男達が、私を取り合って乱闘騒ぎになったので、それ以来こんな事をするのは止めた。


男の時の私では絶対に入らないし、縁のないクラブにも、女性の私はナンパされ、誘われて踊った事もある。

普通では経験出来ない楽しさがあった。

男の時の自分とはまるで正反対で、明るくて活発だ。

そうでなくては、自分からヒーローになろうなんて思わない。

チヤホヤなんてされた事の無い私は、例え女性に変身して男達から色眼鏡で見られても、それが新鮮で心地良く、もの凄く楽しい。

勿論、変身をいたら、男の時の自分とのギャップで、後悔しか残らない。


実は生活魔法には、1度でも食べた事のある料理を、完全再現して出せる呪文がある。

食料には困らないし、飢える事もない。

ここ最近は部屋にいるので、光熱費も基本料金に近い請求だ。

服だって生活魔法で出せる。

つまり、給料の大半を食事に誘われた女性達に使ったのだ。


襲われた母子おやこを命がけで助け、会社の女性達からモテモテになったのは喜ばしい事だが、本命の麻生さんと会ったり話したりする時間が減ったのは痛い。

他の女性達と食事したり、飲みに行ったり、カラオケに行ったりする度に、これが麻生さんとだったらなぁ、と一緒に来た女性にも失礼な事を考えている。

私の中身はオタクだぞ?もうそろそろ飽きて来る頃だろ。

人生最大のモテ期、ありがとう。

そしてサヨウナラは近いかも知れない。


そんな事を考えているうちに、アパートに帰り着いた。

お風呂掃除をして、お湯を入れている間に生活魔法『上菜シャンツァイ』でテーブルの上に料理を並べた。

今日の気分はお刺身と唐揚げに、鯛のお吸い物だ。


「美味いなぁ」

いつも誰かと一緒に食事していたから、寂しさを感じるかと思ったけど、オタクの強みは1人に強いって事だ。

1人でいる楽しみ方を知っている。

ゲームに漫画、アニメに小説、個人的にめっちゃハマっている華流ファリュウドラマ(中国ドラマ)。

これのお陰で、挨拶程度の会話なら字幕無しでも何言っているか理解出来る様になった。


大体、中国の歴史が好きになるキッカケは三国志だよね?

まぁ、光◯のシミュレーションゲームが原因なんだけどね。

三国志にハマると、そのうち飽きて来て、他の時代はどうなんだろう?と思い始めたのがキッカケだ。

三国志、水滸伝(架空小説だが、歴史の時代背景や世俗感などは事実を元に反映されている。その為、人肉食シーンが当たり前の様にある。これは当時の中国人が当たり前の様に人間を料理して食べていたからだ)、十八史略、史記などから読み始めるのは定石だろう。


そして三国志しか知らない人は、呂布が最強だ、などと思っているだろうけど、中国史の中で最強武将ランキングベスト10位にも入らないと知ればショックを受けるだろう。

1位は項羽(項籍羽)、これだけは間違いない

2位は楊大眼、これも間違いない

3位は尉遅敬徳、ここに並びそうな者が他にもいるが…

とか、色々考えるだけで楽しい。


夜もけたし、そろそろ寝よう。

明日も仕事、早いしなぁ。

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