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第12話  【命を狙う者】

瑞稀みずきちゃん!瑞稀みずきちゃん、しっかりして!」

大粒の涙を流しながら、必死に心臓マッサージをしている麻生さんの姿が見えた。

自動回復オートリジェネ』の魔法がかけられていた。

私は意識を取り戻すと、起き上がった。


「まだ寝てなきゃダメよ!大丈夫?」


「助けてくれてありがとう」


「ううん、瑞稀みずきちゃんが助けてくれたんでしょう?」


「ごめんなさい。何も出来なかった。あいつら、私が狙いだったの。巻き込んでしまって、ごめんなさい」


瑞稀みずきちゃんが、白面の魔女だったのね?どうりで、あのプールの火災の時、タイミング良くいたんだ」


「秘密にしてくれると、有り難いです」


「この事を山下くんは知っているの?」


「知っているわ。彼氏だもの、隠し事はしたくない。それに、何度か一緒に犯人を捕まえた事もあるのよ」


「胸に穴が開いてて、血が止まらなくて、死んじゃうかと思って怖かった」


「麻生さんには話すけど、これも秘密でお願いしますね?」

そう言って私が不老不死である事、身体状態異常無効のスキルで、身体がバラバラになっても元に戻るし、毒を飲んでも平気だと伝えると、驚いて信じられない様子だった。


「犯人達は麻生さんを、私を殺した殺人犯に仕立てるつもりだったの。麻生さんが捕まってなくて、私も生きていて、この事がニュースにもならなかったら、不自然で、麻生さんは自宅が知られちゃってるから、また来るかも知れなくて危険なのよ」


「怖い」

そう言って、ガタガタと震えた。


「んー、青山さんを頼ってみたらどうかしら?」


「それは一緒に住むって事?」


「まぁ、そうなるかも…。安心出来るでしょう?」


「青山くんに迷惑じゃないかな?」


「好きな人と一緒に住むんだから、きっと喜ぶよ」


「そうかな?」


「そうだよ」


「…ねぇ、警察には…」


「うん…言わない方が良い」


「凶器って、銃なのかな?」


「そこに血が付いて転がってるのよ」


「ゴルフボール…?」


「恐ろしく遠い距離から狙って打ったんだと思う。スポーツを犯罪に使うなんて…」


「能力を得ていたとしても、ゴルフボールで人の身体を貫通なんて出来るの?」


「えーとね。私、物理攻撃用の障壁シールドを常に張っているのよ。なのに何の効果もなかった。これは、ゴルフボールに貫通魔法が付与されていたからなのよ」


「貫通魔法…?」


「前もね?貫通魔法が付与された銃弾で、頭を吹き飛ばされた事があるの。そいつらの仲間だったみたい」


「それって、防御の意味が無いって事よね?」


「だから厄介なのよ」

貫通魔法が付与されていると、手のうち用がない。


『影の部屋シャドウルーム

「麻生さんも」と言って手を差し伸べると、麻生さんは影の中に足元から沈む様に入って行った。


「キャッ。だ、大丈夫なの?」


「大丈夫だよ」


麻生さんの手を繋いだまま、影の世界を飛んで自分のアパートに向かった。

「じゃあね、私はここで。気を付けてね!部屋が暗いから、寝てるかも知れないけど、電話したらすぐに起きるんじゃないかな?」


手を振って麻生さんと別れると、全速力で影の世界を進んで自分のアパートに帰って来た。

「はぁ、はぁ、はぁ、『女性変化解除』」

男の姿に戻ると、電話が鳴ったので慌てて出た。


「あっ、もしもし、青山くん。お願いがあって…」

私は事情を知らないフリをして、話を聞いた。


内心、飛び上がるほど嬉しい。

女の時の私、グッジョブ!

寝起きのフリをして玄関を開け、麻生さんを入れた。


「…と言う訳なの」

麻生さんは、女の時の私と白面の魔女が同一人物である事はせて説明した。

ちゃんと秘密を守ってくれている。


それから麻生さんは、お風呂に入った。

多分、麻生さんはまだ夕食を食べてないだろうな?と思って、その間にうどんを作った。

麻生さんは、こんな時間だし太るから食べないつもりだったけど、私が作ってくれたのを無駄にしたく無い、と言って食べてくれた。

余計なお世話だったかな?


一緒のベッドで寝る時、おやすみのキスをすると、腕枕をして抱きしめて眠った。

全く警戒されてない。

襲われると思ってないのは、私を信頼しているからだろう。

その信頼を裏切る事は出来ない。

これで十分幸せだ。

好きな女性ひとと同じ空間で空気を吸い、一緒に食事をして、共寝をする。

少し前の自分では信じられない状況だ。


目が覚めると、お味噌汁の香りがした。

「おはようございます、麻生さん」


「おはよう、青山くん」


目が覚めたら朝食を作ってくれているなんて、新婚みたいだ。

どうせならもっと新婚みたいにしてみようと、勇気を出して麻生さんの背後から抱きしめて甘えてみた。


「あっ、もう出来るから待ってね」


「何だか、新婚みたいで良いですね?」

そう言うと、麻生さんは顔を紅潮させた。

そのまま、口付けを交わした。


朝食は、スタンダードで、ご飯にお味噌汁、玉子焼きに焼き鮭だった。

朝はこのくらいが丁度良い。

付けても冷奴に海苔、お漬物くらいか。

どれも今は切らしてて無いなと思い、仕事帰りに買って帰ろうと思った。


あれ?そう言えば、行きも帰りも一緒だ。

マジで新婚さんみたいでヤバいな?と独りニヤケてしまう。


「青山くん、帰りに買い物に付き合ってくれない?家に帰ると危ないみたいで、服とか下着を取りに帰れないから」


「分かった。一緒に行こう」


いつもの様に、バスと電車を乗り継いで出勤した。

見慣れたいつもの景色が、麻生さんと一緒なだけでこうも違って見え、新鮮な感じだ。


(貫通魔法か…。恐らくそいつが黒幕だろう。銃弾のとき、1発200万円って言ってたな。単なる金儲けの可能性もあるが、犯罪に使われる事を承知で売ったんだ。刑法上の罪はよく分からないけど、殺人幇助罪とかにはなるんじゃないのか?)


スキルによる犯罪を取り締まる法も警察もまだない。当然犯罪は取り締まるが、スキル犯罪には取り締まる側も対抗するだけの能力が求められる。

この国で唯一のSSSランクの自分には、その使命があると信じていた。

自分がやらなくて、一体誰が出来るのだ?と。

そのせいで麻生さんを巻き込んでしまった。

やりきれない気持ちでいっぱいになった。


数日は平穏に過ごした。

麻生さんと一緒に暮らしているから、女性になって山下とは会っていない。

連絡も取れない彼女だ。

山下が日に日にやつれて行くのを見て、胸が痛い。


最近気付いたのだが、やはり女性になった時の自分とは違うんだなと思う事があった。

それは、書いた文字が違うのだ。

筆跡が違う。

最初は記憶は共通しているし、見た目や声とかが変わっただけだと思ってた。


しかし、考え方も違うし、性格も異なるし、筆跡で同一人物とバレたりするんじゃないのか?と思って試すと、見事に筆跡が違っていた。

これは、1つの身体の中に、魂が2つある様なものでは?

そう考えると少しだけ気が楽になった。

女性になって、男とイチャイチャしているのだ。

冷静になって考えると気持ち悪いし、実は自分が変態になってしまった気もしていた。


もう2度と女性に変身したくないと思いつつも、よく分からない組織に狙われ、麻生さんも巻き込んでしまった。

能力に頼らなければ守れない。


麻生さんと2人で買い物をしていて裏道に出た時、つけられている気配を感じた。

気配を感じ取らせる様な相手だから、プロでは無いだろう。

何故、尾行されているのか?


麻生さんの耳元で、「つけられている」と耳打ちすると、大笑いしながら歩き、目で合図をして突然全力でダッシュした。

するとやはり相手も走って追いかけて来た。


私は反転して追いかけて来た相手の目の前に立った。

「うわっ!」


私に見つかり慌てて逃げようとする。

「待て!なんでつけて来た!」


「見つかったものは仕方がない。俺はQTV放送の者だ。そこの麻生佳澄さんはSランクだ。国宝だよ。それについて、どう思っている?」


「どう思っているとは?」


「しらばっくれるなよ。麻生さんは美人だ。彼女と付き合っているなら、当然性交渉をしただろう?聖女のスキルを失くした責任について、どう思っているのかと尋ねたのだ」


「麻生さんに一生恋愛をするなと言っているのか?一生子供を作るなと?」


「そんな事は言っていない」


「ふざけるな!言っているのと同義だろう?」


胸ぐらを掴み合い、争っていると、何処かでゴルフのショットの音が聞こえた。

嫌な予感がして、麻生さんを見るとお腹を押さえてよろめいた。

手で押さえてるお腹には、血がにじんでいる。

一瞬何が起こったのか分からず、呆然とした。


「麻生さん!」

駆け寄ると、麻生さんの右顔半分が爆発した様に見えた。

音もなく崩れ落ちる麻生さんが、スローモーションの様に見えた。


「あ…おや…」

残った左目を見開いたまま、麻生さんは動かなくなった。


「うわぁぁぁ!」


「麻生さん、麻生さん、しっかりして!ダメだ。死んではダメだ!」


再びゴルフのショット音がした。

QTVの記者だと言う男の身体を、ゴルフボールが3度貫通し、絶命した。


証人を消すつもりなのだろう。

分かっていても麻生さんを抱きしめたまま、そこから動く事も離れる事も出来なかった。


ゴルフショット音が聞こえ、正確無比なショットは確実に私の左胸を捕らえて貫通した。

口から血の泡を吹いて前のめりに倒れた。


男の私が死んだらきっと、女性変化100%となった女性の私が転生するだろう。

男の私は、このまま麻生さんと一緒に死のうと思い、女性変化の呪文を唱え無かった。


遠ざかる意識の中で、ゴルフのショット音がした気がした。

【作者の独り言】

読み返すと、結構文字変換がおかしくなってる所がありますね。申し訳ありません。気付いたら直しております。

「一緒に」が「一瞬に」になってたりとか…。


お気軽に感想とかもお待ちしています。

本編の方は、今「西洋の神々編」を書いてて、こっちを書いてるので休載状態ですが、今暫くお待ち下さい。

読まれた方は薄々感じられているかも知れませんが、本編に強く影響しているのは、「孔雀王」とゲームのメガテンシリーズです(ペルソナ含む)。

だから、Hなシーンが多くて(笑)、神話系のお話なのです。

そして、絶対正義とされる神々は本当に善で正義なのか?悪とされる悪魔は本当に悪なのか?メガテンシリーズのテーマに共感しています。

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